茅田砂胡 クラッシュ・ブレイズ パンドラの檻

ASIN:4125009228

あらすじ

前回の事件の後、ケリー・クーアは連邦大学惑星で比較的のんびりとしていた。愛機であるダイアナの修復が終わらない限り飛び立つこともできないのだから仕方がない話であったが、特にそれについての感想もなく、暇つぶしに自動二輪車で遊ぶかぐらいの気持ちだったようだ。だが、トラブルメイカーな怪獣夫妻がなんの問題もなく平穏に過ごす・・・それ自体が稀と言うより無理というべき事柄なのも事実なので、厄災は向こうの方から降って湧いてきた。
ケリーに強姦の容疑がかかったのだ。ただ、現在滞在している連邦大学惑星のサンデナン大陸ではなく、南半球に位置するグランピア大陸においてだ。当然ケリーにはそんな心当たりはあるはずもない。無粋を知る男なのだから・・・。
警察から任意での事情聴取を受けるかたわら、ケリーは誰が一体何の目的で自分にそんな有りもしない罠を仕掛けたのか、慎重に調べることにした。
引き出せた情報は、被害者はレイチェル・アストン、アルトラヴェガという巨大製薬会社の社員であるということ。レイチェルは製品開発部の責任者で強姦したとされる偽物の「ケリー」から現在秘密裏に開発を行っている商品に関係しそうな商談を持ちかけ、その話は良い方向にまとまりかけたが、「ケリー」を信用して社外で会食をしたのがいけなかった。「ケリー」はレイチェルに企業秘密を盗ませようとし、拒んだレイチェルに暴力と性的暴行を加えた・・・という事らしかった。
地上にいる間に誰かに恨みを買った憶えは無いし、現在は身軽な一船乗りという身分では製薬会社の秘密などこれっぽっちも必要なはずもない。
しかし、刑事がケリーに提示した「ケリー」の写真は確かにケリー自身と瓜二つ。おまけに丁度いい不在証明(アリバイ)がない。だが、幸いなことに「ケリー」は現場に遺伝子情報を残していったのでケリーは渋々ながら遺伝子情報を提出することになった。検査の結果は白。何もしていないので当然の話だが、これで大手を振って歩けることなり、ケリーは自分を嵌めた奴を捜すことにする。
だが、この問題はもっと根が深い事をケリーは知らなかった。

感想

茅田砂胡五冊目。またクラッシュ・ブレイズの続きです。一応時系列順のまま進行しているんですね。
今回は生き返り組三人にスポットを当てるために書かれた本と言うことなので、リィ・シェラ・ルゥの三人と女王は蚊帳の外です。でも女王は海賊が関わってる事件であるので結構自己主張強めです。大体いつも通り事件が起きてそれをたたきつぶすスタイルには変化はありませんね。言及すべき点としては二分冊にしてもっと内容を書ききれるだけ書きまくった方が良かったのではないか?という所かな。ちょっと最終章まわりが未消化なんですよ。ページ数が少なくなって、「あれ?これできちんと終わるの?」と心配になるぐらいですからどうにもやっつけ仕事に思えちゃうんですよね。〆の部分は確かにこれはこれで何とかなってますけど、もうちょっと労力を注いで最終部分について50ページぐらい足してもいいとも感じられます。海外SFなんかだと尻切れトンボ的に劇的な終わり方*1する物はゴロゴロしているんでそれに比べればましですけど・・・。
ま、ストーリーに関しては「マンネリ」だの「ひねりが無い」だの言われてもしょうがないかもしれない。ほとんど再話に近い話ですからねぇ・・・。『暁の天使たち』のシリーズの内容を生き返り組に変えただけと言っても差し支えないですから。とは言え、気楽にそしてスピーディーに愉しく読書が出来る強さのインフレが明確な冒険小説は人によると思うけど、やっぱり面白い。素直になーーーんにも考えないで読めるのが娯楽たるゆえんかな。シリーズで続いているから不安もないしね。
78点
〆が不安定だからマイナス二点。もっとどっしりしてれば佳かったのに。
次回作はデルフィニアの外伝になるそう。王女達一行がデルフィニアの地に戻ってどうの、という話では決してないそうです。王様はでるらしいけど端役の模様。ついにネタ切れでデルフィニアに手を出し始めちゃったのかなぁ、等と邪推しております。

*1:まるで打ち切りのような終わり方ですわ。『禅銃』とかは結構酷い。でも嫌いじゃないんですよね