あさのあつこ TheMANZAI

ASIN:4265041450

あらすじ

中学二年の秋、瀬田歩は同級生の秋本貴史に付き合ってくれと云われる。歩は名前と見かけは可愛らしいもののれっきとした男だし、秋本もれっきとした男だった。線の細い歩と比べて秋本はサッカー部のレギュラーを務めるぐらいの筋骨隆々背丈も体重も軽く上回っている。そんな相手からの告白は重要な一点を欠いていた。「漫才のコンビとして」という部分が・・・。
歩も秋本も母子家庭であった。そのあたりも秋本の歩を見る目に影響を与えていると思って間違いはないだろう。歩の場合は交通事故で父と姉を亡くしていた。秋本の方は何故母子家庭になったのか?それは親しくない歩からすればわからなくて当然だった。
秋本はまずは親しくなることを第一として考えているらしく自宅のお好み焼き屋に歩を誘った。そこで歩は秋本の母親に気に入られるという状況になって逃げ出すタイミングを逸してしまう。
結局逃げ回った挙げ句歩は秋本とコンビを組むことになった。おあつらえ向きに文化祭の演劇で『ロミオとジュリエット』を執り行うこととなった。普通の演劇や英語劇では面白くない。秋本は『ロミオとジュリエット』の漫才をやりたいということをクラスで発表し結局採用されることとなった。正攻法では概略書を教師に突き返されてしまったので再び練り直して難とかねじ込んだ。
そして舞台の幕は開かれる。歩のジュリエットと秋本のロミオは即興の掛け合い漫才を披露するのだった。

感想

あさのあつこ二作目。『バッテリー』を借りるときに一緒にかり出してきた本です。
しっかし時事ネタ入れちゃうあたりが作者の限界を明示してるように感じるわ。時事ネタはすぐに風化するのにねぇ。
それに相変わらずホモネタ好きだねぇ。というか、ほとんど仄めかしレベルだけどね。『バッテリー』とは真逆の性格をした主人公ですか。受けキャラをまたもってきてるのは芸がないなぁ。線の細い男子&スポーツマン系の無骨な男子というのが作者の萌えポイントなのかもしれませぬ。にしてもこの性格では両方受けでも有り得ない話じゃないですなぁ*1
正直何でもかんでもホモ恋愛的に欠かれると萎えるし鬱陶しい。てか、この本で確信したけど、作者はこういうネタしか書けないんだろうな。だったらおとなしく児童文学図書なんかじゃなくてホモネタを前面に押し出したそういう系統で仕事すればいいのに。でもあまりにもライトすぎるきらいがあるから、本職には勝てないかな。やっぱり婦女子養成本に落ち着いちゃうかな。
そういえばイラストはまた作風をパクッてるな。『バッテリー』は高橋ツトムだったけど、今回は浦沢直樹か。こうまでしないと売れないもんなの?
本作のテーマは漫才・お笑いです。しかし深刻に問題なのは笑いがテーマで掛け合いの妙が大事なのに全然面白い話ではないところだな。ま、それでもきちんと締めてるからまだマシか。投げっぱなしじゃないだけいいかもね。うーんそれにしてもこれって読者の仮定は中学生だろうけど教師への反抗のスタンスがよくわからない。単に反抗期の読者に媚びてるのか、作者の信条なのかは判断のつけようがないわな。書き切れてない未消化な部分が結構あるように思う。
なんで肝心の漫才ネタ合せを作中ですっ飛ばしてるのか謎すぎ。なんでもかんでも即興でやれば何とかなるなんて素人考えにもほどがないかい。笑いってもっと合理的なものだと思うし、ネタのすりあわせも行わないまま場の雰囲気だけでやれるってどんなプロだよ。ここに関しては致命的にまでに何も書かれていないので明かな瑕疵ですな。
総じて軽佻浮薄だと思う。中学生向きでは水準作かもしれないけど案の定・・・って部分ばかりが悪目立ちする。これだったら内面描写に重きを置いた『バッテリー』の方が全然マシ。
ホモネタでも面白いものは面白いけど、これを息子や娘に*2、友人や家人に勧めて読ませたいかというと首を振りたいところだわ。もうちょっとまともにホモネタ仄めかしを使わないちゃんとした本を読ませて欲しいと思った。
30点
唯一の評価点は女子をきちんと介在させた点、それのみでしょう。『バッテリー』では始めのうちに登場していたけど、いつの間にか異分子扱いとなって消えちゃいましたしね。

参考リンク

The MANZAI
The MANZAI
posted with amazlet on 06.01.30
あさの あつこ 鈴木 びんこ
岩崎書店 (1999/10)
売り上げランキング: 101,016

*1:私は好守のカップリングの妙には疎いので判断が間違ってる可能性は否定できませんw

*2:いや、もちろんそんなものは居ないし予定もないが