奥田英朗 イン・ザ・プール

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あらすじ

伊良部総合病院の地下にある神経科には変な医者が居る。院長の息子で金持ちでマザコンで注射窃視中毒で行き当たりばったり。こんな奴が医者をやってて佳いのだろうか・・・。
でも不思議と診療された人は快方に向かう。
その男の名は伊良部一郎という。

「内臓が学級崩壊みたいな」心身症

  • 勃ちっ放し ※

「かなしき」陰茎強直症

  • コンパニオン

「鎧を着てる」被害妄想

  • フレンズ

「やめられない止まらない」ケータイ中毒

  • いてもたっても ※

「家が火事になってるか気になってしょうがない」強迫神経症

感想

こんな医者が世の中にいっぱい居たらいいのに・・・という呟きは読書の最中に今まで何回も出てきたんでしょうね。日本だと代表選手はブラック・ジャックでしょうか。ドラマだとマーク・スローン先生(知らない人多そう。『Dr.マーク・スローン』というドラマの主人公です。医者且つ探偵と異色)とか、ドリトル先生(動物の声が人間の声に聞こえるあれです)とか、マーク・グリーン先生とかジョン・カーター先生(こっちは比較的有名。両方『ER』のドクターですな)とかもあり得そうではあります。本来なら医者にかからないで済む体が一番ですが、今の世の中検査ぐらいは定期的にしておくべきですねぇ。
本作の主人公は各話の患者さんですが、話をまとめるのは精神科医の伊良部一郎。彼は年代・性別毎にそれぞれ別の印象で語られています。勿論変わらない点もありますよ。色白くて小太り、注射をしたがる点などは変わりようがないので同じように語られていますが、特質すべきはやはり異常性って所でしょうか。
奇人であり、変人ではありますが、有能という点には疑いの余地はありません。誰ですか!「こんな医者すぐに廃業だ」なんて云うのは。「フィクションだ」なんて大人げないことを云うのは辞めて下さい。こんな医者が居ても佳いじゃないですか。いや、現実にワラワラ居たらやっぱり嫌ですが。
内容に関してはノリよし、ネタよし、キャラよしの典型的エンタメですわ。テンポと言葉の選び方も非常によかったです。軽いんだけどそれが嫌みにならない。人によってはこの軽さが嫌だと思うけど、突拍子もない内容に笑わない人は居ないでしょうなぁ。
短編の中では「勃ちっ放し」ではほろ苦さを感じ、「フレンズ」では荒涼とした現代社会のオアシスを見、「いてもたっても」では杞憂という言葉を思い起こしました。
連作短編でもこれだけ上手くまとまってると次を期待したくなりますねぇ。続編は無いと思うけど、この人の本は後を追いかけたくなる後のひき方ですな。ニヤニヤしながら上手すぎると罵りたくなるほど絶妙。やっぱり経歴は伊達じゃない。プランナー>コピーライター>構成作家の後作家に転向なんてコメディー書くにはうってつけじゃないですか。妬むことがアホらしくなるほどです。ほかの本も読んでみようと思います。出来るだけ早く
85点。
蛇足:
どうやら※付けておいた奴が映画化の時に使われた内容のようです。首都圏は既に上映終了してるらしいですね。仕方がない、DVD出るの待ちます。松尾スズキの怪演を楽しみにしておきます。
調べてみたら秋田書店から漫画も出てるんですね。一応チェック。

参考リンク

イン・ザ・プール
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