原秀則 部屋においでよ

作者は『電車男』の漫画化を最近では担当してる人物だけど、あまり世間的に持ち上げられるような漫画を描いているような人ではないと思う。事実、漫画の話を友人としたりする中では一度たりとも話が出た経験はないんだよねぇ。相当漫画を読んでる人でも原秀則という作家について論じる経験なんて無いんじゃないかなぁ、『電車男』の作画ってレベル以上では。
でもこの人小学館漫画賞を受賞してたりします。この作品ではないんですが。昭和62年度(第三十三回)小学館漫画賞を獲ったのは『ジャストミート』『冬物語』って作品ですが、未読なんでここでは置いておきます*1
で、今回取り上げた『部屋(うち)においでよ』って作品は中々出来ないことをやってるんですよね。物語はカメラマン志望の大学生とクラブピアニストの恋愛模様を描いています。女のピアニストの方がとんとん拍子でサクセスしていく中、一人写真の方向性に悩む男。好き合っていた同士がやがてすれ違いを演じていくんですね。やがて男のカメラマンとしての芽が出始めるんですが、そこにはもう女の居場所はなかったと。二人はそれぞれの道を行くことになります。
ざっとこんな話なんですが、何処がすごいかって?ご都合主義における男のサクセスは仕方ないにしても無理矢理延命手段*2を延々として、最後に大団円というおきまりの恋愛漫画パターンをとらなかったことですね。必ず成功するパターンよりもむしろ失敗する方に話を持って行っているのは、漫画では珍しいです。題からするとこの結末は始めの方から頭にあったのじゃあないか、ともとれます。恋愛物としては佳作の域に達してる作品なので是非読んで貰いたい一冊です。丁度今年復刻してますし。とはいえこの人の絵柄はちょっと癖があるので万人には受け入れがたいかもしれませんねぇ。

蛇足:なんか絵柄というかキャラクターの雰囲気から村枝賢一氏と原秀則氏が脳内で被る。村枝氏のキャラ絵は直線的で伸びやかなのに対して、原氏の方はこぢんまりしていて曲線的だし、陰陽と言えるぐらい違うのに何でなんだろうなぁ。
村枝賢一氏の漫画では『RED』がお勧め。

*1:えらそうなことは何も言えないw。未読な時点で説得力皆無

*2:追加キャラクターによるテコ入れを用いた恋愛物の愁嘆場