山本周五郎 雨あがる―山本周五郎短篇傑作選

あらすじ

  • 日日平安

食い詰め浪人活躍譚

  • つゆのひぬま

岡女郎の情け

  • なんの花か薫る

岡女郎の悲恋

  • 雨あがる

映画になったアレ
腕は立つが性根がやさしすぎる浪人侍とそれを支える妻の物語

感想

どうやら、このハードカバーの本は絶版のようですね。ま、山本周五郎の場合は全集だって出てるだろうし、探せばあらすじに書いた短編を収録している本もある事でしょう。
巻末に周五郎と黒澤明の映画作についてそれぞれかかれてるわけですが、全く関係なさげな本書。でも結局のところ自分の無知をさらけ出すだけでしたわ。よく読むと

  • 日日平安

1962年に「椿三十郎」で映画化

  • なんの花か薫る
  • つゆのひぬま

「海は見ていた」の原作で黒澤の遺稿脚本、熊井啓監督によって映画化

とまぁ、きちんと手順踏まれてたんですな。
表題作が映画化したのは知られている事ですが、「海は見ていた」と「椿三十郎」の下敷きだったとは露ほど知らずっていうのはこういう事をいうんでしょうか。
一応他にも原作周五郎と監督黒澤の映画は

  • 赤ひげ

原作「赤ひげ診療譚

原作「季節のない街」

原作「町奉行日記」

となっています。しかしまぁ、全部どこかで聞いた事のある映画だっていうのはえらい事ですな。原作の方を知らない人が多いっていうはちと問題な気もしますが。
映画化される作品はほぼ短編って言うのはちょっと変な感じですが、別に周五郎は中篇長編が下手なわけじゃないんです。単に短編の方がアイデアとして面白く、時間のしゃくの問題で映画に使えないだけで拙い訳じゃないんです。でも短編の方がすっきりとして纏まっているのも確かなんですよね。
一言で言うならば、行間の情感を読ませるのが巧い作家です。独り言をつぶやく辺りはちょっと古臭すぎる感がありますが、時代物って事で胸に収めておいてください。
個人的にはちょっと薄味な周五郎がもっとこってりした人情物書いていればなぁと惜しい限り。この本のラインナップは悪くないんだけど、赤ひげ単品に負けちゃうよなぁ。80点

蛇足:

  • 苛斂誅求(かれんちゅうきゅう):取立てが厳しい様
  • 陋劣(ろうれつ):下劣な様、激しく劣っている様

参考リンク

雨あがる―山本周五郎短篇傑作選
山本 周五郎
角川書店 (1999/08)ISBN:4048731815
売り上げランキング: 378,151