高橋功一郎 剣聖ツバメ (1)〜(4)

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剣聖ツバメ 1 (1)
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高橋 功一郎
秋田書店 (2005/04/08)
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剣聖ツバメ 4 (4)
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高橋 功一郎
秋田書店 (2005/10/08)

古豪の剣豪が現代に呼び出され、現代人に憑依して格闘を繰り広げるそんなトンデモ剣道漫画です。とはいえ、結構好きなんですけどね。
私は結構剣道暦が長いのですが、未だに段取ってません。流石に十年越えてたらみんな最低初段か二段は持ってるもんですがね。何故って、現在の剣道はこのコミックの冒頭に書かれているように形骸化してるんですよ。あんなもんは飾りです。心証で一本の裁定が下されるだけですっきりしないんですよね。それに実戦形式は忘れ去られ、ルールと精神修養という愚にもつかないスポーツ化が図られています。武道としては剣道は死に体なんですよ。確かにきちんとした硬度のある木刀使えば人を殺すのは容易いでしょう。でもそれだけなんですよね。剣で斬り合うのではなく、現状は叩き合うことに終始してますから。名残として竹刀の向きがどうのこうのとされてますけど、それならば先に一撃入った方が勝ちになるスポーツチャンバラの方がまだ武道としては上って言うのはどうなんでしょう。まぁスポチャンの場合は得物の重量が軽すぎることが全ての行為を無にしてしまっていますが、それでもな面・小手・胴に固執する剣道に比べればマシです。そろそろ伝統性と安全性を高めた実践的な剣術体型が登場しても良いんじゃないでしょうかね。攻撃対象は全身、または鼠蹊部除くぐらいのニュー剣道が生まれないかなぁと夢想する日々です。
なお、剣道に見切りをつけた人は居合いと各種剣術道場へ行っちゃいますね。抜刀道って道もあるけどこれは大道芸の一種だからなぁ。きちんと剣を収めたいなら剣術道場へ行った方が佳いでしょうな。
ま、個人的感慨はさておいて、内容へ。鴨下燕へと取り憑いたのはあの有名な宮本武蔵ではなく、佐々木小次郎でした。剣道に特に関心のない燕でしたが、否応なく現れる剣豪が取り憑いた人物と闘ううちに段々と剣の道へ向かいます・・・。みたいな内容。ある意味で村上ともかの『六三四の剣』以来の正統派の剣道漫画ですか*1。一応その前に青山剛昌の『YAIBA』がありますけどこれは子供向けのヒーロー物だからちょっと違いますけどね。
あいにく剣道には華がないんですよ。だから空手の攻防ほどの格好の良さは無いんですよね。面は頭をひょいと避けたりしてかわしたり、小手をわざと竹刀から外したり、胴を打たれないように胸の脇の隙間に打ち込ませたり(これはめっさ痛い、逆にここを狙う人もいる。一応やりすぎると注意受ける)、あとは後の先狙いの受けて切り返すタイプかな。攻防にはあとはフェイントぐらい。だからどんどんリアリティが希薄になっていっちゃうのは仕方ないかなぁ。流派の特徴なんかを述べるのは中々だけど、秘剣みたいな内容になっていくと凡百の格闘漫画になっちゃうんだなぁと思ったりする。正直技術教本的な漫画がもっと出来ればいいなぁというのは有ったりするんだけどね。だって、一般的な教える側は「何故こうした方が佳いのか?」という事を口で説明するのが苦手な人ばかりなんだもの。伝統に縛られて、ルールに縛られて、脳みそ使うのが苦手な人が多いから教え下手なんだと思う。競技人口も年々減ってるし、最低限の技術的根拠とかがないとついていかないでしょうしねぇ。
ま、色々個人的な剣道観に左右された感想だけれども、マジで何とかしないとヤバイよ日本の剣道は。朝鮮人が剣道の起源は朝鮮とかアホなことも言ってるし、それを放置している全剣連やら日剣協は馬鹿ばっか。道場拳法に固執せずに革新がそろそろ必要だよ。
あー本編にほとんど触れられてないけれど、一つ苦言。竹の竹刀なんて今時高校生以上じゃ使ってない。カーボンだろ普通。第一竹は力強いと鉢金で簡単にぱっくり二つに割れて使い物にならんし危ない。あとは送り足に無理がある通り抜けはもっとリアルにやった方が佳いんじゃないかなぁ。切り裂かないと立ちふさがっている人物を通り抜けられないだろうからねぇ。
嫌いじゃないけど今後どうするつもりなんだろ。ちょっと気になる。まぁ、謎の人物である佐々木小次郎を持ってきたのはちょっと面白いけどね。*2

*1:『しっぷうどとう』と『バガボンド』はあんまり好きじゃないのでこの際除外

*2:佐々木小次郎の生年ははっきりせず、所謂巌流島の戦いその物が本当に有ったかどうかすら不明というかしっかり判明していない