ローレライ

あーもう原作とはまるで違いますね。フリッツ・エブナーが出てこなくて、イ507はナチスの科学の粋を集めた潜水艦だとか(原作ではフランス海軍の潜水艦を接収改修した物)、田口掌砲長はめっさ若返ってるし、初めから任務の理由が明かされているし・・・。なんつーか原作は別物として見るべきだと思いましたわ。
映像的には問題なし。というか、想像以上だね。質感が安っぽくなってないしパウラの着ている服の造作はいいし・・・。ただ戦艦・潜水艦の質感はのっぺりしているのでCGとすぐ解ってしまうのはしょうがないか。マット仕上げなのが違和感を感じさせない理由かな。
ストーリー的にはおいしいところが無くなっているような・・・。序盤のパウラとの邂逅、ローレライシステムの載る補助艦を助けるという部分、それにフリッツ・エブナーの反乱、そして「しつこいアメリカ人」の名で親しまれる潜水艦との戦闘。
配役にはちょっと疑問がある人物が何人かいる。ピエール滝は個人的には嫌いじゃないんだけど他の演者との兼ね合いで一歩及んでいない。だから浮いているのが気になる。清永を演じる佐藤隆太は役者としては問題ないのだが、原作の清永は小太りという設定だから違和感がバリバリ。フリッツ・エブナーがいなくなったことで映画独自のキャラクターとして生まれたローレライ付き軍属技師の高須を演じる石黒賢はアクの強い演技をしてしまっているためなんかしっくり来ない。軍医の時岡(原作では肥満体。國村準が演じる)が設定の狂言回しになってるのに、じゃあ何で高須を出したのか解らなくなるような気もするけど・・・。うーんピエール滝の演ずる掌砲長は國村準がやった方が良かったような気もする。やっぱりもっとどっしりしてないとねぇ。
なんか混ざってるよ。亡国のイージスの主人公の設定をこっちに持ってきてるとはちょっと意外。
ああああああああああああ、掌砲長やっぱり微妙。転向が急すぎ。清永影薄すぎw。死に方すらかなりダウングレードしてるしなぁ。
うーん、ライカのカメラの挿話が本作で一番の見所かもしれない。端役であったがあの役者には未来があるように思った。
そういえば島崎藤村作詞・大中寅二作曲の『椰子の実』の歌はどこへ行ってしまったのだろう・・・。何故モーツァルトの子守歌をチョイスしてしまったのか正直謎すぎる。
やっぱり小説のダイジェスト&改悪だなぁ。N式潜行艇ことナーバル切り離しに関しては情緒も何もあったもんじゃあなかったし。小説は分厚いし疲れるからという向きでもこれ見るぐらいなら小説読んだ方が佳いかも。小説が駄目ならば漫画でいいかな。流石に映画の投げっぱなしジャーマンっぷりには原作スキーとしては見過ごせないからね。
ああそうそう、蛇足になっちゃうけどパウラ演じる香椎由宇は結構佳いね。着せられていた外套が実に良い感じだったわ。水密服デザイン:出渕裕、衣装デザイン:川上登・高野裕子この三人には賞賛を送りたいね。

終戦のローレライ 1 (1)
福井 晴敏
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