小野不由美 黄昏の岸 暁の天 十二国記

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あらすじ

陽子が慶に登極してから二年。十二国が動く中、ただ一国緩慢な死を座して待っている国があった。東北に位置する戴国だ。
元々各国は一致団結するという手を打たない。太綱で定められたうちに他国を武力もって侵攻してはならない旨示されているため、危険な橋を渡らないのだ。遵帝の故事というものがある。他国の民を救う目的で来た兵であっても、王は覿面の罰を受ける。あっという間になんでもなかった王と麒麟は死に失せた。それほどの大罪だという。
今、その大罪をあえて犯させようとする者が居る。戴国の州将軍、李斎である。泰麒と縁深い彼女は慶国に半死半生の体で王宮にまろびころびつ着いた。乗ってきた騎獣も同じく深く傷ついている。彼女は右腕は壊死して黒く腐り、息には喘鳴が混じる。息も絶え絶えなのに慶国王を求めていた。彼女を動かしているのはただ一念、慶国に戴国を巣くって貰おうという願いだけだった。例えそれが救う側の国が滅びようともだ。
一方話は六年前に戻る。戴国の地で泰麒の蒿里は朝廷の役人達からはお客扱いされていた。みな、悪い話は蒿里の前ではせず、いい話をしていた。当然蒿里にもおかしいとは思っていた。そんな中で反乱が起こり、泰王は王宮を留守にする。麒麟には当然血が障るから付いてはいけない。不安で寂しかったが、彼に一人だけよくする人間が居た。彼は他の皆が隠す情報を包み隠さず蒿里に教えていた。そんな彼から泰王が危ないという話を聞いた蒿里は使令を王の元に送ったのだが、これが罠だった。そのものはやにわに泰麒の角を凶器で抉った。感情のたがが外れた蒿里は本能的に呼んでしまった蝕で再び蓬莱に戻っていったのだった。丁度そのころ、戦っていたはずの泰王も戦場から忽然と消えたのだそうだ。以来、戴国は逆賊の偽王が取り仕切っている。
六年という月日を超え、再び戴国は安寧を取り戻すことが出来るのであろうか?

感想

長編としては、これは現在出ている本の最後ですな。もう一冊有りますが、あれは短編集ですし。
ストーリーとしては今まで小出しにしてきた伏線の総まとめって所でしょうか。若干紙面に収まっていない消えた泰王の行方が続刊の内容になるのでしょうね。いやはや、もはや4年以上新作が出ていない長考状態ですから妄想するより他有りません。アニメも原作の新作待ちだそうですし・・・。
不満点としては蒿里をずるずる生き残らせたことですかね。これと表裏一体になってるという『魔性の子』は遙か昔に読んだのですがもはや忘れました。どんな内容だったのかも定かじゃない。そもそもこの本だって、出てるのを知らなかったぐらいですから、相当放置かましてたわけですな。『図南の翼』までは読んでたんですがね。
本書の一つのテーマは「天が民草を弑するのか否や」と云ったところでしょうかね。法として一つの法則となっているものの、神は存在する世界ですから、何者かによって授けられた物理法則で世界は動いているという実感を与える話でもあります。不条理に弑されると言うことに憤懣をぶつけている李斎ですが、まぁ、どこの世界にも似たような話はありますな。芳国では超法家主義を取ったあげく滅んでます。中国でも似たような例がありましたな。柔軟性を欠いた法はその発案者すら殺します。軛はほどほどにってことですかね。
もう一つのテーマ、世界の一元化ですが、ここまで安易に進ませて佳いのかなぁとちょっと不安。安易な展開が多いんですよね、小野不由美。毒が少なすぎるわけですよ。もうひと味、新鮮さのあるレモンのような酸っぱいアクセントが欲しいところです。東洋風ファンタジーと銘打たれるのは佳いですが、まんま中国王朝を模し、創世神話を持ってきて作り上げた世界観に重層的な記録を記すならば田中芳樹みたいに放置かまさないで、戻ってきてくださいな。つーかまた、これですよw
この本は途上で切られた巻物の如く、中途半端きわまりないわけです。書くの辞めるんだったら、少なくとも決着付けてからにしてください。
もう、それにつきちゃうわけです。
いじょ、70点。

参考リンク

黄昏の岸 暁の天―十二国記
小野 不由美
講談社 (2001/04)
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