荻原浩 誘拐ラプソディー

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あらすじ

前科持ちで有りながら自分を拾ってくれた大恩ある親方をぶん殴って金を強奪した上に会社の車もかっぱらった男、伊達秀吉は軽くなった財布と共に死にたくなっていた。様々な自殺方法を考えていった結果導かれたのは排ガスを車内に引き込んでの一酸化炭素中毒での自殺だった。元々仕事用の機材車だったライトバンには工具や部品などあり、配管用のジョイント部分とたまたま積んであった掃除機のホースが、まるでこのためだけにしつらえられたかのようにぴったりとはまってしまった。つまり、過不足無い基本的な構造はきっちり揃ってしまったのだった。ただ、排ガスを引き込むホースを目張りするものがなかった為、コンビニにでも買い出しに行く必要があった。コンビニ行ってガムテープがなかったら自殺するのを辞めよう、そう考えながらコンビニに向かった伊達だったが、期待は裏切られしっかりとガムテープは置いてあった。小銭しか残っていない財布にもそれを買うだけの金もあった。自殺を考えてもいるものの、死ぬ気は全くない伊達は嫌々車への道のりをゆっくりと帰る。それでも何かのきっかけや希望があるんじゃないかと車に戻り目張りを終えて後は死ぬだけ・・・と言う状況になったところではたと気がついた。盗まれることを考えずにいたので鍵すらかけておかなかった車内に子供が寝て居たのだ。
(親方はきっともう警察に届けていることだろう)
やけくそになった伊達は子供を手なずけて誘拐することにした。幸い刑務所の中で誘拐のテクニックを「犯罪のデパート」みたいな人物に聞いていた。ガキは家出をすると言い、金と携帯電話まで持っていた。カモネギとはこの事。
よもやこのガキでトラブルとはこのときの伊達は知らないのだった・・・。

感想

荻原浩二冊目。
小中学生向けハチャメチャ*1ドタバタコメディークリミナルノベルってな感じでしょうか。軽薄感とその場しのぎ、勢いで何とかしようという感は強いものの、要所要所で締めにかかってるので望外に話が畳めないほどの広がりを見せた問題作って事はないです。キャラクターの作り込みはしているものの、リアリティ追求ではなく、物語を壊さない程度の内容に収まってます。ただ、それがちょっと窮屈で薄味な感じはしますね。鬼気迫るサスペンスの誘拐物読むなら『模倣犯』でも読んでればいいかと。こっちはコメディー路線だから「ズッコケ三人組」や「かいけつゾロリ」でも読んでた子供が次のステップあたりに読んでも特に問題ないかと。
でもまぁ、ちょっと最後の下りのまとめ方はロマンがないねぇ。なんかファイナルストライクでも仕込んでてくれれば良かったんだけど、これで凡作になってしまったように思う。もっとやり過ぎなくらいに臭い方向とか、唐突にシリアス路線攻めてみるとか意外性が欲しかった感じかねぇ。前に読んだ『明日の記憶』は恐怖を煽るあたりとか、結末とか結構好きなんですが、あれくらいの意外性が欲しかったなぁ。まぁ、出たのがその前なんで進化していると思った方が妥当なんでしょうが。
つか、この人の本だと『ハードボイルドエッグ』を先に読んだ方が良かったのかしら?作品の方向性の色でいうと一番しっくり来そうだしねぇ。
70点。
大人でも衒いなく楽しめる構成になってればもうちょっと良かったかも。しかもコメディーのままでね。ちょーーーっとこのままの話を映像化とか考えると恥ずかしすぎるし考え物。ネタは悪くないだけに残念。

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*1:もう死語だよなぁ。ハチャハチャだともっとやばいか