山田風太郎 伊賀忍法帖

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あらすじ

戦乱の端緒となる室町幕府末期、松永弾正久秀という武将がいた。朝廷からその力を認められた室町は足利氏の力が衰え、その筆頭家臣であった三好氏も次第に力を失い、家臣の松永弾正が実権を握るに至ったが弾正は逆臣としてすぐに動くのをよしとせず、時期を見計らっていた。
そんな伏龍弾正がふとしたきっかけで知り合った人物は果心居士という異なる人物だった。彼の者を評すに奈良を住処とするとされる幻術士と表すよりほかない。一種の催眠術なのであろうが、幻惑を生じさせ人心を惑わすその術は巧みと言うより怪奇じみていた。
千宗易(後の千利休)が弾正の居る信貴山城を訪れたのはそんな時分であった。弾正はその飽くなき野心を持ちつつ、風流心も兼ね備えるそんな人物だった。そして請われるまま宗易はこの国といえども一二を争う名器平蜘蛛の釜を弾正に差し出すためにやってきたのだった。茶人として名の高い宗易であるが、その本職は堺の商人である。世渡りの上手い宗易は今勢いのもっともある松永弾正と敵対するよりも、むしろ懐に潜り込んでしまった方が後々を考えると上策と考えたのだった。その為に自身のもっとも愛する茶器を譲り渡すという行為も先行投資の一部と割り切るより他無かった。その悲しみは子を取られるほどに骨身にしみたとしても・・・。
宗易が覚悟を決めて信貴山城へ出向くと既に賓客が二名いるという。天守閣に通されると一人は果心居士、もう一人は柳生新左衛門(後の石舟斎)であった。その席上で果心居士は戯れに星占などをご覧じたが、突如として弾正に一つの提案をした。
「右京太夫を手にする法がある」と。
松永弾正にとっては主君の妻に対して横恋慕していることは秘事である。大いにうろたえたが、手に出来れば何も言うことも無し、勢い込んでその法を聞こうとする。
果心居士言うところのその法とは淫石という物を使うのだそうだ。それを茶にでも溶かし、女人に飲ませると一番初めに目にした人物に惚れ、且つ性の虜となるという。そも淫石を作る方法も陰惨で女人の愛液を大量に集め、それをもっとも素性正しき釜にて煮詰め、残った滓を更に愛液で煮込み作るのだそうだ。
それを聞いた新左衛門と宗易は胸が悪くなり、早速その場にいる侍女で実演される段になって部屋から退席した。なにより宗易は身を切る覚悟で献上した平蜘蛛の釜がそんな用途に使われることに酷く落胆していた。
一方、天守閣では果心居士の麾下の破戒僧がそれに取りかかっていた。果心居士は弾正の望みを達するための淫石を作るためにそれら七名の弟子を預けることにした。

その数日後、一路伊賀の里を目指す二人連れがいた。両名とも見目麗しい男女であり、夫婦であるらしかった。だが、二人とも褐衣を着込み、顔に似合わないほどむさ苦しい出で立ちであった。男の名は笛吹城太郎といい伊賀の里の統領服部半蔵の甥であるのだが、一年前に半蔵から預けられた勤めを途中で放り投げてしまっていた。その原因を作ったのが今同伴している女篝火であった。篝火は城太郎が堺に来たときに傾城町で遊女をしていたのだが、二人が会ってすぐいかなる縁か二人の気持ちは駆け落ちへと傾いた。それから一年がたち、城太郎は故郷へ帰ろうとしていたのだった。故郷へ近づくにつれて城太郎の胸に去来するのは勤めを途中で投げ出した忍びが再び受け入れて貰えるのか?という不安と、里へ外の者を連れて行くという掟破りの不安だった。その不安をなんとか打ち消すためにこの一年間城太郎は肉体を酷使することを知らぬ遊女という職業をしていた篝火をいっぱしの忍びに仕立てることにしたのだった。
そんな二人がもう伊賀の里も近い隣の柳生の里にさしかかったところで七人の墨染め衣を着込んだ僧に襲われる。この僧達はもちろん果心居士の弟子の破戒僧で、淫石作りに適した女人を捜しあさっている最中だったのだ。篝火も元傾城町の美姫であるからその邪悪な眼鏡に適うにあたいしてしまい、城太郎を殺してでも篝火を連れ去ろうとする僧たちを目にした篝火は城太郎の命を優先してすすんで生け贄となることに・・・。
残された城太郎は新左衛門から助言を貰うが、篝火は彼の者の命に等しい。城太郎は篝火を取り戻すため怪僧七人と命をかけて渡り合うことになる。

感想

山田風太郎二冊目ですな。うーむなんというか、エログロって感じです。こういうのも持ち味なんですよねぇ。解説を書いてるのが『魔獣狩り』でエログロバイオレンスが持ち味な夢枕獏なのは狙ってるんでしょうねぇ・・・。
ま、本作はなんかどっかで見たことがある場面ばかりだなぁとか思ってましたが、一年ぐらい前に深夜映画としてやってたのを見てたみたい。角川映画特有の大味SFX大作でした。出来は想像に難くない、そんなとこ。
で、原典と映画は月とすっぽん、提灯と釣り鐘って感じですね。ただ、本作は復讐がメインテーマって気がするんですけどどうにも弱い。毒としての性を全面に出し過ぎてなんかお腹一杯だし、中途半端な感じがしないでもない。とはいえ、房事を丹念に書いていると言うわけでもないので、欲情を狙った書としてもどうだかなー。星占を本筋にからめてお茶を濁すのもどうかと思う。15年後にはたされますよーって事で話まとめるのは問題外のような。忍術って事で片付けてる事柄の発想は優れてるんだけど、それだけかなぁ。
恨み節がもっと強烈ならばアドレなって面白いんだろうけど、この調子だと純粋に愉しむのは難しそう。ここまで中途半端だとねぇ・・・。
多分この文体が第三者的な傍観者めいていて、特定の誰かに重点を置いて書かないから感情移入しづらいんじゃないかなぁ、勿体ない。
50点。
蛇足:今回特に感想無いからえらく短いなぁ・・・。
追記:そうか、これはエロゲにするべきなんだ!(壊
追記の追記:なんか山田風太郎は松永弾正好きみたいだねぇ。

参考リンク

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