宮部みゆき 初ものがたり (愛蔵版)
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あらすじ
本所深川一帯をあずかる「回向院の旦那」と呼ばれる岡っ引きの茂七の物語。
- お伊勢殺し
下之橋の先で杭に引っかかった女の土左衛門があがった。
- 白魚の目
亀久橋の近く、冬木町の寺裏のお稲荷さんに隠れ住んでいた浮浪児達が石見銀山入りのいなり寿司を食って死んでいた。
- 鰹千両
棒手振り*1の魚屋をしている角次郎の所に伊勢屋という呉服屋の番頭がやってきて、わざわざ千両で鰹一尾を買うと言っているという。
- 太郎柿次郎柿
日道という餓鬼が占術などで名をあげているという。ついでに亀久橋のそばの船宿で男が殺されている。
- 凍る月
河内屋の松太郎は入り婿でしかも奉公人上がりな為、人を使うと言うことにひどく神経質だった。その店で一尾の新巻鮭が行方不明になり、ヒステリックに松太郎は茂七に何とかして貰おうと考える。
- 遺恨の桜
茂七が嫌う日道が誰かにお礼参りされたらしい。茂七は子供をたたきのめす外道を捜し始める
- 糸吉の恋*2
茂七の手下である糸吉の淡い恋の物語
感想
いやぁ、やっぱり宮部みゆきは時代物の方が全然いいです。なんで現代物に固執するのか非常に謎。こっちの方が独特の文体に残るくさみみたいな物が、良い具合に味になってるし。時代物としては時代考証が苦手らしく、TV時代劇的な内容だけれども、あんまり突き詰めると夢が無くなるので、これはこれで佳いという状態ですかね。すがすがしい快作。
なんつーか時代物の初心者向け小説の趣があります。鬼平とかよりは全然読みやすいかと。惜しいのはこれきちんと完結してないことですな。なんかこれ以外にも茂七を主人公にしたシリーズ作として「本所深川ふしぎ草紙」や「幻色江戸ごよみ」に収録されてるらしいんですが、なんともはや読んでみないと何とも言えない。本としては一冊にまとめておいて欲しかったなってのが正直なところ。まぁ、短編ですしさくさく読める分量ですから、そのうち読むことにします。しっかし、いなり寿司屋台の親父は一体何者なんだろう・・・、それだけはきちんと片付けて欲しかったなぁ。あ、個人的な脳内変換では茂七親分はパトレイバーの後藤隊長になってますw。
なんでもNHKでドラマ化されたとか。DVDとか出てないんでどんな内容だったのかは不明。どうやらドラマ化を記念して愛蔵版のハードカバーを出したらしいですね。私が読んだのは愛蔵版の方でしたが、「糸吉の恋」が付いていたので儲けもんでしたな。
80点。