福井晴敏 終戦のローレライ

いやー、素早く読むのが惜しくて熟読したために時間かかっちゃいましたな。
2002年12月に発売されたこの福井さんの本は現在映画化、漫画化されているという事で読もう読もうと思いながら、未読だったわけです。
で漸く読了。

あらすじ

ドイツの無条件降伏が成され、いよいよ日本が追い詰められた第二次大戦終末直前。ドイツから一杯の潜水艦が日本に向かっていた。「ローレライ」「ゼーガイースト(海の幽霊)」とあだ名される潜水艦UF4は、ドイツのとっておきの秘密兵器を艦載して日本近海まで来たが、「しつこいアメリカ人」と揶揄される潜水艦との攻防でやむを得ずその秘密兵器を海中に沈める決断をする。枢軸国に秘密兵器を託す事が目的であったものの、その重たい図体が艦の性能を著しく落としているという如何ともし難い事実と共に生死に換えられないという根源の欲求から生まれたものだった。艦内はその時ただ一人の造反者を出す。SS(ナチ親衛隊)の黒衣の制服に身を包んだ男。フリッツ・S・エブナー少尉、秘密兵器の管理者だった。日本人のクウォーターであるが、隔世遺伝か殆ど外見は黄色人種のそれを受け継いだ男は普段使う事のなかった日本語で取り押さえられながら絶叫する。
「必ず迎えにくる!それまで諦めるな・・・・・・!」

折笠征人は朋友の清永喜久雄と不可思議な命令に導かれ一杯の潜水艦に乗る事になる。工兵である彼に乗船業務とは奇異なものだが、命令は命令、乗り込むのだった。
それは彼の青春の一ページに過ぎない。しかし、一人の青年になりきれていない少年には重過ぎる一ページなのだった。

感想

なんか福井さんのHPによると文庫化されたそうだけど、わたしゃハードカバーの重厚さとこの装丁が非常に気にいってるので文庫の方はスルーな感じ。
とまぁそんな事はさておいて、感想感想。
潜水艦物です、潜水艦物。映画では観客のジンクスに「潜水艦物にハズレなし」と言わしめるほど、緊張と弛緩を繰り返す山あり谷ありのストーリーは一軒の価値のある作品が多いものです。小説とはいえ、ジンクスは当ったと思いますわ。今、ナディアを一瞬思い浮かべたのは秘密ですw
エンターテイメント作で、完全映画化はしゃくの問題で無理な感が強い。映画のほうは見ていないからあれだけど、どうやらフリッツ少尉とかドイツの描写が丸々カットされてるらしいしね。全エピソードやる気で撮ったらどれだけ時間かかるんだろ。6時間ぐらいかかりそう。
内容は濃く、説明も多いが気にならないレベル。テンポがいいからね。まぁ、ちょっとくどく感じる部分もあるけど、そこに作者の思いが込められてると思えば気にする方が悪いんだろう。(ぇ
キャラクターが各々生き生きとしているが為に、人数が多いけれどもこんがらがる事はないでしょうね。
しかしまぁ、重厚な事重厚な事。上巻だけでも十分一冊の本として楽しめる出来ですよ。海外SFなんかではこのローレライの上巻だけぐらいの内容を平気で出して終了とかそういう作品が多いので、上巻だけでもある意味十分なくらいです。盛り上がりの場面は最大レベルのところが3箇所も用意されているので飽きさせる事も無いし、小規模に盛り上がる部分は寄せて返す波のように沢山あるので、自分の気にいった場面を探すといいでしょうね。私が気にいった場面は下巻のP.526のフリッツ少尉の青空を見つめるという部分でしょうか。漫画化される折にはぜひともこの部分はカラーで行ってもらいたい!というか、白黒だったら怒るよ?!もうこれは講談社に直訴というレベルの情動ですよ。まぁ・・・連載がどのレベルで行われるかという事は描いてる人次第だが。少なく見積もって3年の連載にはなりそうですな。頼むからカット部分は減らして欲しい。既にアフタヌーンでの連載を読んでるからわかるんだけど、上巻の第一章の冒頭部分から描写がかなり削られてる。ある意味検閲的な自己規制なきもするけどね。それにこれ完全漫画化するとしたら5年はかかるよ。それでもそれを補って余りある出来のものになると確信できるからこそ、極力削らないで欲しい。原作堅持をこれほど思ってやまない作品も無いと思う。
しかしまぁ、終章読んで原題もなるほどと思ったわ。怨嗟の念だけではなく希望の種、生命の賛歌のところで終わらせるあたり、相変わらずペシミストじゃなくてオプティミストなんだなぁとニヤニヤしちゃいましたよ。身につまされる人も多いとは思いますけどね。まぁ、読んで損するたぐいの本じゃないです。得は確実にするでしょうな。エンターテイメント系が嫌いなら薦めないけど、右左関係ないミリタリー系青春物として楽しめたのは僥倖ってところでしょうかね。95点!

蛇足として劇中歌としてなんども歌われた「椰子の実」の歌のリンクをば。
http://www.hi-ho.ne.jp/momose/mu_title/yashino_mi.htm
こんな曲だったんですな。旋律が実に謡い易いように作られてるし戦前歌謡曲そのものって感じですわ。

参考リンク

終戦のローレライ 上
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終戦のローレライ 下
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ローレライ
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