森山赳志 黙過の代償

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あらすじ

韓国へテコンドーの武者修行のために大学を休学する秋月昌平は既に亡い両親と祖父母へ一年の別れを告げに彼らの眠る墓地へと向かった。そこで死に瀕した韓国人と思われる男性から意思を託される事となる。
「・・・ダイトウリョウに渡して欲しい」
警察に告げるなと言った男性はその後果てるのだが、託された血塗られた名刺と鍵のような物が昌平の手元に残った。昌平は自分のことを死に神のように認識していた。関わる者がどんどんと死んでいく状況に耐えられはしなかった。結局、国を起つ予定を取りやめてまずは名刺に記された≪虎嘯会 蔡翼傑≫なる人物をあたることにした。
昌平は虎嘯会系列のバーを訪れ、蔡翼傑への来訪を相手方に伝えて排除しようとする黒服などを自慢のテコンドーで撃退、ようやく会うことが出来た。そこでもやはり事情は知らされず、ただとあるマンションに連れて行かれるだけだった。そこで一時的に暮らせという事だった。何らかの危険を感じていた昌平はそれに従って暮らすことにするのだが、蔡翼傑の血の繋がらない妹の娟姫はそれを嫌がった。彼女の祖母は従軍慰安婦で日本人が嫌いなのだ。また、元々彼女の住処でもあった場所に他人が割り込むのが気にくわないのだろう。しかし、金を払っているのは翼傑なのだ。彼女には拒否権はなかった。

一方韓国大統領府のある「青瓦台」では大統領の李泰永が戦々恐々としていた。北朝鮮への太陽政策を転換し、強硬路線へと緩やかに持って行き日米協調路線を打ち出そうというその矢先に喉元に懐刀を突きつけられたのだ。それも大統領の醜聞である。彼はその事実に対する対処を彼の命を救ったこともある人物に託した。しかし、失敗したようだ。大統領であることがこの先も出来るだろうか?という苦悩に彼は陥っていった。その悩みは彼の血の問題だった。

感想

森山赳志初読み。本作は第33回メフィスト賞受賞作でネタが南朝鮮がらみということで南朝鮮でも同時発売という日本では珍しい小説になりました。しかし、作者の認識が甘いのがどうにも気になります。
日本人的価値観で解ったように勘違いさせる悪書ですねこれは。典型的リベラリズムによる好意的な害意の介在しない欺瞞としか思えません。講談社はリベラルな社風で未だに現状認識が甘すぎると思います。例えば週刊少年マガジンに連載されていた『クニミツの政』が分かりやすい形で表しているといって良いかと。これはフィクションの名を借りたプロパガンダとしか私には思えないのですよ。その証拠にほとんど南朝鮮の主張を唯々諾々と述べていますよね。強制連行はなかったと総聯すら認めたご時世にですよ?
囲んだ部分は朝鮮をよく知っている方は読まなくて可。

作中で取り上げられている慰安婦問題は証言者の明らかな偽証がまかり通って、きちんとした理路整然の証拠には実はなり得てないのです。南朝鮮の偽証率は日本との人口差を考えた上に比べると621倍ですよ。嘘を嘘と思わなければ真実になる国のメンタリティを全く無視するとは全く持って感性が違うという部分を無視しているとしか思えません。日本人的価値観で推し量っては駄目なんですよ。
慰安婦をしてきたと主張されている人たちは当時の職業売春者であったことはほぼ間違いなく、キーセンという独自の売春婦養成所のあった朝鮮においてはごくごく当たり前のことです。よく従軍である部分が問題にされますが、単に軍は業者にお墨付きを与えるに過ぎず管理とは全く無縁であったことが一次史料&当時を知る人の証言で明らかになっています。当然職業売春婦であった彼女らは当時としては破格の待遇できちんと給金を得ています。日本兵の月給は15円〜25円の時代に慰安婦の月収は1000〜2000円ですよ?信じられます?ちなみに慰安婦について初めて出たのは吉田清治という人物が書いた『私の戦争犯罪朝鮮人連行−』なる小説が初出です。そこには「『強制』で済州島の人々を連行した」という文があるんですが済州島での実地調査ではそんなことはなかったと簡単に嘘がばれています。その後千田夏光という作家が『従軍慰安婦』なる言葉を造語してあたかも事実であったかのように書き連ねましたが、女子挺身隊との混同もしたためなおさらややこしくなりました。これが南朝鮮に伝わって「定説」となったわけです。全くもって反日を志した日本人の屈折しまくって肥大した謝罪意識は度し難いものです。
ちなみにこの従軍慰安婦を問題にした場合、日本軍が組織的に女性を拉致して働かせていた、という間違った知識があります。実は金が儲かるからと娘を盗んできたり、騙したりすることで売春をさせる朝鮮人がいて、そういう無法がまかり通らないように日本軍はそれを取り締まる為に組織的管理をしたのであり、それがどう間違ったのか日本軍が組織的に従軍慰安婦を作り出していた証拠とされてしまいました。朝鮮人自身が同胞を売り渡したり、甘言(「工場で働かせてあげる」など)にのって間違って連れてこさせる悪徳業者を閉め出すために管理していたわけで、別に「日本軍が組織的に朝鮮人女性を拉致してレイプした」ということではないのです。ここ、よく間違う人が多いので覚えておいてください。朝鮮人が同胞を売って私腹を肥やしていただけなのですよ。何故それで日本人が責められなければならないのか謎でしょ?
それから数十年経過した後にマスコミが馬鹿な考えを吹き込んだおかげで嘘を言ってまで日本から金を得ようとしたのは明確な事実です。金が貰えると聞けば簡単に嘘をつくんですよ、貧しい生活をしている連中はね。インドネシアでも同様のことをある自称人権派の弁護士がやっています。その時にインドネシアでも名乗り出るだけで金が貰えるということでとんでもない騒ぎになりましたが、民族性というかきちんと政治の近代化がはかられていたインドネシアでは、きちんと「1958年の協定で日本との補償問題は終わっている」と政府は対応しました。加えて「この問題での保証をインドネシアは求めたことはない」とも。彼らはこうも言っています。「こんなことをクローズアップするよりもインドネシアの良さを伝えることの方が重要だろう」と。実に至極真っ当で大人の対応でした。これを知ったら日本の自称リベラルな人たちはどう思うんでしょうねぇ。日本の教科書にしてもこんな「わかりきった事実とは異なること」を未だに載せているのは馬鹿馬鹿しいを通り越して狂気の沙汰ですよ。
なお、南朝鮮とは日韓基本条約によって既に補償が終わっています。それ以前に日本が朝鮮半島に残してきたインフラなどを考えると逆に賠償して貰うのが世界の常識なんですけどね。日本を責める論調が出たらこうやっていってやればいいんですよ。フランスは、アメリカは、イギリスは、スペインは、ポルトガルは・・・きちんと植民地に賠償をしたのか?逆に賠償を求めてないか?と。そう、当時の世界常識からすれば植民地は宗主国に賠償を支払うものだったんですよ。例え独立できたとしてもね。
日本が朝鮮や支那の財布になる必要はこれっぽっちもないわけです。
どうでもいいけどこの従軍慰安婦を何故かジェンダーの問題にすり替える連中が多くて困ります。
反日の構造を南朝鮮政府が主導してやっている状況からして日本人を差別しています。元々大戦時には日本であった朝鮮が敗残者となりたくないためだけに日本を否定しているわけです。でも漢江の奇跡だって日本からの巨額の金が成したことだし多少なりとも日本に感謝すべきなんですよ、あの国は。図に乗っているのです。じゃないと国連であらゆる日本が関わる動議で否決にまわったのにかかわらず、今度の議長選で日本に支持を求めるなんて厚顔無恥な真似はできません。

