米澤穂信 氷菓

ASIN:4044271011

あらすじ

エネルギーを浪費しない事を信条としている折木奉太郎は旅行先の姉の進言というか脅迫というか讒言というか何かによって、入学したばかりの神山高校でとある部に入ることになる。帰宅部にすることを決めていただけに正直面倒であったが、入ってしまったからしょうがない。入った部は古典部。三十年以上続いている由緒正しいものらしい。ただし、先輩が居るわけでもなく、活動内容は不明だ。
入部したこと、姉から部員が0であると聞いていたことを友人の福部里志を話すと、奉太郎が部活動を行うという事実に驚きながらも、それは=部室がプライベートスペースに早変わりするじゃないかと見方を変えた言葉を言われてなんとも納得してしまった。
だが、あいにくすべてが上手く事が運ぶわけもなく、行き着いたプライベートスペースには先客がいた。唐突に名前を呼ばれ憮然と誰何してしまったが、笑顔を渋面に変えるでもなく名乗った、「千反田える」と。実に変わった名前だ。里志曰く、桁上がりの四名家の一つらしい。荒楠神社の十文字家、書誌の百日紅家、豪農の千反田家、山持の万人橋家の四つで四名家らしい。で、件の女人は豪農らしいが、本編とは全く関係がない(ぇ
ここで一つの謎が生まれる。それを奉太郎が解決したことが発端になって里志、そして里志に恋する乙女伊原摩耶花古典部に入る。おまけに始めに解決した謎とは別の千反田えるが抱える謎を解決するために古典部は動き出す。

感想

久々に文庫でここまで薄い本読みましたわ。乙一の本以来ですかねぇ。200ページ強しかない。ちょっと物足りなかったかな。ちなみにこれが米澤穂信のデビュー作。一応第5回角川学園小説大賞奨励賞を受賞してます。
ここまで露骨に殺人抜きの青春ミステリー小説をやられるとはちょっと予想外。とはいえ米澤穂信は前読んだ「さよなら妖精」も似たよう話でしたな。アレほど露骨ではない物の、今回も作品中に淡い淡い恋心のかほりがするわけで・・・、ええい、青臭い!こうも青臭い内容がつらつら続くと逆毛が立っちゃいますよ、耳に吐息を吹きかけられてるようですよ。耐性がないというかなんというか。Mの人じゃなんで、ちょっと耐え難いですねぇ。
とはいえ、ミステリー初心者向けの本ではありますね。これで興味を持ってくれれば、他の本にも手を出しやすいというか、泥沼というか。それでもちょっと厳しいのはワトソン役が居ない事でしょうかね。それっぽいのは居るけれど全然機能してない。そのあたりがしっかりしてればもっと良くなったような気がします。気のせいかもしれんけどね。
この本角川スニーカー文庫の中のミステリー倶楽部なるものからでてるらしいけど、普通に角川文庫から出せばいいのになぁ。青春を忘れた大人向けな感じだし、スニーカー文庫の中じゃまともだと思って手に取る人の方が少ないだろうしね。なんつーか高校生が主人公の癖に、高校生臭く無さすぎる。そのあたりはリアリティ欠如だわな。「さよなら妖精」でも感じたけど、作者が小難しく文語使うの辞めた方がいいと思う。確かに個性だけど、人口に膾炙しない死語をちりばめるのはマジで止めてほしいわ。古典部ってのは作者の出身なんじゃないの。それのせいでこんな文章になってそうだけど、テンポ悪い。テンポの悪さをごまかすために改行多めにしたり、文を細かくしていったりしてるけど、隠し切れてないわ。まぁ、好みだろうけどね。
探求する謎に心躍る物を感じなかったので、いまいち。ただ、入門書としては悪くないと思う。ラノベの文庫に収録なんだから、若年層の読者にアピールする方向でもっとキャラクターを立たせた方がいいような。
55点。
青春小説好きな人は80点ぐらいかな?

蛇足:現在「愚者のエンドロール」読み中。米澤穂信は明日に続く予定。古典部シリーズの最新作「クドリャフカの順番」はまだ手元にないので、手に入り次第読む予定。でも怖気に勝てるかなぁ・・・。
キャラクターを外国と結ぶのは放浪したいという作者の願望なのだろうか?旅路から帰ってくると家が一番といつも感じる私からするとどうにも縁遠い。

参考リンク

氷菓
氷菓
posted with amazlet at 05.08.26
米澤 穂信
角川書店 (2001/10)
売り上げランキング: 18,894