麻耶雄嵩 神様ゲーム

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あらすじ

ぼくこと黒沢芳雄は、実に些細な誕生ケーキのろうそくを吹き消すとき毎回一本だけ残ることが気になる小学四年生だ。今のマイブームはラビレンジャーと同じ地区の友達で結成した浜田探偵団。ラビレンジャーは毎週欠かさずにみてるし、探偵団の方は廃屋をみんなで手を入れて立派な秘密基地にした。
探偵団のメンバーはぼく、リーダーの坂本孝志、のび太そっくりな内海俊也、お転婆な辻聡美、そしてぼくがほのかな恋心を寄せている山添ミチルの五人だ。同じ限定地区でなければぼくの親友である岩渕英樹も仲間に入れてあげたいのだが、掟がそれを許してはくれない。
ぼくらは集合日を決めては意味もなくそこへ集まり、関心事について語り合った。今の関心事はねこ殺しの事件で、ミチルがたまに餌をやっていた猫も犠牲になったことで皆そのことについて話し合った。既に四件も起きている。だが、探偵団と銘打ってあっても実際は子供だ。何が出来るわけでもないはずだった。
今週はトイレ掃除の当番が鈴木太郎と同じだった。鈴木太郎というのは半月前に引っ越してきた生徒で何とも地味な人物だったため、学校のどこであれ保護色を身に付いているような印象をぼくは持っていた。二人きりのトイレ掃除ということで気を利かせてぼくは鈴木に喋りかけてみることにした。
「ねえ鈴木君。鈴木君はどこから転校してきたんだい。」
そうすると鈴木君はこう答えた。
「ぼくかい? ぼくは天上から来たんだよ。」
そう、彼は自分が神様であると理路整然と言うのだった。そして様々な話をしてみるのだが、どうやらそれは真実を述べているらしい。その中でぼくは自分が死ぬのは三十六歳の時に札幌行きの飛行機に乗り合わせたさいに飛行機事故で死ぬという事を聞かされる。でもあと二十六年というのはぼくにとって現実味のない話だった。
翌日、再びトイレ掃除を二人でしているうちに我慢が出来なくなり、ぼくはねこ殺しの犯人を聞いた。鈴木太郎は答える秋屋甲斐だと・・・。

感想

麻耶雄嵩初読み〜。今まで読まなかったのが惜しいですわこりゃ。子供向けで?な部分もありましたが、最後でやられるどんでんには度肝を抜かれない人は居ないんじゃないかなぁ。素直に快哉の声が出ましたわ。夜分ご近所迷惑ですがねw。読書の楽しみという物を久々に思い出しましたわ。こりゃあほうぼうで激賞されるのもうなずくよりほかない作家でさぁな。その一方で非難されるのもやむかたないってのも合点がいきます。こりゃあ喧々囂々免れることは困難でしょう。特に本格畑の方々からすればふざけんじゃねぇ!ってな怒号が吐かれても仕方ないでしょうし。ただ、本作が基準で恐縮なんですよねぇ。この本って体裁からしジュブナイルじゃないですか。麻耶雄嵩の本質はこんなもんじゃねぇ!って言われてもしゃーないですし。
それにしても行間が極端に空いて一ページにたった十三行で一行たった36文字!なんたる紙の無駄!とかいうのは明らかに的はずれな非難ですが、流石にこの本の価格が2100円ともなれば言わずにはおれない。文庫落ちするのかすらちょっと微妙なミステリーランドシリーズですが、文庫落ちしたときは買わなきゃなぁとチェックリスト入り。この本は約280ページありますが、前述の一ページあたりの文字量と10ページ間隔ぐらいにやってくる挿絵からして大体文庫落ちしたら半分ぐらいの分量になりそうです。そう、短編よりちょっと長い中編ぐらいの内容ですな。それに2100円はちょっとねぇ・・・。あいやみなまで申されるな、ハードカバーの単行本は印税が高めに設定されているから即作家の懐に反映されるというのはよーく承知。されど、それは同じく挿絵師にも金が入ると言うことではないか。儂ぁこの装丁挿絵担当の原マスミの絵が嫌いじゃ。パステルだかクレヨンだか油絵だか知らんが、いかにも教育委員会から「暖かみのある絵」とか言われそうな糞下手くそな児戯を真似た狡猾なヘタウマ絵からは嫌悪しか生まれん。気持ちが悪いったらありゃしねぇ。こんなもん願い下げだ。
ま、それはさておいて本格から嫌われそうな点について少し。ええ、推理と言うよりも神だからという世界の定理によって事件の謎は解決しちゃうわけですな。まずこれが一点。神を騙るわけじゃなくて語っているのが一点。最終局面におけるぼくの推理の飛躍が一点。最終解答の解法を記さなかったのが一点。合計四点が恐らく駄目なんじゃないかなぁと思った次第。でもそのあたりはセンスオブワンダーでスルーする方向のほうが佳いんじゃないかなぁ。そっちの方が面白いじゃない。
私の場合、ミステリーというか読み物に、ストーリーの先読みの出来無さというか新奇さを求めて読書をしている節があるので佳い意味で期待を裏切られるというのは実に楽しい出来事ですから、この作家を追っかける佳いきっかけになりました。
80点
鬱味のゆるい乙一みたいだなぁ。
蛇足:ただ、私が喜んだからと言ってこれがジュブナイルとして成功してるかはかなり微妙な気がするw。下手したら読書の方向性がかなり偏重して狂うかもしれないしね。
追記:今までの反動で採点が甘くなっているかも知れない。

参考リンク

神様ゲーム
神様ゲーム
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麻耶 雄嵩
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