華氏911
華氏 911 コレクターズ・エディションposted with amazlet on 06.03.11
やっぱりこんなだろうなぁと思わせるようなプロパガンダ映画。いつものマイケル・ムーア節とも云える軽妙なBGMはなくてシリアスに描いているような形だけれど内容はないかなぁ。何故かあれだけ強調されてきた"ネオコン"やイスラエルに関する言葉はここには一切ない。あれ？民主党に鞍替えしたから（あるいは撮影当時状況が揺れていた）民主党に不利なことは一切言わないってか？
まぁ、ブッシュが馬鹿でアラブマネーと一族結託していることは結構有名な話だしいいんじゃねぇの。ただ、この映画の序盤からすればある意味で「イラクを狙わずサウジを狙え！」と言っているようにも感じる。「不正はゆるさんぞ！」ともね。金持ち同士のコネが物を言うアメリカでは未だにガラスの天井が幅を利かせているのは純然たる事実ですよ。何故有色人種の大統領が現れないのか？何でそんなことが解らないんですかね。なにもそんな目新しいことは何一つ私は言ってませんよ。
でも映像と音声のコラージュを延々続けて明らかに印象操作していることは否めないわな。しかしまぁこれ真に受けるやつ多いんだろうなぁ。
「アメリカのマスコミには正義と公正な報道がある！」
なんてまじめな顔して褒め称えそうな気がするが、じゃあなんでABCもFOXもそしてNBCとCBS*1も大統領選挙戦の時に中道を取らずに公正な報道をしなかった？明らかにプロパガンダを垂れ流して視聴者をうんざりさせてたよなぁ。この映画が放映できたのだって、あくまで民主党側の共和党バッシング、ブッシュのネガティブキャンペーンの種となったからに過ぎない。確かに極一部では良質なドキュメンタリーなんかも生まれている*2けれど、マスコミなんて世界中どこを捜したって似たり寄ったりだよ。でかいニュースは報道したがるし、でなければ捏造も厭わない。イラク戦争にだって衛星通信で戦争を生中継とか言ったりして同行した記者もいたけど、これは湾岸戦争みたいに定点カメラで望遠したり実際の被害がクリアに見えないからこそ認められたわけで、ビットレートの低い動画を放送してしまっても特に凄惨さは感じられないんですよ。言うなれば、へったくそな3DモデリングのFPSでリアリティが全然ないのに近い。
ま、所詮他人事です。だってこんなに行動的な軍の派遣なんて日本には出来ないじゃないですか。右に倣えでなんとか人道支援の名の下にやれているわけで。なんでもかんでも「戦争反対」で何とかなる世の中じゃないですよ。
例えば劇中に出てきたイラクに派遣された息子が死んだ家族は軍に入れなければ良かったわけです。社会格差を云々するんだったらそれに見合うだけの対価として勉強をしっかりやるべきだったんですよ。それもやらずにただ、就職先として大学にも行けるからという理由で軍を選んで幻滅したから辞めるというわけにはいかないし、それだけのリスクがあるからこそ色々優遇されるわけです。なお、ブッシュ政権の帰還兵に対する様々な財政削減策は別にブッシュ政権の時だけではなく、民主党政権下であったクリントン大統領時代にもあったかと。なんかほんとにプロパガンダの固まりだなぁと思う次第。
結局息子を失った母親のお涙頂戴で映画は終焉を迎える。てか、米軍の死傷率なんて相当低いと思うんだが・・・。未だに損耗率は1%以下だろうにこの騒ぎだからねぇ・・・こんなの戦争の範疇に入らんわ。問題はむしろ開戦の理由が間違いであったこと、そしてアメリカ軍が社会を破壊していることだろうね。社会基盤がぐらついている状態では国家を牛耳ろうとする勢力が出てくるから質が悪い。しかも彼らの大義名分は自分たちの民族・国民の為の占領軍に依らない国の運営というわけで一見最もらしく聞こえるが、自分たちに邪魔な連中は殺しているだけに過ぎない。イラク戦争でも武装勢力が300人以上の医師や技術者を殺していることがわかり始めている。知識階級の人間は邪魔だということだね。こういう連中はポル・ポトとなんらかわらんわ。中東は未だ椅子取りゲームしかしてないんだわ。部族政治が物を言い、民主主義なんて屁でもない。オイルマネーで設けているし、一枚岩でいる必要性がゼロだもの。民主化には教育が必要なんだよ。その基盤をイラクでフセインは作っていた。識字率だって9割越してたらしいよ。でも今では5割切ってるそうな。ま、アメリカ人の認識がおかしいってのが正しいわ。アメリカで軍人が死んで可哀想じゃなくて、侵略してごめんなさいなわけですよ。戦争反対じゃないんですよ、謝罪と賠償ですよｗ。アメリカという国は悪いかもしれないけど、国民である我々は別に悪くない、というのは通らないでしょうねぇ。
ま、日本の場合はまず海外派遣云々以前に九条改正して、専守防衛が出来るようにしないと現状問題外なわけです。前線任務に就く自衛官は先制攻撃をするつもりのようですが、それをやってしまえば現状殺人罪ですからねぇ。やむを得ないとは言え、防衛の為に殺人で刑に付かなければならないなんてこの国はおかしすぎますよ。ちなみにえらいどうでも佳いことですが、ネオコンが取りざたされているのに、日本では同様の企業があってもなんでスルーなんですかね。一体なんででしょう？NECとか富士通とか三菱重工とかもろ軍事に直結しているような企業が結構あるんですけど。兵器そのものじゃなくてそれぞれの部品を作ってるだけですが、結局は兵器の一部であることは紛れもない事実だというのに。まったく日本は不思議な国です。
ちなみにブッシュを云々してますが、アメリカは大統領が変わっても国内的にはそれほど変化がないです。じゃあ一体何がしたいんだろうってのが正直な印象。民主党政権になって社会福祉が徹底するか？断じてＮＯ！だろう。頑張ってはいるが、日本の年金問題並みに向こうも社会福祉が問題化している。故に緊縮財政にしようとするか配給はするけれど、満額ではないという減額が行われるに決まっている。要するに都市部と農村部のどちらが優遇を受けるのか、それに尽きるんじゃないかな。
ちなみに日本にとっては民主党は親中派、そして反日派が蠢いているので共和党より政治的なパートナーシップは取れないでしょうねぇ。少なくとも平和を望むのならば日本であれば自衛をすることを憲法に盛り込む必要があるのは国として当然なので、米軍基地問題も含めて国としての自立を考えたら、日本は米国の軒先の核の傘から出ても大丈夫なだけの核武装が必要ですな。平和であるからこその核なわけで、米ロ中印パの様に脅迫的手段としてのみ増産するのとは訳が違うということを念頭とすれば問題はないかと。というより核兵器は撃ったら負け確定だしねぇ。
最後にシメとして引用をば「人はこれほどに無知だとは思わなかった」と息子を亡くした母親が言っています。それに対する言葉はこれしかない。
「悲しいけどこれって戦争なのよね」死人が出るのは当たり前。
蛇足：議員に息子をイラクへ送らないか？と問いかけるムーアだけど、どうせ議員の息子達なんて高学歴だろ。行っても士官クラスなんだから汚れ仕事なんてしないだろうし、むしろ息子達の意思があるんだから本人に言うべきだっていう、当たり前な視点を省いた悪意たっぷりなあの部分は入れる必要はなかったように思う。あんたの息子が死んだら悲しいだろう？なんてことは誰が言わなくたって解りきってんだからさ。
