亡国のイージス

まずはストーリー紹介から。物語は海自のイージス艦いそかぜ>での爆弾騒ぎから始まります。犯人は如月行(勝地涼)という一等海士で、現在艦にいる士官と新たに乗り込んできた乗員は日本を裏切るつもりだということでそれを防ぐためにいざとなったら艦と爆死する覚悟で臨んだのです。如月の上司である仙石恒史先任伍長真田広之)は士官から如月が北朝鮮のスパイだと言われたことを鵜呑みにして説得にまわります。如月は当然逆に士官達がスパイと結託している事を仙石に話しますが、仙石はそれこそ嘘だと思い通信機を破壊して扉を開け放ち結局如月は拘束されて、ようやく自分が愚かなことをしたことに気がつきます。そう、<いそかぜ>は乗っ取られたのでした。邪魔な下士官達は洋上にうち捨てられる事になるのですが、仙石は穴の空いた船体から内部に再び戻り<いそかぜ>を取り戻そうとします。一方乗っ取ることを決意したのはイージス艦いそかぜ>の艦長以外の士官、そして北朝鮮工作員ホ・ヨンファ(中井貴一)とその部下達です。船長はこの計画を知らなかったために殺されました。全ての計画はヨンファと副船長の宮津弘隆(寺尾聰)がたてました。宮津は息子をダイスという日本の情報機関に殺されたと思っています。宮津の息子は「国を守るためにある自衛隊の存在意義と守る対象から非難される悲哀、国としての威厳を持たないこの国を守るイージス艦は亡国の盾である」(相当に意訳)という言論をHP上で公開していたために目を付けられてダイスに殺されたわけではなく、単に事故で死にました。しかし、宮津はヨンファが息子の言論に国は違えど共感したと言うことで一度この国を滅ぼすか、変わるかを試そうと持ちかけます。その為にアメリカで開発された毒ガス兵器<GUSOH>を盗みだしイージスをそう簡単には攻撃できない状況に持ち込みます。GUSOHの威力は凄まじく首都圏全域で死者を出すほどで(推定一千万人死亡)、その空間ごと消し飛ばす以外に漏出した場合の処理方法はないぐらい危険な武器です。宮津はそれを使って日本政府に三つの要求を出します。
北朝鮮の反体制グループを扇動したアメリカの謀略を公表せよ」
「この毒ガス兵器<GUSOH>をについての事実を公表せよ」
防衛庁情報局、通称ダイスによって宮津隆史が謀殺された事実を公表せよ」
この三つを突きつけられた日本政府は小田原評定をするわけです。一方<いそかぜ>に再潜入した仙石は如月を救いに向かいます。

ん〜原作読んで随分経っていますので、かなりの割合で内容を忘れてます。故に『ローレライ』の様な原作マンセーな反応ではないです。
思い出しながら見たのですが、やっぱり相当の内容が削られています。とはいえ、ほとんど内容を知らずとも楽しめる映画に仕上がっているのではないでしょうか。ただ、やはり様々な点を割愛しているのは残念ですが、尺の問題が大きいですね。それでもラストシーンのあたり、主人公の如月行がどうやって脱出したのかの部分は切るべきじゃあなかったと思いますがねぇ。
やはり見せ場は日本人がどれだけ馬鹿でアホで平和ボケをしているか?ってあたりでしょうか。問題解決能力の低さが実に明快に示されています。是非とも読むか見るかをして「平和を語れば平和になる」という愚かしい行為で現実をねじ曲げる愚行を一度ちゃんと考えて欲しいです。日本を守るための兵隊、自衛隊が自らを守ることすら許可されていないというふざけた構図は日本以外にあり得ませんし、各国スパイがうじゃうじゃといるというスパイ映画も真っ青な日本の現実を少しでも直視して貰えれば憲法改正論議の9条という信念を守るためにかけ声だけを挙げる行為に疑問を持って貰えるはずです。反権力体質という病魔に脳がやられていない限りはね。アメリカの核の傘に守られて反戦を叫ぶ馬鹿げた行為がどれほど国家として異常な状況なのかを、幼年期が長すぎた事をそろそろ気がついて良い頃です。ま、これはこれくらいにしておきますね、いくら語ってもしょうがないし。
映画の『ローレライ』再び比べてしまうけれど、こちらの方が役者の演技の質が実に高いです。そこは保証できますね。演技が嘘くさくないのは良いことですね。誰一人としてどうだろう?っていう役者がいないのはすごいです。ただ、問題としては中井貴一演じるホ・ヨンファが一切の朝鮮語を喋らないというのは脚本担当者の瑕疵なのではないかなぁと思わなくはないです。
これ自体で楽しめる内容だと思われますが、尻切れトンボ多数なので(例えば如月の正確な過去やらジョンヒを演じるチェ・ミンソは何故如月を助けようとしたのかとか、<GUSOH>はその後どうなったのかとかEtcEtc・・・)出来る限り原典を読むことをお勧めします。原典読んでから観た方が楽しめると思いますよ。勿論先に観てしまった人も原典を読めばもっと楽しめるかと。
なお、どうでも佳いことですが漫画にもなっています。

亡国のイージス 1 (1)
亡国のイージス 1 (1)
posted with amazlet on 06.02.20
横山 仁 福井 晴敏
講談社 (2005/02/23)
売り上げランキング: 8,125

こっちが原作からの漫画化。

C-blossom (1)
C-blossom (1)
posted with amazlet on 06.02.20
霜月 かよ子 福井 晴敏
講談社 (2005/07/13)
売り上げランキング: 3,918

こっちは如月行のスピンオフ。どちらも合わせて楽しんでいただければ幸甚かと。一応私もファンですからね。