好意的に接すれば向こうも好意的に接してくれるし、時間が経てばやがて友好が結べるだろう、というのは朝鮮をよく知らない人間の幻想です。彼らには『恨(はん)』という概念があります。一応作中に出てきていますがあまりにも甘いです。『恨』はどれだけ時間が経っても恨み続けるということで時間の経過や外的要因に左右されません。彼らの日本人に対する『恨』は何故か「秀吉の侵攻」の頃まで普通に遡るのです。彼らの感覚からすると「日本人が経済的に朝鮮半島より下になって1000年ほど統治されて朝鮮人に延々と土下座するような人間以下にならない限り許さない」というのはごく普通なのです。日本人にとってどれだけ衝撃的であってもこれが事実です。故に彼らには毅然とした態度できちんと間違っていることを教える必要があるのです。つまり圧力ですね。そうでもしないことには自分たちが間違っていることは解っていても「相手が認めてくれるのだから良いのだ」という犬のような言葉の通じない解釈をしてしまうのです。甘やかされた駄々っ子を躾けるように接しなければ理解もおぼつかないことをこの国の政府はいつになったら解るんでしょうかねぇ。
ちなみに南朝鮮の仮想敵国は常に北朝鮮ですが、それ以外にも何故か日本とアメリカが入っていたりします。全く馬鹿な国です。

以上どれだけやっても足りないのでここで終。

生半可な知識で南朝鮮をネタに使うのは止めた方が佳いです。正直ファンタジーにしかなりません。この作品は日本人の常識で推し量った南朝鮮という域を出ていません。正直これでは南朝鮮で大ベストセラーとなった『ムクゲの花が咲きました』と大差ありません。片側だけの観念で大局性が失われています。コリアンウォッチャーは日本には多いのになんでこんな駄作を書いたのか正直不思議でしょうがありませんね。まぁ、多少その元は予測できます。例えば作者自身の出身が福岡であること。福岡は朝鮮半島との交流が深い街です。その分接点があったんでしょう。だから普通の日本人よりも朝鮮のことを知っているという自負が書かせたんでしょうけど、日本人的メンタリティからはついに離れられませんでしたね。
また、これ南朝鮮でも出版されているのに天皇についての言及は正直やり過ぎでしょう。向こう側では日本人なら当然知っているだろう事を知らないだろうし、正直向こうでは削られるんじゃないか?情報不足がすごく明瞭です。付け足しのように書くのだったら初めっから入れなかった方が明らかにいいでしょう。
社会性と娯楽性の同居する小説を書きたくてこの本を書いたようですが、出来すぎな部分が多く、もうちょっときちんと書いた方が良かったんじゃないかと思わざるを得ません。主人公がテコンドー(演舞が主で実用性皆無の疑似空手)をやっていることや、主人公が鍵を託される事に意味づけを行う事、それに無駄な正義感で自分を死地に追いやったり無鉄砲きわまりないのに怪我一つしないのは萎えまくり。こんな清廉潔白甚だしい人物を主人公に据えるなんて作者はどうかしている。機械めいていて気持ち悪いよ。それに自分を死地に追い込もうとした相手にただ「血縁だから」という理由で「会いたい」とか言い出して、まわりに迷惑かけまくっていたり自覚がない時点で馬鹿すぎる。冒険小説としては及第点以下じゃない?これは出版するレベルにないと思う。リアリティがどこにもないね。
30点
メフィスト賞がらみじゃなければ読むこともなかったわ。

参考リンク

黙過の代償
黙過の代償
posted with amazlet on 06.02.21
森山 赳志
講談社 (2005/12)