金城一紀 フライ、ダディ、フライ FLY,DADDY,FLY

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あらすじ

平凡な家庭と平凡な日常を謳歌するサラリーマン鈴木一。彼はいつまでもそんな日々が続くと思っていた。だが、ある日帰宅すると家には誰も居なかった。娘と嫁に何かあったのか?と焦る一が目にしたのは四角いメモ用紙だった。病院にいるという。気が動転する一はタクシーに乗り書かれていた場所へ向かった。
待っていた妻はどこか怯えていた。そこで会ったのはボコボコに殴られた娘と殴った相手、そして殴った側の学校の教師だった。よくあることですよ、そう言った教師に言葉に腹が煮え立つ。うちの娘に限って!そうどこの親も言う言葉がとっさに口から滑り出る。だが、私は本当に娘のことがよくわかっているのだろうか。そう暗く沈んでいこうとする胸の内に差し込んできたのは、娘のか細い声。助けを求めるすがる声。冷えた胸に火が灯る。
状況を説明しろ!といきり立つ一に教諭がよくある男女の諍いだという。だが、それはない。暴行を働いた男の謝罪は形だけの者だった。立ち向かっていこうとしたが、途中で止められてしまった。ああ、なんて俺は無力なんだ。自己嫌悪に陥る。そこに追い打ちをするかのように学校の者が封筒を渡した。
「お約束下さい。これ以上、騒ぎを大きくしないことを」
もう一にはやることはなかった。
二日後の昼にTVで見たのはあの殴った男だった。インターハイ三連覇のかかる期待のボクサーなのだそうだ。二親とも役者をしている芸能人なのだそうだ。あんな事をしながら暢気にTVにでるような軽薄さに吐き気がする。そしてこれが日常の壊れる音だった。
翌日、家にあった包丁を手に石原なる男の居る学校に向かう。兎に角殺すつもりだった。学校に入り、教職員を使って石原を呼び出すつもりだったのだが、何の因果か近所の別の高校に来てしまっていたのだった。計画失敗、逮捕で人生終了。娘にまた重い十字架を背負わせることになるのか・・・と思ったが、一が相対したのは気の良い若者達だった。事情を説明し、その石原をやっつけようという話になった。もちろん一の手で。
一はその足で会社に赴き一月半ばかりの休暇を取ることにした。心配する同期の男に事件を話し、娘を救うためだと言った。出世も止まる事になるのだろうが、些末なことだ。
翌日から在日朝鮮人の朴舜臣の格闘技のレクチャーが始まった。基礎体力のない一はまず腕立てや腹筋、走り込みからやることになった。石原よ待っていろ!

感想

金城一紀、ここでは初めて。『GO』を読んで以来ということになります。しっかし相変わらず民族自意識の高いこと。色々勘ぐってしまいますよ。例えば格闘技をレクチャーするって事は「我々が文化を教えてあげたんだ!」ってのが含まれてそう。過剰な自尊心の現れですなぁ。あと、朴の爺さんが強制連行?いや、ほんとに徴用されていやだった人は帰ってるはずだけど。それに徴用は当時日本人だった朝鮮人も当然受けるべき事柄だし、何より日本にどれだけの朝鮮人が不法に入って来ていたか知らないわけじゃあないだろうに。被害者意識だけは高いのよねぇ。戦後に戦勝国の人間だと暴れていたのはどこの国の連中でしたっけ。おまけに土地の占有とかもしてましたよね?現在の朝鮮学校なんかは大半そうやって不法占拠した土地だし、もめてるウトロもそうだしね。おまけに朝鮮人が同胞を騙していざこざになってるしなぁ。あと、ベトナムの話も書いてあったけど、敵と味方両方から恐れられていたってのは書かないのかな。犯して殺し犯して殺し、どんだけ被害が出たことか。ベトナムの母親とレイピストの韓国人から生まれた膨大な数の子供の事とかもなしか。おまけに米軍本部にキムチ送ってくれニダ、とかアホな要求出してたこととかは?なんか美化されまくってるなぁ。プロパガンダのようだ。*1
ま、そのあたりを除けばおおむね良好。というか、大抵の本が吹いて飛んでしまうようなアドレナリンの宝庫。ドッパドパ出しつつニヤニヤ出来ます。個人的にはピンポイントにヒットですね。中年男性の復讐。ただライトすぎるので深く考える必要はほぼ無いですな。暗いノワールとかハードボイルドとかそういう感じではないです。ほとんど漫画の如く短時間で読めますし、だれる心配もほぼ無いと思います。なお、ジャンル的には青春小説っぽい。でも主役は中年なので遅まきの春かな。ま、さわやかなだけに、上記の瑕疵が痛い。だって明らかに必要ないでしょうそんな設定。作者は在日の姿を書いてないと死んでしまうのか?w。そろそろくだらない軛から解き放たれた方が佳いと思う。これだけの快作に勿体ないよ。
オチも特に問題なし。娯楽作としてはかなり点数高いわ。文章はやや少なめだけど、柔らかくて比較的取っつきやすいかと。誰にでも勧められる分、プロパガンダに引っかからないようにあらかじめ誘導しておいた方が佳いかもしれない。学校では日本人が悪いと未だに教育しているわけですから。中高生じゃあなんか勘違いしそう。でも虚構と事実の判別つかないわけでもないと願いたい。
この話は女性よりは男性向きかな、復讐ものだし。猪突猛進する様を見たかったら読むと佳い。
でも、この類の話って結構作られてるから下手に書いたら目茶苦茶面白くなくなると思う。それが面白いんだから、筆が佳いんだな。普通の本書くようにならんかなぁ。
85点。
プロパガンダ無ければ90点つけてたなぁ。
蛇足:映画化されてます。もうDVDも出てるみたいですね。なおこの作品はゾンビーズのシリーズ物だそうです。ゾンビーズってのはこの話の中だと朴舜臣の仲間達ですな。

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*1:どうでもいいけど、朴舜臣って名前も舜臣は李舜臣将軍から来てそう。まぁ、国の英雄だから分からなくもないけど、それつけるのもなぁ