乙一 夏と花火と私の死体

本作で第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞でデビュー。17歳でこの作品を書けるのはすごいと目下の評。初乙一ですわ。
ちなみに表題作と「優子」という作品の二つを収録。両方短編。

あらすじ

「夏と花火と私の死体」
橘健と橘弥生の兄妹が、弥生が殺した弥生の友達の五月を隠すお話。
「優子」
父親を失って身寄りを無くした清音が、父の友人だった鳥越政義に引き取られるように女中として、鳥越家に住み込みで働くにつれて、政義の部屋にいるという優子という名の政義の妻が実在しているのか?と疑う話。

感想

簡潔という言葉が映える作家ですねぇ。こういう作家が短編を量産してくれるとうれしいですわ。長編びいきだけど短編は短編で趣があって余韻に浸れて好きなんですわ。長編にやけどしてる時に読むと気分転換が出来そうな分量でさらりと読めますな。
ただ、「夏と花火と私の死体」は構成力と文章力は高いものの、出品先がジャンプだったという事で子供向けに書かれている節があるので、楽しめたか?という事だとちょっと異論があったりするわけで。小中学生に読ませたい本ですな。小学生視点と言うのはもうちょっときつい歳だし。
まぁ、小野不由美が解説書いてるわけだけど、その中で語られている視点の変さについては同感。狙いを決めてやってるんだろうけど、視点側から語られるのは場所を無視しているし、殺された五月とは少し違うようだし、殺されたというのに感情の起伏が多少あるものの、陰に篭ってないあたりとか神の視点っていうのは当ってるのかもしれんが、そこまで大上段にあげんでもいいんじゃないかとか思ったり。決して侮りとかじゃなくて、そういうスタンスをふっと持ってる天性なんではないかとか思ったりするわけで。
今なんとなく思いついた。これってある種、異型のスタンドバイミーだったりするんじゃないのか?まぁ、共通項は夏と死体と子供という点だけだが。
ストーリー的には起伏が意図的に作られていて、きっちりしている。始めのページのネタもしっかり消化。うまいですな。

個人的には「優子」の方が好きですな。どの年齢と特定せずとも読める話だし、幽玄さとどんでんが予想外。物悲しさが漂ってるのに描写過多でないあたりが非凡なる証ですかねぇ。
両方あわせると75点ぐらいかな。
今回の奴は多分やや白とやや黒なんだろうけど、もっと色の濃い奴を読みたいですな。特に黒をw

参考リンク

夏と花火と私の死体
夏と花火と私の死体
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乙一
集英社 (2000/05)ISBN:4087471985
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