石田衣良 娼年

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あらすじ

見習いバーテンダーの森中領が大学に出られなくなって少し経っていた。大学に向かうと大抵体調の不良を覚えることになり、結局サボるより他にない。最近ではバイトの方が本業に近いような状況だった。
彼はどうにも女性に興味を持てなかった。セックスにしても単なる義務、労働にしか感じず、大抵長続きしないのだった。
ある日リョウは、ホストを営む友人の田島進也が連れてきた御堂静香という年配の女性に出会う。彼女はリョウに好感触を持ったらしく名刺を残したが、すぐに捨ててしまった。
一週間後に再び御堂静香が現れた時にはリョウのセックスに値段を付けてあげると言われ、リョウは酔狂な申し出にOKを出すことにした。
店からあがった後に御堂の車に乗って向かった先は古い洋館のようなレストランだった。そこでの話は静香が女性向け秘密デートクラブを主催しているということについての内容だった。退屈にすぎる日々に飽いていたリョウにはどうでも良かった。二人は食事を早々に切り上げ、再び車に乗って向かった。行き先は御堂の自宅で、セックスの試験をするのだという。しかも相手は静香ではなく、二十歳前後の女性だった。咲良という名だと云うことを聞き、結局セックスをしたが、静香の評価は辛く、五千円しか貰えなかった。そこへ咲良が五千円を足して何とかギリギリセーフになった。なんでも店の最低料金は一時間一万円なのだという。咲良が特に気に入ったと云うことでOKになったらしい。
斯くして、リョウは娼夫への道を踏み出した。

感想

石田衣良二冊目。しかしまぁ、内容は恋愛ポルノ。Vシネかはたまた野島伸司あたりでドラマ化かってな感じか。表層だけなぞった場合、母性本能をくすぐるマザコン男性の恋愛模様ってか。性別を全体的に入れ替えたことがこの作品のアクセントだと思われる。繊細さの描写をストレートにして、外面にそぐう内面という意味で主人公のズレが無くなって脱皮していく様は、普通の女が陵辱されてM奴隷になる様ぐらいに滑稽。性欲の対象として見なかった場合はしらけるんじゃないの?これ。性欲の対象としてみたとしても、かなり一般人向けに書きすぎじゃないかな。奇を衒って誰もが引くぐらいのフェチネタとか入れるべきだったんじゃあないかと思うんだがなぁ。WAMとか全身タイツ、腹切り、杭打ちとか色々重い系でも軽い奴あるわけだし。ほんのりした恋愛物として読むのはあんまりお勧めしない。でも女性読者はこういう恋愛物って大好きだったりするんだろうなぁ。さくっと読める文体に薄い内容の本書、息抜きにはいいのかも(女性限定)。
個人的には淡々と進みすぎる内容と主人公の麻痺し気味の感情から生まれる主体性の無さがイライラする。主人公ツンデレなのか?とかふと思った。ハーレムエンドとはまたこりゃエロゲかと。特に諧謔もなくシリアスとイノセンスさを強調するあたりはあざといなぁ。ただ、話の筋は単純きわまりないけどね。シンプルイズベストな人だったりするんだろうか?読ませるのは上手いけどね。
まぁ、恋愛小説は肌に合いかねるのはわかった。
65点。
蛇足:次は池袋ウェストゲートパークシリーズでも読むか・・・。

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