宮部みゆき 堪忍箱

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あらすじ

  • 堪忍箱

菓子問屋に代々伝わる開けてはならぬ堪忍箱。少女の肉親は火事の最中一命に代えてでも因習を継続しようとした。

  • かどわかし

大店である料理屋の幼い一人息子が暇を出された乳母に会いたいが為、狂言誘拐を畳屋の箕吉に頼む話。

  • 敵持ち

料理人の加助は大店「ひさご屋」の板前なのだが、主人の旧友が中風で倒れた為、その旧友の店である「扇屋」の板前代理を仰せつかった。だが、主人の妻であるお鈴がヤクザ者の客に絡まれていてそれをかばい立てする形になった加助は最近命を狙われている。仕方なく長屋の浪人侍に用心棒を頼むのだが・・・。

ふきが奉公に上がった米屋を営む小原屋は傾きかかっていた。それでも必死に働くふき。なんでもない日常を過ごすうちに怪異に出会う。

  • お墓の下まで

深川富川町の市兵衛店には秘密を抱えた人物ばかりがいた。主人の市兵衛もそうだし、死んだ女房のお滝ももちろんのこと。三人の子供達にもそれぞれ秘密があった。三人とも子供の出来なかった市兵衛夫妻が我が子として育てることにしたのだった。長女のおのぶは迷子、長男の藤太郎と次女のおゆきは揃って捨てられていた。
それぞれは秘密を墓の下まで持って行こうとしていたのだが・・・。

  • 謀りごと

深川吉永町の丸源長屋で奇妙な事が起きる。差配の黒兵衛が先生と呼ばれている浪人侍の部屋で猫のように丸くなって死んでいたのだ。勿論とうの先生はこの場におらず、長屋の衆はああでもないこうでもないと言い合って一向に番屋にゃあ知らせない。

  • てんびんばかり

お美代とお吉は姉妹のように暮らしていた。両親を亡くしたり不運を共にするが、お美代は美貌にそそられた大店の旦那の後添えになることに。一方お吉は貧しい裏店で一人頑張る以外になくなった。「禍福あざなえる縄のごとし」とは嘘も甚だしい。
両者の道が分かれてから二年、お吉の元にお美代が訪ねてきた。

お春という少女が母親の過去を知り、大人になる話。

感想

宮部みゆきの本五冊目ですかね。ごらんの通り時代物。でも終始一貫とは行きませんでした。連作短編集ではないですから。
それにしても一編が短い。大体一編30ページですわ。色々と勿体ない気がする話が多いです。特に表題作。これは極めつけですな。いやぁもうホラーとしてその話を膨らませた日にはどれだけ面白い話が書けたことか・・・。こんな妄想の膨らむネタをたった30ページぽっちで書き捨ててしまうのは才能の無駄遣いというもんです。なんとなく「ことりばこ」(知らない人はここここ参照)を連想させるし、ホラーネタとしては相当上物なはずなんだが。
にしてもほんとに纏まりのない本ですね。ミステリからホラー、そして裏店人情物、普通の人情物と広くカバーしてますからどれかは多分ヒットするでしょう。ただやはり紙面の問題がでかいかと。どれも物語るには軽すぎる枚数ってのはあります。それぞれ倍の量にしたら満足感も違ったんでしょうね。
あんまりどぎつくやってないので時代物に触れてみるきっかけとしては悪くないかも知れません。ライトで取っつきやすいでしょうしね。ただ、深い物を期待しちゃあ拍子抜けするでしょう。山椒は小粒でもぴりりと辛いとか言いますが、星新一筒井康隆小松左京のSFショートショート御三家ばりの驚きは無いです。ま、当然といっちゃ当然ですがね、日常系の話ですから。唯一の救いは不幸話を並べてる話もありますが、そこまで深刻じゃないって点ですかね。ひたすら陰鬱な本とか有りますが、ああいった文章ではないのでダウナーな気分にはならないかと。
私としては堪忍箱だけに絞った上下二分冊(計700ページぐらい)するぐらいの話が読みたいところ。こういったガジェットには弱いんですよ。いつか書いてくんないかなぁ。
70点。

参考リンク

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