小野不由美 風の万里 黎明の空

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あらすじ

三人の女を取り巻く。
一人目は中島陽子。
慶の王になった陽子。しかし、彼女は王ではあるが、胎果であるため常世の一般常識がない。故に配下からは常にお客様扱いされていた。そりゃあそうだろう、前帝の官僚の勢力争いに唯々諾々と従うしかほかない彼女に国を改革する力があるかを疑問視されても仕方がない。それに慶の国では女帝は長く続かないというジンクスがあった。陽子はそんな状況を何とかしようと遊学させてくれるよう台輔に願い出る。渋っていた台輔だったが、主上の言葉は絶対だ。斯くして陽子は一般市民に紛れて常世の常識を習うのだった。
二人目は大木鈴。明治大正期*1年季奉公に売られるはずが蝕によって海客になり常世の世界についた。以来言葉の壁に苦しみ、何とか天仙梨耀の小間使いをすることによって仙人に引き上げて貰って言葉は何とかなった。だが、心に刻まれた孤独感は埋めようもなかった。日々を汲々とし生き、梨耀のいびりについに耐えきれなくなって脱走を図る。采王黄姑に助けを求めるが、断られ大木鈴の希望の星である慶国の王陽子を訪ねる旅に出る。
三人目は祥瓊。芳国の公主であった祥瓊は父王峯王仲韃が恵候月渓に討たれた時に仙籍を外され、以来三年市井で生きるが公主であったことがばれ恭国に送られるが脱走。以来何も持たざる陽子が王になったと言うことに嫉妬し、陽子を殺すために慶国へ向かう。
三者三様織りなす物語は一つの場所へと収束する。

感想

なんか気の抜けたコーラみたいな話でした。小野不由美の悪いところが出ちゃったような感じもします。一言で言えばこの話は『プライドを捨てる』という事に尽きるのです。もうそんなものは捨ててきた陽子に対して捨て切れていない鈴と祥瓊。十二国第一作目でもう流れ的に一度読んでる内容を再び繰り返されて、しかも1冊の話に二度に渡って書かれるというのは正直苦痛で退屈。しかも短絡的な邂逅によるわだかまり緩解には筋書きが見えない様はどこにもないわけです。中身にどれだけ理不尽を詰め込もうとも最後には大団円しか無い状況は登場人物把握だけしてしまえば、終章を読めば十分な気もします。そう、小野不由美の悪いところは、冗長でしつこくねちっこく同じ内容を繰り返すってことです。しかも今回は啓蒙書の様な内容が3割以上占めていると云って佳いでしょうな。登場人物の憤懣にそれはおまえが恵まれているからだ、と諭す人の多さは不自然きわまりないですわ。どんだけおせっかいな人間の多いことか。スルーを覚えない輩が多く、しかも自制を求めるなんて鬱陶しいこと夥しい。おまいらは愚痴を聞いて絡んでくる人間すべてに道を説くつもりなのか・・・。聖職者じゃ有るまいし、聖人君子ぶるのは不自然ですよ。いい人であろうというなんか底の浅さが見えた気もします。自己で悟ると言うことを第一作でやってるからこっちでは人に諭されるってのをやりたかったのかもしれませんが、もっと大胆に劇的にやるべきですよ、ええ。誰も叱らないですから。
最終的には陽子の仲間を増やす話と云うことで一段落付くわけですが、その前の見栄の切り方が下手なのは残念。下手とは感じない人が多いと思うけど、作品で一番引き立つコアな部分なのだからもっと時代がかっても佳いと思う。もっと派手にやるべきだったんじゃないかな。
相変わらずストーリーのテンポはあんまりよくなかった。やっぱりあんまり人には勧められないなぁ、小野不由美は。十二国記NHKのアニメに任せた方がよさそう。50点。

蛇足:アニメ版の脚本会川昇が書いてたりしてたみたいですな。会川さんというと鋼の錬金術師のシリーズ構成もしてたような。孔雀王のノベライズとかしてたのが懐かしいなぁ。

参考リンク

風の万里 黎明の空〈上〉十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート
小野 不由美 山田 章博
講談社 (1994/07)
売り上げランキング: 9,223

風の万里 黎明の空〈上〉―十二国記
小野 不由美
講談社 (2000/10)
売り上げランキング: 40,839

風の万里 黎明の空〈下〉―十二国記
小野 不由美
講談社 (2000/10)
売り上げランキング: 40,848

*1:詳しくはわからない。百年ほど昔の日本とのことだからおそらく明治だろう