浅田次郎 きんぴか２ 血まみれのマリア編
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あらすじ
あまりに能力が高すぎたためにそれぞれの世界でつまはじきになってしまったピスケン、大河原軍曹、広橋秀彦は向井権左ェ衛門元警部補に拾われて、クスブリつつ浪人していた。
- 嵐の夜の物語
ピスケンがお前の命を狙っている、そうマル暴の佐久間忠一警視正が若頭の福島に告げ、福島がピスケンを狙っていると怪文書を流した。
佐久間が仕組んだ罠だがそんなちんけな網にかかるピスケンと福島じゃあなかった。佐久間がひと皮剥ける為に灸を据えようと花岡総監とマムシの権左も噛んだから話は大事になっていく。
- 血まみれのマリア
ピスケンはバーで総長を見舞ったときに出会った看護婦と再会する。くだを巻く阿部マリアに辟易したピスケンだったが、疲れ果てて帰宅すると無気力に休息をとり、ポケベルが鳴ったら即出勤の仕事一筋で自分を省みないその危うさがどうにも気になって仕方がない。もしかしたら惚れたのか？俺。
- クリスマス・ロンド
巨額賄賂事件がスクープされたことで拘留されていた田之倉五郎松はなんとか保釈された。保釈されたことでようやく手をつけられることがある。管理の対象外であった純正のヘロインの固まり5kgだ。最近はパソコンのデータ管理で危ない物の管理は徹底しているが、個人的に送られたこのヘロインは上納せずに懐にしまい込んだままだったのだ。福島が作り上げたデータ管理のおかげで徹底した管理が貫かれているわけだが、このヘロインがうまうまと警察のがさ入れをすり抜けたのには訣があった。田之倉を嵌めるための罠だったのだ。だが、肝心の田之倉がその事実に気がついてしまう。斯くしてヘロインの固まりは人手をまわる。
- カイゼル髭の鬼
大河原軍曹の元へ領地品返却の届けがやってきた。勿論あの"星条旗のトランクス"のことだ。警務隊長の所へ出向いて返却して貰ったとき、かつての部下がまた脱柵を図ったことを知らされる。
忌まわしいトランクスを贈ったかつての女の住処に来た軍曹だったが、そこで出迎えたのはかつての部下の倉田だった。倉田は間男だったのだ。
- 天使の休日
向井権左ェ衛門の全財産三千万円が露と消えた。犯人はピスケンで馬に賭けて素寒貧になってしまったのだった。宵越しの銭は持たない江戸っ子らしい所作だったが流石に額が多すぎる。なんとかその補填をしようとそれぞれが金策に走るのだが、こういう時にこそ広橋の頭脳が役に立つ。
感想
浅田次郎八作目。きんぴかの二巻目です。
うーん困った、特に書くことがないｗ。
面白いのは確かなんだけどこの巻は中だるみ気味なんだよね。ピスケンとマリアの出会いを描くということで「血まみれのマリア」編となっているわけで、この巻はピスケンが主人公と言っていい。そこに粗忽な軍曹の物語である「カイゼル髭の鬼」と広橋の大立ち回りである「天使の休日」が一緒に収まっているもんだからなんだか収りが悪い。
作者はこれを執筆していた当時はユーモアだけじゃない、社会派な部分を出そうと苦心していたらしいので警察とヤクザの大捕物「嵐の夜の物語」や絶対数が足りないが確実に夜にいる必要がある毎日命がけの看護婦の物語である「血まみれのマリア」、自衛隊の内幕を少し語った「カイゼル髭の鬼」、社会犯罪である詐欺をテーマにした「天使の休日」を書いたんだと思う。でもそのせいでユーモア部分が削られているというのも事実なわけで、面白さという部分では「クリスマス・ロンド」が一番ということになってしまっているような気がする。
まぁ、読むに至るまでのスパンが短すぎたからそう感じるのかもしれないけどね。
他の見方をするならば、それぞれの恋愛模様を描いているってくくりもあるかもしれない。ピスケンとマリア、軍曹とアケミと倉田、広橋とエンジェル。広橋とエンジェルについては厳密には違うけどまぁ愛嬌ってことで。
あ、マリアについては『プリズンホテル冬』にも出演しています。本書の方が初出ということですからお間違えなく。なお、このキャラクターについては実在の人物がモデルになってるそうです。作者の経営するブティックにふらり来て大量の服をガンガン買っては帰って行く奇特な客が気になって話を聞いてみたら救急病棟の看護婦だったらしい。そこで取材を重ねた・・・との作者の弁です。
75点
蛇足:慶応大学病院のHCU（＝Ｈｉｇｈ Ｃａｒｅ Ｕｎｉｔ、高次治療部）*1の看護婦さんは凄かったですよ。30ぐらいまでの若い人ばかりでお前等モデルか！というぐらいの美女ッぷり。大学病院は色々アレですが、あそこなら行っても佳いなぁと思いました。
参考リンク
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