田中宏 莫逆家族 (1)〜(11)

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莫逆家族 11 (11)
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田中 宏
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莫逆家族 1 (1)
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田中 宏
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所謂不良・ヤンキー漫画というジャンルはそれなりにファンが居るようで、時代に合わせる形で変容しながら継承されてきました。
ただ、このタイプの漫画の場合ほぼ必ず含む物として格闘要素、そしてバイクによる暴走行為のこの二つがあります。また、ほとんどの場合は登場人物が中学生から高校生という所に限られるわけで一種の通過儀礼的な学校を舞台にするのがほとんどです。ここから一歩踏み出してしまうとアウトローな本業さんの世界に突入してしまうため極力出さないようにしている状況になっているかと思います。出したとしても登場人物達は下手な本業さんよりも強く、偉大で手が出せない、そんな一種の神格化に近い行為がされていたりします。でも実態は違うでしょう。ほとんどはそういう世界から抜けて社会人として生活するのがごく普通です。どっぷりと漬かり込んでしまっているケースのみ本業さんへの道を歩んでいくのではないでしょうか。
で、本書ですがあくまで普通の社会人になっている元暴走族のメンバー達が一つの家族を形成するという話です。今までは学生時代の話がほとんどで、それ以降の話は語られませんでした。唯一の例外は恐らく藤沢とおるの『GTO』でしょう。きちんと過去を作品としてその続編とした物はこれぐらいの物ではないでしょうか。元祖的存在のきうちかずひろの『BE-BOP-HIGH SCHOOL』はダラダラダラダラ延命措置されていますが一向に終わる気配が見えません*1。一線を越えてしまったら本職の話になってしまうのでまたちょっと話が違うのですが、本作はあくまで暴走族物の延長線上に生まれました。
さながらその姿はイタリアマフィアの昔の姿のようです。マフィアというのは現在は犯罪組織という部分がクローズアップされがちですが、一種の自衛的な友愛組織、つまりは拡大解釈された家族制を骨子としています。マフィアについてはほとんど想像に頼っているので確かなことは言えませんが、参考程度にはしたんではないでしょうか。故にヤクザという犯罪性前面に出てくる存在をメインのキャラクターとして出さずに家族という部分に重きを置いています。家族の一員がやられたらきっちりとやり返す。まぁ、悪逆だと云われようがこれは自衛のための戦いなのだと読み手をある程度は納得させることが出来ますね。問題はストーリーを進行させる上で平穏は枷になるというところでしょうか。幸い作者は『BAD BOYS』で初期はギャグを基調として書いていたという背景があるためそれほど苦にはならず下品なギャグとシリアスというメリハリを利かせることでより作品を引き立てています。それに過去という伏線をいくらでも張れるようになっているのでストーリーにはあまり苦労はしなかったでしょうね。
男性向けな感じですが、従来の暴走、格闘漫画一辺倒のヤンキー漫画に一石を投じたのは素晴らしいですわ*2。ただラストはあそこで良かったのかなぁ、という疑問はちょっとある。もうちょっと続いて欲しかった。特に後日談だけでもう一巻分欲しかったかなぁ。
有終の美ということではこれぐらいが丁度良いのかもしれない。

*1:現在休載中

*2:グレアーは読んでないので解らないんだけど、もしかしたらそっちでやってたりする?