小野不由美 図南の翼 十二国記

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あらすじ

恭国という国がある。二十七年にもわたって国に王が居ないという空白の時が過ぎていた。仮朝がそこまで酷くなかったので、民草はそこまでの疲弊はしていなかったが、流石に二十年を超える空白は国力を低下させるに足だけのものだった。民衆は生活に困る物が増え、食べ物を得るのもおぼつかなくなり始めていた。
珠晶は恭国の豪商の娘だ。彼女は生まれて十二年、つまり、王が居ないのが当たり前の生活をしてきた。押しが強く、癇が強い子供だったが、それもこれも豪商の娘だったという背景が彼女を形作ったのだろう。彼女は自由奔放であった。だが、同時に深く物を考えるという特異性も持ち合わせていた。
ある日庠学の学頭の老師が妖魔に殺された。珠晶は親のひいたレールの上に乗るのが嫌だったので、勉強をして官吏になりたかった。しかし、老師が殺されたことによって彼女はその道を諦めなければならなかった、庠学が閉められたのだ。彼女の父は珠晶に家でも勉強が出来るというが、父の云う勉強とは行儀見習いと商売のことだけ、彼女が目指している物とは多く離れていたのだ。
彼女は考えた。親が豪商であるということは人から言わせるとうらやむべき事なのだろうと。しかし、この国の生活の困窮はすべて一つに帰結する。つまり王が居ないと云うことだ。王が居れば国に妖魔が跋扈すると云うこともなくなり、庠学の老師も死ぬこともなかっただろう。何より何故国の者は蓬山に登頂しないのだろう?とも思う。兎に角王が見つかればいいのだから、皆いくべきなんだ。
重い腰を上げようともしない自分の父親にも軽く軽蔑を感じ、珠晶は自分のすべきことを短絡的に悟る。自分が王になればいいのだと。
斯くして珠晶は家人に黙って騎獣の白兎を持ち出し、黄海に向かうのだった。

感想

直情径行少女の冒険譚ですな。また道徳を説いて、経験を積んで、成功する話なのでマンネリと言えばマンネリ。ただ、ひたすらに貶められる話ではなく、かんしゃく玉みたいな主人公を追う形で話は作られてるので感情移入はしやすいかと。怒の感情をむき出しにした主人公は比較的好みですが、無理を言えば道理が引っ込むのを期待しすぎな点で稚気を感じ、ちょっと冷めました。ジュブナイル臭いんですな。ま、それだけじゃないんですがね。どうしてもこの人の筆からなる著作に漂う空気感、粘着質な気配に馴染めないんですよねぇ。もっと乾いてれば読んでて楽しいんだろうけど、女性の筆特有のジメジメした感じが苦手。とは云え、世界観は嫌いじゃないんですわ。なので続編が出れば買うし読むんだけど・・・。
でも一巻ごとに補強される世界の理は読む上では殆ど無意味ですなぁ。読みやすいとはいえ、ちょっと物足りない。何故続巻がでないのか不思議。ま、今回も例によって外伝なわけですよ。読み返しなのでどうしても感慨は少ないですなぁ。
ま、一つ謎が解けたと云えば、『東の海神 西の滄海』に出てきた更夜の身の振り方ですな。更夜は黄海に身を投じてどうなったのか?という答えの本でもあります。『東の海神 西の滄海』との話から410年後の話と言うことになってますね。陽子が王に就くまで90年も昔の話と云うことです。400余年間も黄海でふらふらしてたと思われる更夜は地仙を解かれて居たのかどうか不明ですが、黄海では天仙を名乗っています。ま、兎に角元気でやってればいいやって感じですかね。
つか、作者続編書く気ありませんな。ちょっとアマゾンで見たところ、2002年の6月以来小野不由美としての新刊は出ていないようです。・・・ん?もしかしたら覆面作家としてどっかで書いている可能性がありますな。もしくは主婦業に専念しているか・・・。そっちだと辛いけど。
もうそろそろ書かないかなぁ・・・。
65点。
点については好みの問題かなぁ。

参考リンク

図南の翼 十二国記 講談社文庫
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5 一途な気持ち
5 苛酷なサバイバルの旅。冒険の基本
5 面白い・・・。

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