ブラザー・グリム

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ま、童話を変形させたストーリーは数あれど、ここまでやらかしてくれるのはそうはお目にかからないだろうね。何しろ一つの作品からではなくて著名な作家であるグリム兄弟の著作、あるいは採取した数多い民話の断片をベースにして再構成しているのだから面白くないわけがない。
あかずきん・眠り姫・ラプンツェル・白雪姫・シンデレラ・ヘンゼルとグレーテルざっと見渡すとこんな感じ(蛙にまつわる話はどれか解らないので割愛)。
単純に言うとストーリーはグリム兄弟は悪魔払いや魔女退治など拝み屋活動の詐欺を働いていて方便をたててるのだけれど、時の権力者であるフランスの将軍に引っ立てられてしまう。その理由は勿論犯罪を行っているという事もあるのだが、最近グリム兄弟と似たような手口を使った子供ばかりを狙った誘拐が起きていたという。調べさせてみたところ、グリム兄弟のアリバイが成立したためグリム兄弟の仕業ではないということは明白だった。だが、現在の罪その物が消えるわけではない。解決したらを恩赦してやるから現場に行け!という実に大雑把な依頼。勿論断れば首が飛びます。しかも実際に現場に行ってみたらトリックらしいトリックが見あたらない。兄はトリックのはずだと言い張り、弟は魔法だと言いつのる。平行線の二人が辿る道とは・・・。
この映画で最も卓越している点はグリム兄弟の対立であり、そしてモザイク状のストーリーです。グリム兄は守銭奴でリアリスト、グリム弟は夢見がちな空想家。あちらをたてればこちらが立たずを地で行っています。また、前述したように初期童話集に見られる話の特徴的な部分だけ抜き出して用いているような所など、膾炙された話だけにほとんどの人が知っているためコンセンサスが要りません。故にスムーズにストーリーに埋没できるわけです。
何故かファンタジーでもアクションが取り入れられる昨今ですが、この作品に関してはアクションと言うより冒険と言った方が適切な気がします。大それた物ではないし度外れて危険というわけでもないのです。加えて大人と子供が真に両方楽しめる作品になっていると思いました。妖艶な女優や個性的な俳優は大人に、そしてドラマチックな映像美と見知ったストーリーは子供にも好まれることでしょう。『指輪物語』の映画化以降壮大さを売り物にして風呂敷を広げる作品が多くなりました。映画だけでは補完しきれない話が多い中、本作はきちんと完結しています。これだけでも十分楽しむに値することですよ。
リアルスティックなタニス・リーの映像化作品と言われても何となく納得しちゃうかもしれない。
なお、数々の毒*1が散見できますが、監督がテリー・ギリアムだからということでスルーしませう。

*1:フランスが負けてドイツとイタリアが勝つとかw