舞城王太郎 世界は密室でできている。

ASIN:4061822462
ASIN:4062750678

あらすじ

福井県在住の西村友紀夫と「ルンババ」こと番場潤二郎は、小学生時代にルンババの姉の番場涼子が監禁されていた部屋から抜け出し、屋根の上からダイブしたというトラウマを抱えていた。結果涼子は開放骨折した足の骨がのどに突き刺さり死亡したわけだが、後にそれが一種の事故であったことが分かる。
ルンババは以降探偵として事件を解くことに執心し出すのだが、友紀夫はあまり興味もなかったせいで気にしていなかった。
人が死んでも時は流れていく。
中学生になった二人だが、修学旅行の先東京で西村友紀夫はTV以外のところで初めて見る光景に出会う。不倫している男女の諍いだ。殴り合いの喧嘩になっていたので止めようとしたのだが、運悪く殴られてしまう。眉間を強く指輪で殴られたせいで、くらくらしながら居たが、なんとその殴った相手に車で拉致られてしまう。あれよあれよと状況は変化し、ようやく体調が落ち着き始めてきたら、着いた先は埼玉。連れてきた相手は井上椿、女性の方だ。勿論相手の男性をボコボコにして、友紀夫を殴った人でもある。着いた家には椿の妹井上榎がいた。両親は死去していて二人暮らしなのだそうだ。何故かは知らないが、雑談で時間をつぶすことになってしまい、自由時間の終了も押し迫り、友紀夫は泊まり先のホテルに帰ろうとするが・・・。

感想

あらすじは激しく適当です。だって中身無いんですもの・・・。
舞城王太郎は読むの二冊目です。『阿修羅ガール』が最初に読んだ本だったんですが、あれは酷すぎましたね。筋なし、山なし、オチなし。飛び込みで読んでも面白いとは思えない本でしたもの。舞城らしさは色濃いものの独自ルールが多すぎて初見には厳しい。疾走感を強調するのは佳いんですけど正直読み辛いってのばっかりが強調されてましたねぇ。内容に共感するようなネタがほとんどなくて、弄ってるのは2chネタと心霊ネタ、そしてなんかの寓話という足がかりがほとんど無い状況だったからダラダラと半ば作業的に読むしかなかったし。
つか、今調べてみたら『阿修羅ガール』って三島由紀夫賞獲ってたのね。ん〜どうなのよそれ?って感じが先に立っちゃいますねぇ。寓意が色々込められてるんだろうけど、正直全然分からなかったですし。ま、それはそれとして、本書の内容に入りますか。
こっちの方が『阿修羅ガール』より古いですな。拡散、派生手前ってあたりなんでしょうかね。最近文庫になったらしいけど読んだのはノベルス版。200ページちょっととかなり薄い本でした。そもそも、中身も段組してないので内容量が少なく感じたわけですが、まぁ、あの内容を段組にすると読みにくいことこの上ない気もするので、あれはあれでいいんでしょうかね。でもまぁ、『阿修羅ガール』で特徴的だった話し言葉と語りが混交になってる文章は健在でした。矢印とか小説内で使うなよ・・・、とかきちんと改行して読みやすくしてくれとか思うわけですが、あれが普通なんでしょうし改善は無理でしょうね。文章テクニックだけじゃなく、スタイルもなんだかへらへらしている印象は変わらず、好みで言えば正直やっぱり好きにはなりづらいのはしょうがないのかも。作中のジョークめかした部分とかはそんなに悪くないんだがなぁ。作品世界の俯瞰の視点が子供の視点という点は悪くないんだろうけど、やっぱりちょっと読んでて辛かったですねぇ。あざとさは感じなかったので比較的『阿修羅ガール』よりはましでしたが。
本書の裏表紙のあおりに「青春エンタ」とか書かれてましたけど、実際は青春と言うより幼年期のトラウマを主題に据えた適当ミステリーを無理矢理エンタメの構図に押し込めた感じですか。前述した疾走感が作品をなんとか支えてますけど、ストーリーに中身がないのとキャラクターがなべて現実感希薄なエキセントリックっぷりで過程抜きの結論ばかりを言われても正直どうなんだろう。ミステリーとしては読むべきじゃないわな、これ。舞城ワールドみたいなこと言われているけど、骨子だけ戴いてスカスカな造形芸術をしてるみたいな感じの作品ばっかりなのかなぁ。何かを作りたいんだけどアクが強すぎて商業的にはそれじゃ客を呼べないから、しょうがなく世間的に浸透している普通のテーマで喧伝してるけど、本人は別のものを作ろうとしているって印象。好悪が極端になるのもしかたないかも。個人的にはなしかな。無理に密室ネタをそこかしこに埋め込むこともなかったと思うしね。もっと衝動的なネタに走ってくれた方が読んでる方としてはダラダラしなくていいかと。
なんか疾走感と言うことだと平井一正を思い出しますなぁ。あの人の場合ストーリーを引っ張りまくりですけど、一体感があるのでこっちほどの過不足は感じないんですよね。まぁ、ひらりんはオチ付けが下手すぎるので読後感最悪なわけですが。オチを付けると言うことに関しては舞城はやや普通かなぁ。無難というかね。
ま、この本で比較的まともな内容の話を読めて良かったです。ただ、もう少しまじめにやってくれないかなぁ。55点。

追記:
あ、そうそう、ノベルス版と文庫版の両方のイラストは舞城が書いてます。ただ、表紙は両方とも意味はないです・・・。ノベルス版の表紙はマフィアの抗争みたいですけど、なーんも本編とは関わりないですから。文庫版の中身はわかりませんが、ノベルス版の方は章ごとに漫画が書かれてます。センスは感じますけどやっぱり全く関係のない落書きに過ぎません。深く考えずに読んだ方が無難です。
あと、舞城の佳いところ発見しました。序盤での話の引き込み力ですね。とりあえず入って待たされることがないって所でしょうか。序盤に延々と人物が沢山出てきて、覚えきれない設定を詰め込んだりとかしないので読み始めやすいです。ここは美点かと。

蛇足:図書館から借りてきたけど、羽虫が挟まりまくってた・・・、だれだよあんなに意図的に挟んでる奴。公共物なんだから綺麗に使うべし。

参考リンク

世界は密室でできている。
舞城 王太郎
講談社 (2002/04)
売り上げランキング: 74,624

世界は密室でできている。
舞城 王太郎
講談社 (2005/04)
売り上げランキング: 4,950