倉知淳 猫丸先輩の推測

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あらすじ

  • 夜届く

猫丸先輩の後輩で准レギュラーの八木沢行寿の元へ度々憶えのない電報が届く。一通目は病気、二通目は火事。だが、実家に電話してもそんな事実はない。届く自分は夜中の寒い時間帯なのでぬくぬくとした環境から寒風吹きすさぶ外にドアを開くのは心苦しい。NTTに問い合わせてみたが、発信者は教えては貰えない。はてさて、どうしたものか。

  • 桜の森の七分咲きの下

小谷雄次は弱小アパレル系メーカーに就職したのだが、初仕事は花見の場所取りだった。やることもなく腐っていたのだが、そこへ度々不審な人物が現れる。花見の場所を横取りしようとしていそうなのだが・・・。

糞熱い夏の最中にもポリシーであるトレンチコートを脱ごうとしない探偵郷原は迷い猫探しの依頼を受けて、依頼人の元へ来ていた。行方の分からなくなった猫はヒノマルと言い、まるで斑の部分が日の丸の様に見えるらしい。動物探しは良くあることなので、経験から来る方法で地道に捜すのだが・・・。

  • たわしと真夏とスパイ

南口商店街は近頃北口に出来たスーパーマルエーで売り上げが落ちる一方だった。そこでなんとかして起死回生の手として商店街主催の納涼大会を開くことにした。なんのことはない、夜店を出すぐらいのことだ。予算なんてほとんど無いのだからしょうがない。
だが、その納涼大会の中でテキ屋の屋台が度々狙われる。商店街の面々は北口スーパーのマルエーの工作員の仕業ではないかと憤るのだが・・・。

  • カラスの動物園

長尾葉月はファンシーグッズのキャラクターデザイナーだ。だが、ここ最近コンペでもモニターの女子高生の感触は寒々しいものばかりだった。おまけに才能が枯れたのじゃないか等と上司から言われる始末だった。才能が枯れたと見なされたデザイナーの末路など悲しいものだ。畑違いの営業への転向でぼろぼろになって捨てられてしまう。彼女はリフレッシュするために一人講演にやってきていた。そこで引ったくりの現場に居合わせるのだが・・・。

  • クリスマスの猫丸

再び登場の八木沢君である。彼は先輩の猫丸のために原稿書きの仕事を回しているのだが、後輩の心先輩知らずと言う奴で猫丸は接待しろと五月蠅い。どうやら味をしめられてしまったようだ。渋々接待するのは佳いとして、原稿を仕上げてからと譲れない部分はきちんとした。
とはいえ、何が悲しくてクリスマスの中男二人で飲み食いしなければいけないのだろうと八木沢はぼやいていた。そんな八木沢は待ち合わせの店でぼんやり窓を見ていたのだが、一方向に走り去るサンタがいた。しばらくするとまたサンタが走っていた。更に見ているとまた走り去る。はてさてサンタはなんで走っていったのだろうか?

感想

倉知淳三冊目です。猫丸先輩シリーズの消化二冊目。例によって短編集です。この本から講談社に移動したようですね。
前日読んだ幻獣遁走曲との違いは八木沢君が出てくるか否かっぽいですな。あとは全体のスピードテンポが上がっていて、猫丸先輩のハイッぷりが強調されてるとこって所でしょうか。語りも伝法になってより落語っぽくなってましたな。
やっぱり軽いノリのラノベっぽい日常ミステリーなのでさらっと楽しむのがいいでしょうな。唐沢なをきの絵も良い感じではあるものの、緊迫の心理戦やら推理戦とかじゃないので、そっちを望む人にはちょっとアレ。でも息抜きも偶に佳いもんです。厚さを感じさせないさらっとした文体でそのスピードを体感してみるのも一興かと。時間つぶしの娯楽作。
ま、読んでも特に残滓が残らないのが本としてきついかなぁとか思ったり思わなかったり。悪くないんだけどねぇ。
猫丸の口調が八木沢と話すときに嫌に下品に勢いで巻き込んでしまおうという気概が見えたりするのが幻獣遁走曲と違って生き生きしているのだが、ちょっとびっくりした。
75点。
蛇足:なんか販促で本格ミステリーって冠して売ってるみたいだけど・・・これ本格か?ちょっと違うような。娯楽大衆ミステリーって感じがする。

参考リンク

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