ヘル・ボーイ HELL BOY

ハリウッドのアメコミの実写化の波によって生まれたヘルボーイの映画を見ました。原作の方は全くしらんのでどの程度再現性があるのかは私には解りません。ストーリーはナチスドイツのオカルティズムによって冥界の門を開いたラスプーチンが召還したのが冥界の門を開ける鍵であるヘルボーイで、ラスプーチンは現代に黄泉返り暗黒神オグドル・ヤハドを蘇らそうとする・・・といった感じでしょうか。
ヘルボーイは呼び出された当初FreeBSDのマスコットのレッドデビルのBeastieみたいな外見ですが、右腕が巨大なガントレットを付けているような形になっています。物語は最初こそ大戦直後ですがすぐに現代に時代が移り、ヘルボーイという名とは不釣り合いな年月60年が経過しています。しかし、老化が遅いらしくヘルボーイの肉体年齢は20代前後と言ったところでしょうか。
アメコミといえばスーパーヒーローなわけですが、ヘルボーイの特殊能力はこれといってありません。耐火能力と人間以上ではあるもののそれほど異常ではない怪力、そして無情なまでのタフさあたりが特質すべき点でしょうが、それ以上では決してありません。馬鹿みたいな強さとは一線を画しているみたいですね。彼は特殊弾頭を用いた無骨な拳銃を武器に化け物達と戦いを挑むのですが、圧倒的な強さなど無くズタボロになりながらなんとかやっつけるといったハラハラものの格闘となります。ただ、特殊効果は正直微妙ですね。ワイヤーによる吹っ飛びなんかはスピードが遅すぎるせいか古臭く感じられます。あと、特殊メイクで作られた右腕のディティールもちょっと安っぽすぎませんか?妙にテカっていて角質的な乾いた感じを持たせられていないし、CGを使って描画されているシーンとの差異が浮きまくりです。もっと上手く処理が出来そうなのに、CGとそれ以外のシーンを整合させようとする気もあんまり制作陣には感じられませんでしたね。ヘルボーイと対決する死の天使サマエルはCGだと良くできているのに、着ぐるみになると単なる特撮レベルに、それも随分古いエイリアン以下の特撮になってしまっているのが悲しいです。もはやCGバリバリの方が良かったんじゃないかなぁ。
ちなみにヘルボーイ以外の半漁人のブルーことエイブは良くできてました。頭からエラのあたりまでの奇妙な動きはリアルな半漁人っぽさが非常に良く出ていて好感が持てました。
加えて普通の外見を持つ女性として出てきたリズが出てきますが、彼女ははパイロキネシス(ファイアースターターとも、発火能力)の使い手です。実は彼女、戦闘能力はなんて言うか圧倒的。火を使うというより爆発させるっていうのに近い。一番強いのがリズってのはちょっとポカーンとしちゃいましたよ。
最後にモンスター達ですが、見た目からしラブクラフトクトゥルーをイメージしているとしか思えない触手具合。CGでの動き具合はよさげだけどデザインディティールはあんまり良くないかな。もっと何か新しさがほしかった。でも原作でも似たようなものが出て居るんだったらそこら辺に言及するのは駄目なんだろうけどね。
個人的にはナチスサイドのパペットとなっているクロエネンがお気に入り。ブレード付きトンファーはもっと実践的に使い切っていれば更に良かったかも。変に演舞的な動作をしている間に銃で撃たれたら・・・とか考えちゃうからねぇ。それにしても鉄仮面が素敵すぎる。やっぱりナチスの軍服は格好いいわ。悪役に相応しいね。
難点としてはドイツ系ということで微妙にブスな女性がラスプーチンの愛人として出てくること。何か含みを感じるなぁ。

多少分析気味に考えるとヘルボーイとその育ての親であるブルーム教授はフランケンシュタインのアナロジーなのは間違いない。人間ならぬ存在の人間性をテーマにした事からリズとの淡い恋を描いたりなんかして居るんだろうけど、その真剣さがかえって当て馬にされている踏んだり蹴ったりのジョンに襲いかかる。最後の最後でえらーい自己嫌悪に陥っている微妙な八の字眉毛な顔は一見に値するかと。感動的というよりも大爆笑でしたわ。準主人公なのにねぇ。
それにしてもヘルボーイの角が生えそろってる場面ではイフリートに見えてしょうがないね。
深刻になりすぎないし、ちょっと興味があるならば暇つぶしにはいいかもしれない。
追記:何故かヘルボーイは髷結ってるんだけど・・・えらい気になったw。