石田衣良 池袋ウエストゲートパーク

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あらすじ

真島誠がプーから池袋の何でも屋として活動を始める切っ掛けとなったストラングラー(首絞め魔)事件の顛末

  • エキサイタブルボーイ

Gボーイズのキング安藤崇から頼まれたのは羽沢組の関係する事件だった。なんでも組長の一人娘が失踪したらしい。最近池袋ではお化けワゴンの噂が出回っている。果たして関係はあるのだろうか?

  • オアシスの恋人

シュンの機械関係の師匠とアキバを巡った後、店に現れたのは風俗嬢だった。ちなみに元同級生で千秋という。彼女は店に来るように言付けと金を渡し、誠が店に行くと漸く依頼内容を話し出した。彼女には付き合っているイラン人が居るのだが、千秋がスピード(覚醒剤)に嵌っている事に憤り、売人と卸しの取引の場まで赴き取引商品を燃やしてしまったのだという。卸の天道会というヤクザは犯行を行ったイラン人を見つけ出そうとしているらしい。彼女の依頼はそのイラン人のカシーフを助けることだ。

誠は初恋を経験する。誠をよく知る池袋署の少年課の吉岡から紹介されたというフリーのジャーナリストをしている加奈という年上の女性に誠はおぼれきっていた。
それはそれとして、池袋は今ギスギスしている。今まですべてを仕切っていたGボーイズだけじゃなく他のチームも有ったのだが、共存共栄を図ってきた。しかし、それが崩れ去ったのだ。今や「Gボーイズ」と「レッドエンジェルス」は報復合戦の真っ最中だ。カラーギャング同士の抗争だから街からは赤と青のそれぞれのチームカラーを表す服を着るものは消えた。
誠は加奈のルートとは別のルートからこの問題を解決しようとしていた。報道という力ではなく、誰がこれを仕掛けて後ろで絵を描いているものを見つけ出し、平和な池袋に戻そうと・・・。

感想

オール読物推理小説新人賞受賞を受賞した本作の表題作。一応処女作って事になるのかな。また多分筆者の代表作でもあります。しかしまぁ、世の中に膾炙されてるのはTBSドラマ版の宮藤官九郎脚本のものでしょう。読んで思ったのはエッジかもしれないけど力量不足だなぁということ。それだけクドカンが凄いって事ですが。疾走感はあってもキャラクターそれぞれにほとんど口調から見える差異がないんですよ。本にするってのは映像にするってのと全然違い、生きている言葉をそのまま叩きつける場としてはふさわしくないのかもしれないけど、やってみる価値は有ると思うんですよ。例えばライトノベル。万人に読まれているとは言いがたいけれど、読んでみれば口癖とか口調とかでアクセントを置いてキャラクターが脳内に再構成されやすいんですよね。果たしてこの本はそういう面でそれぞれがきちんと印象として残るか?って点は疑問です。何よりドラマ版との差異で感じるのはむやみにキャラクターが美化されてることですね。冷静沈着で、思慮深く大人なキャラクターが描かれちゃってるのが問題かと。高校を出てプーになった主人公の真島誠がこんな酸いも甘いも嗅ぎ分けた四十路近い感じの探偵みたいなことやって違和感が出ない方がおかしいと思うわけですな。流石にこんな無教養な奴でしかも十代の奴からシェークスピアの一説が飛び出したりするのは奇異なんですよ。そもそも主人公は本というものをほとんど読まなかったと言うことなんだから知ってる条件そのものが狭まってるのに、出しちゃうような所は痛いですね。口調もなんかフィリップ・マーロウ気取ってるし気持ち悪い。こんな十代いたら嫌すぎ。
それに引き替えクドカンバージョンは十代というものを軽やかにしなやかに表現しきってます。素直にシリアス路線だけじゃなく彼独特のユーモアを交えながら視聴者を魅了していましたからそりゃあ視聴率も取れたでしょう。
では鬱憤はこんなもんとしてそれぞれについて云ってみます。

これがドラマ版の下敷きですね。読んでみて驚くのがその内容量の踏み込みの甘さ。まるでプロットを読んでるようですよ。これから長編を書くための内容打ち合わせみたいな感じです。軽いし早いんですが、ほんとにそれだけ。キャラクターに魅力がないのは悲しいですね。予想もしなく速攻で終わったので漸く短編集だと気づきました。これが推理物として捉えられるのはちょっと問題じゃないかなぁ。若者のギャング化というおままごとを中心に据えた革新的な小説かもしれないけど、ちょっとなぁってのは本心。だって日本じゃギャングとか云っても貧困から来てどこにも居場所が無くて、そこに所属するだけが自分の生きる道みたいなゴリゴリの孤独と団結なんて無いもの。だから所詮おままごとにすぎない。そういうのは実社会で会社員になってる普通の人の方が感じてるんじゃないかな。

  • エキサイタブルボーイ

確かに数年前拉致ってレイプってのは流行りましたな。それが発端となって殺されると言う話はノワールものにはありがちなんですが、組問題ですんなりいくもんなのかなぁとは思います。任侠は流行らない時代ですから。それなりに面白かったと思いますが、記憶にはそんな残らなかったかなぁ。

  • オアシスの恋人

なんだかんだ云っても、イラン人というかアラブ・ペルシャ系の人間が渋谷・池袋界隈で売人を延々続けてる事実はねじ曲げられないことです。最近では半島ニューカマーとか支那系も居るみたいですがね。まあ、一握りのいい人を出すって演出は日本人の外国人に対する自虐的な加害者意識からくるものと感じるわけですが、考えすぎですかね。まぁ、薬は止めた方がいいです。これは間違いのない事実ですから。切っ掛けがなんであれ、タバコと同じで販売元を潤すだけで佳いことはないです。人生を狂わせるだけですから。
漫画家なんかでもいるんですよ、頼ろうとする人間が。行き先が見えてるのに想像力をかき消してすがるのは緩慢な死を望んでるからなんでしょうが、それならひと思いに死ねと。ドラマ版のキング役をやった窪塚洋介みたいに「I Can Fly!!」って飛び降りるみたいにね。
ま、なんにしてもAFでそこまで稼げるか?と思わなくもないのでした。風俗もデフレの影響受けるからなぁ。

こっちもドラマ版で使われた内容ですね。Gボーイズとレッドエンジェルスの抗争と。そこに出てこなかったフリージャーナリストとの出会いとか、軽めの恋愛物の様相の方が強いですね。ドラマで一応見てるから新鮮みは0。


ドラマのファンは読まない方がいいと思った内容でした。つか、クドカン翻訳が妙味すぎるのが問題なのかもw。馬鹿なはずなのに無意味に知り得なさそうな知識が主人公からガンガン出てくるのはダメすぎですな。ハードボイルド気取るなら設定年齢最低十歳以上上げなきゃダメですよ。
ハードボイルド好きを舐めすぎ、オヤジ好きを舐めすぎ。あと長編だったら良かったのに。
70点

参考リンク

池袋ウエストゲートパーク
石田 衣良
文芸春秋 (1998/09)
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池袋ウエストゲートパーク
石田 衣良
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