村上春樹 アンダーグラウンド

内容説明

この本はオウムの地下鉄サリン事件に特化されたドキュメンタリー。被害者の数百人に対しコンタクトを取り、その中で話を聞けた中から掲載許可を取り付けた人の70人弱を載せた本。

感想

全集のラストの部分の全集収録時に新たに加筆されたあとがきで本人が読者とのめーるのやり取りが載っている。(以下概略)
読者曰く「あなたが書く必要はなかったんじゃないですか?むしろあなたが書く事によって小説のタネをこの事件から得る事が目的のように思われる事になってマイナスなのでは?」
といった事に対し
筆者曰く「確かに私が書く必要はなかったかもしれない。でもこれは必然なのかもしれない。海外で最近まで暮らしていた事から私は日本という土壌の人たちとのコミュニケーションが足らなかった。この本で私はその部分を補完したといえるし、この事件をリアルに感じられる。しかし、誰かがやらなければ風化していってしまい、マスコミの作り出すペルソナの影にこの事件が覆われてしまう。私はそれを阻止したかった」
(概略&思い出しながらだからかなり中途半端なはず。下手すると違う方向に書いてるかも・・・)

まぁ、読んで思ったのは、この本は今読んだとしても何の意味もない本で有る事。事件性から言えばもう既に風化している話だし、微妙にまだ新しすぎる。再評価は50年後なり30年後ぐらいじゃないのかな。
まぁ、ドキュメンタリー的な書き方としては異例な数の証言の収集はある種の執念を感じる。通常ドキュメンタリー的な事柄は当事者は多くても5人程度が殆どだと思う。これ以上になるとどれだけの人数とどれだけの時間を投入すればいいかと言う事を考えると、不可能ごとに近いし、効率も悪い。
しかしこの本の特徴は数多くの事件当事者の顔が見えるという形にこだわっている。マスコミはレッテルでもって被害者が被害者というものであってそれ以上のものとしてみなしていない。つまり被害者の人格が全くか今見えてこないわけだ。それぞれの事情でサリンの撒かれた列車に乗り合わせたり駅に居合わせたり、その朝はどうだったとか、どんな人物だとかそういう情報は不純物らしい。
この本はその不純物とみなされた部分に日を当てるという作業を延々とやっている。ある種絶え間ない作業だとはおもうが、全体としての有益な情報は現状でもって見たところほぼない。
サリン有機リン系の農薬の濃縮されたものだと考え、有機リン系の農薬の中毒作用と酷似しているため、治療にはアトロピン・PAMが有効とか、症状は縮瞳・めまい、吐き気、呼吸麻痺、頭痛、痙攣、コリンエステラーゼ値の減少あたりで、後遺症は大抵残り、視力の減退、短期記憶の障害、長期記憶の欠損、麻痺、頭痛。この辺りがこの本を読んで得られた情報だが、あの無駄に多いページ数からすれば、纏めておけばわずか数ページで得られる情報だ。
この本で満足できるのは、

  1. 村上春樹の極度のファン
  2. 事件当事者と関係者
  3. サリンの状況を今調べてる人
  4. 極度のドキュメンタリー好き
  5. オウマー*1

ぐらいかと。
つーかAmazonの評価が馬鹿みたいに高くて信じられん。まぁ、小説同様に読むのは馬鹿なんだろうが・・・。
点数つけるとしたら40点って所か。資料的価値は高いが、読み物としては0点。一人一人掘り下げるのは不可能だから多人数に当りまくりという形を取って、広く浅くしすぎ。
この本読むぐらいなら、他の本読んだ方がまし。時間の無駄。

参考リンク

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*1:オウムをヲチするのが趣味な人