牧村泉 邪光

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あらすじ

樋口真琴は夫の転勤を機に仕事を辞め、一緒に大阪に移った。越した先には社宅のマンションだったで暇をもてあましていた。ある日隣の部屋から垢じみて汚い格好をした少女が飛び出してくるのに遭遇する。彼女は外之原黎子と名乗り、真琴は暇をつぶすが如く家へ招き入れた。名前を聞いたときに違和感を感じなかったわけではなかった。記憶の隅に引っかかった糸を解きほぐすようにして思い出した外之原という名前。赤光宝霊会事件の主犯と目される教祖外之原久江の娘がこのマンションに居ると知ったのは一月ほど前のことだ。好奇心を刺激されたのは確かだが、直接的に関係を持つとは考えていなかった。
だが、彼女は真琴の煎れたココアを飲み、赤光宝霊会事件について自分の意見を語ったのだった。
「うちのお母ちゃんはな、あれ、ほんまもんのアホやねん」
そう言った彼女の声や顔には悪意は感じなかった。物言いのクールさとこちらの打つ間抜けな相づち、そして単なる年長者への敬いの無さに対する不快感。そんなものだった。
その邂逅以来、出会ったりするたびに声をかけたり、話をしたりの仲になったのだが、じわじわとマンション建設反対運動をしてきた人物の死、そしてその犯人がマンション住人だったことなど、妙にマンション周辺で事件が多くなり、治安の悪化を感じるようになる。マンション住人が外之原の娘がこのマンションに入るなら引っ越す等とヒステリックに叫ぶ人物が居たのだが、単なる差別などとは言えない状況になってきた・・・。果たして外之原の娘が諸悪の根源なのだろうか?

感想

第三回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。そこそこの出来のホラーってな感じでしょうか。これがデビュー作。まだ寡作な様ですが、これ以外にも二冊出ているようです。名前から拝見するに女性っぽいですね。作者経歴が広告制作会社勤務の後、コピーライターに移り、作家デビューとのこと。うーん、奥田英朗となんか似たような経歴だなぁ。最近はこれに似た経歴の持ち主がデビューする経緯が多いような気がするけど、どうなんだろ。御歳45歳らしいけど、最近遅咲きの作家が多いよね。文壇は果たして若返りを望むのかそれとも脳死に近づくのか、観察するのは楽しそうだ。
初っぱなは語りが関西弁で、「うへぇ、もしかして語り全部方言かよ」とか思ったんですが、単なるモノローグでした。方言で書かれるとどうも気持ちが集中し辛くて読み辛いんですよねぇ。まぁ、ベースが主婦のお話なのでどうにも世帯じみていけないね。
まぁ、読み物としては悪くないんだけど、結末付近の片付け方がちょっとねぇ。個人的な趣味で微妙かな。エピローグをきちんと付けるあたりはきっちりしてて佳いけどね。邪光って概念はなんかオーラ系の亜流なんだろうけど、全体としてそんなに目新しい物は無かったような。確かに文章は旨いけど、驚きが欲しいかなぁ。技巧以外のアイデアで楽しませてくれるようになったらファンになれそう。
ホラーというジャンルの根幹である、読者に恐怖を臭わせる事が出来ているので、もっとじっくり構造的な設定な部分だけじゃなくて、細かい部分でゾッとさせる事が出来るようになったら一皮むけそうだけど、言うのとやるのじゃ大違いだからなぁ。もっと直接的に怖がらせて欲しいところ。
文章力があるのでデビューは妥当かな。
70点。

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