山本周五郎 季節のない街
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あらすじ
『街』と呼ばれる貧民窟に生活する人々を描いた15の短編からなる群像劇。通底するのは貧乏だと云うこと。
感想
なんかえらく退屈な話だったと思います。周五郎の書いた話の中では今まで読んだ中で一番始末が悪かったような・・・。貧乏だからどうしたこうしたってな話は正直ピンと来ないんですわ。誰かに連れられて居なくなった人の話や、空想する乞食の話とか、悪妻の話とか・・・どこにも共感できないから醒めた目でページをたぐっていくのが苦痛でしようがなかったです。主人公が置かれなかった事と時代物じゃなかったのが問題なんでしょうかね。主人公、狂言回しが一貫していないからそれぞれの短編が同じ素地に立った話だというのは頭では理解できるものの、一編一編に相当な隔たりを感じるんですよね。偶に登場人物が被る話が出るものの、ちょろっとしか出てこないもんだからなんか物足りないんですわな。それにどこか皆病んでいるような人物ばかりしか出てこないのも魅力を感じない原因でしょうな。
教材として学校でやったならば、深く突っ込んでやれて佳いんでしょうけど、そこまでして読む本じゃないかな。
まぁ、おそらく『街』ってのは隠語で、部落的な物を指してるんでしょうな。昭和30年代の話だからほとんど見当付かないあたりが嫌な感じ。
そうそう、これ黒沢明が『どですかでん』の名で映画化してますな。「どですかでん」ってのは六ちゃんという登場人物の電車キチガイぶりを表す言葉だったりします。普通は「ガタンゴトン」と電車が動く擬音を云いますが、それが六ちゃんには「どですかでん」に聞こえると、まぁそういうわけらしいです。映画の中ではその六ちゃんが狂言回しに話が進んでいくらしいけど・・・、小説が退屈きわまりなかったから映画はどうなんだろう・・・。
正直ヒューマニティ語るなら赤ひげの方が好きなので、この作品はあんまり評価できないなぁ、読み物としてもあんま面白いと思わないし。人情譚としても、割り切りしまくってるから、相当にドライだしねぇ。
35点。