石田衣良 約束

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あらすじ

  • 約束

通り魔に幼なじみを殺された少年がPTSDになるが立ち直る話

  • 青いエグジット

引きこもりでニートで片足を無くした身障の清人がダイビングという生き甲斐を手に入れる話

  • 天国のベル

西本雄太はある日両耳が聞こえなくなる。医者にかかると肉体的に問題はなく、心の方に問題があるようだ。母親の尚美は息子を心療内科に通わせるが、その間に同じように娘が口をきけなくなってしまった京子と出会う。尚美は夫を浮気の旅行中に無くしている。京子は京子で夫との離婚調停の真っ最中だという。
京子は夫と嫌々旅行しなければならないといい、自分たち一家だけだと気詰まりなので、西本一家を別荘へと誘うのだが・・・。

  • 冬のライダー

佐伯正平はモトクロスの練習を早朝に行っている。好きではあるのだが、一向に上手くなる様子はなく、250CCのエンジンを持ってしても80CCバイクに乗る小学生には勝てないでいた。体重差を差し引いたとしても馬力が違うのだから負ける方がどうかしている。彼はそこで有る女性に出会う。彼女は次々と正平にオフロードのコースの見方、コーナーの攻め方など基本的な事柄を教えていくのだが・・・。

  • 夕日へ続く道

川本雄吾は元来世の中をまっすぐにしか見えなかった。どうにも世の中には彼にとって不合理にしか思えなかったのだ。些末なことすらきっちりしすぎている世の中には彼の居場所はなかった。幸い彼の両親は反対意見を持たなかったので学校に通うのを止めてしまったことにとやかく言わなかった。とは言えいまだ義務教育の年齢だ。雄吾は人と同じ事をすると云うことに不快感を持っていたので引きこもりにはならずに、出っぱなしを選んだ。寒風吹きすさぶ公園のベンチで彼は何をするでもなくぼーっと過ごしていた。彼が唯一していることと云ったら、両親から出される課題図書を読むぐらいの物だった。そんなことをしているある日、雄吾は電化製品の廃品回収業者をしている八坂源一という老人に出会う。

  • ひとり桜

溝口邦弘は風景写真家だ。今日は花崗岩の岩場に聳え立つ一本の染井吉野を撮りに来た。荒れ地をランドクルーザーで掻き分け、夕暮れ時に現場に着いた。今日は着いてすぐに夕日をバックにした寂しげな桜の花を撮影した。まだ若木の樹からは生命力が溢れているのだが、こういう時間帯の日の光もまた乙な物だ。撮影しているところに女性がひとりやってきた。地元の人ですら滅多に来ないこんな場所に女性ひとりとはまた珍しい。女性はすぐに帰っていったが翌日もまた現れた。

  • ハートストーン

有坂一家は派手ではない物のそれなりの暮らしをしていた。しかし、それは息子の研吾が倒れたことで突然打ち破られた。母親の志津子の実家に遊びに行っていた研吾が倒れ、救急病院での検査の結果研吾には小脳に腫瘍があると言うことだった。さらなる検査の後に分かったのは腫瘍が良性ではなく悪性の髄芽腫であると言う最悪の知らせをもたらしたのだった。

感想

石田衣良六冊目。相も変わらずテーマは再生とかそんな感じ。悲劇と幸福でも佳いのかもしれないが、ちょっとあざといよね。ノスタルジィ溢れるファンタジックな日常の延長線上な作品集となってます。正直筆者のこのタイプの話は火傷気味かな。読みやすいのは確かなんだけどね、どうにも底が浅い。

  • 約束

でました事件を追悼する感じの作品。今回は池田小学校の事件にショックを受けた作者が何とか出来ないか?と言うことで書いたとあとがきで語ってますが、もうね、それを商売に絡めるのはどうよ?っていう風にしか思えないね。結局得をするのは作者でしかないんだしね。むしろそういう事件をベースに取り扱うことでアイデアを貰ってるだけなんじゃないの?という疑問しかわかん。
残虐な事件に心を痛めている僕ちゃん可哀想、っていうよく分からんナルな自己完結を見ているようで胸くそが悪い。もう四回もそういう事件が発端になった作者の小説を読んでいるのでアホらしくなってきた。一回ならまだしもまだ続けるのか?計算ずくと思われても仕方ない。

  • 青いエグジット

現代の問題になっている引きこもり。作者は社会弱者と現代の問題を取り上げるのが大好きです。だから社会弱者のみんな僕を応援してね、というようにしか思えないのは色眼鏡で見すぎですか、そうですか。
つか、親父さんとお袋さんの方に視点をもっと当てた方が面白そうだがな。わがまま放題の馬鹿の話を読むだけで胸くそが悪くなる。どっちにしろわがままの延長線上だろうが!根本的な解決には至ってないのだから対症療法にしかなってない。せめて根本治療を完了するあたりまでいけや

  • 天国のベル

ファンタジックな話。普通にこう言うのをトップに持ってくればいいのに。こういうのベースでショートショートを大量生産なら売れるんじゃないの?

  • 冬のライダー

恋愛模様ですか。若い男性に受けそうですね。でも凡庸。なんつーかそれなんてエロゲ?って雰囲気。

  • 夕日へ続く道

また引きこもりネタです。作者はこれを出したがってますが、なんかもう飽きたなぁ。別にみんながみんな興味持ってるわけじゃないんだからもういいよってのが正直な感想。老人と若者ってのは映画や刑事ドラマで定番ですがねらいが分かりやすすぎて見えすぎてるのでどうでもいいや。

  • ひとり桜

老いらくの恋のはじまりと、まぁそういうわけですが、全編で一番良いかもしれない。何も始まってないんですから。

  • ハートストーン

んなことで人ひとりの命が救われたら医者は要りませんよ!とは友人(医者)談。まぁお守りとか護符とかアミュレットとか何でも佳いわけですが、神頼みに落ちたら人間としての尊厳を失いますよ。精神論はまだしも、神頼みに堕して叶わなかった日にはその存在を呪うなど筋違い甚だしい。予定調和で成り立ちすぎてるので読まなくても佳いような話。


作者はもう短編封印した方がいいですよ。底が浅いので同じような話の粗悪濫造にしかならないわけですから。私が一番最初に読んだ『LAST』って本も中身は金貸しに金を借りて失敗した話だけをチョイスした平成金借り残酷物語ってな話だったわけで、金太郎飴のように大元が同じ話しか書けないみたいですね。故に長編だけに絞った方がまだましです。
とはいえ、図書館に一度に多数予約入れてまだ石田衣良の本が残ってるっぽいんだよなぁ・・・。どうしたもんかな。その中に短編集有ったらもう読まなくても内容が分かるだろうから十分だと思うんだけど。こうやって振り返ってみると東野圭吾の懐の深さを思い知らされるね。例え書いてる本が常に面白くなくても、レパートリーが有るだけに先読みできなくて実に楽しい。
石田衣良ももうすこしネタを増やすべき。
40点。
なお、この本がわるいと言うわけじゃないので、こういう本が読みたい人にとっては80点ぐらいなんじゃない?もう私は飽きたので面白いとは思いがたいんだけど。

参考リンク

約束
約束
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石田 衣良
角川書店 (2004/07/27)
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