法月綸太郎 法月綸太郎の新冒険

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あらすじ

  • イントロダクション

特になし

穂波の通う区立図書館の館長が「全国図書館司書のつどい’96」に出るはずだったのだが、ゴルフで日射病になって倒れてしまう。欠席は良かったのだが、往復の切符と宿泊予約をキャンセルするのが勿体なかったので綸太郎を誘って旅行に出ることに。しめきりに追われる綸太郎は二日も旅行に割くことが勿体なかったのだが、渋々行くことにする。ちなみに宿泊先で寝物語が語られたとかいうことは無い。
何事もなく帰る電車で二人は前の座席に居る夫婦の夫の側が死んでいるのに遭遇する。

  • 世界の神秘を解く男

東邦テレビの菱沼プロデューサーから超常現象否定派としてコメンテーターとして求められ、たまたま引き受けた綸太郎。そして何故かロケハンにも付いていくことに。
向かった先は某所の一戸建ての家。二階構造のこの屋敷では、娘の部屋でポルターガイスト現象が起こっているのだという。
現場には綸太郎の他に、W大学の丸山一郎教授、その大学院での愛弟子の古賀青年、メディアリンクス*1の松下プロデューサ、同水野AD、同音声の小泉、同カメラマンの溝口、ポルターガイスト現象の震源と目されている園山エリカ、その母の園山美佐子、美佐子とエリカと血の繋がりのない長男の公一がいた。なお、菱沼プロデューサーは陣中見舞いに来たが、すぐに帰宅した。
丸山教授曰く、超常現象はPM12時〜AM1時頃に集中するとのことで、エリカの部屋に据え付けられた機材から送られてくるデータは隣のクローゼット部屋で観察していた。ちなみに狭いので身動きが取りづらい。
そろそろなにか起こりそうな時間帯の11時半頃に丸山教授と助手の古賀青年が長男の公一君の部屋にバタバタと入って行った。何かやりとりがあったのだろう。のちこちらに来ずに丸山教授は下に降りていった。古賀青年はこちらにチェックしに戻ってきたが、迎えに行った水野は封印されたはずの一階サロン室まで来ていた。クローゼット室の小泉がマイクに変な音を拾っているとつぶやいた瞬間にひどく重たいものが落下して激突する音が響き渡った。

  • 身投げ女のブルース

警視庁捜査一課の葛城警部がたまたま情報提供者に会いに行く途中、身を投げようとしている女性がビルの屋上にいるのを発見し、助けるが・・・。

  • 現場から生中継

連続児童殺傷事件の解決を現地で伝える中継テレビに出演していることをアリバイにしている男の彼女が殺された話。他殺であるのは確定。

交換殺人を持ちかけられた男、新宮和也は先に消えて欲しい自分の妻が死んで自分もやらねばならなくなる。だが、失敗してしまい、すぐに捕まってしまう。持ちかけてきた男は武藤浩二と名乗ったという・・・。

感想

昨日に引き続き法月綸太郎です。三冊目ですね。冒険から新冒険がでるまでのスパンが実に長いのは、短編の依頼が無かったのか、それとも法月綸太郎特有の悩みが関係しているのか不明ですが、悩みが関係してそうだなぁ。まぁ、途中に『パズル崩壊』って短編集が挟まれてることだし、きちんと書いているみたいですな。コアにコアにってどんどんマニア好みの話にしすぎると行き詰まりそうな気がするんですけどねぇ。もうちょっと肩の力を抜いても佳いんじゃないかな。

  • イントロダクション

読者サービス。それ以上でもそれ以下でもない。

こういう興味を引く内容であればトラベルミステリーも楽しめそうですな。時刻表トリックだけは勘弁だけれども。でも無駄にひねってる気がしなくはない。

  • 世界の神秘を解く男

テーマが古いわな。でもまぁ、出来は悪くないと思うけど、人物をずらずらと出し過ぎなのと人を描けてないのであんまり好きではない。

  • 身投げ女のブルース

これはちょっと困る作品かなぁ。詳しくはネタバレで。

  • 現場から生中継

すわ双子トリックか?と思わせる内容ですが、そういうわけでもない。ん〜ミステリー作家なら電子機器の取り扱いには慣れた方がいいんじゃないかなぁ。携帯電話すら持たないってのは締め切りの電話を編集にかけて欲しくないからだと思うけど。電話の事を調べるのにいかにも怪しそうな本から情報を得るのは止めた方がいいと思うけどなぁ・・・。

正統派ですなぁ。当たり外れある本書では「背信の交点」とこの「リターン・ザ・ギフト」が良い感じ。「身投げ女のブルース」も悪くないけど本格として読むのであれば、ちょっと落ちますね。

総じて人間が描けなくなってしまった感があります。こちらの本よりは同じ短編集の「法月綸太郎の冒険」の方がまだ良いような。トリックという面とそれをひもとく手法は確かに綺麗なんですけど、読み手がそこまでのパズルマニアで無い限り、お勧めは出来ませんね。作家としての資質はちょっと疑わしい感じになってるように思いますねぇ。やはり上級者向けって感じでしょうかね。極まっちゃった人向けというか。ミステリー読まない人にこれ紹介したら真っ先にミステリー嫌いになりそうとも感じますね。
やはり、人物に魅力がないと読んでて楽しくないですよ。勝手に想像するにももうちょっと情報が欲しいところです。
ちなみに前作で図書館司書の方から来た情報で「図書館の自由」って物があるらしく、図書館の独立性を保つために、警察からの請求がないのであれば一切の情報を出さないってのがあるわけですよ。要するに前作の図書館シリーズに対して「図書館は個人情報だだ漏れみたいな話をあくまでも創作であってもイメージを点けられるのは好ましくないからやめれ」ってやられちゃったんですな。で、この本で「図書館の自由」について色々やってるんだけど、どうしても当てつけにしか思えないw。
この経緯で図書館シリーズは止まってるみたいだけど、同時に内に籠もるみたいにコメディー的な部分は少なくなってる。ある種方向性を手に入れる切っ掛けにも成り得る部分だったから、これで枝を切るように要素を無くしてしまったのだったら残念だなぁ。そちらを伸ばしていけばファンが増えるのに・・・。
速やかな図書館シリーズの復活を望む。別にシリーズでも構わないけどね。コメディー調のリハビリは必要だわ。シリアスでも佳いから感情移入しやすくして欲しい。
60点。

参考リンク

法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎の新冒険
posted with amazlet at 05.08.31
法月 綸太郎
講談社 (2002/07)

法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎の新冒険
posted with amazlet at 05.08.31
法月 綸太郎
講談社 (1999/05)

ネタバレ感想

改行が続くので、間違えて日付で見てる人はトップに戻ってくださいな。
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これぐらい改行すればいいかな。
「身投げ女のブルース」についてですが、これはパターンを作ってしまったんじゃないですかね。始まる視点が綸太郎・父・穂波の三者以外のケースでは始まった視点で語られる人物が犯人と。前作で収録されている「カニバリズム小論」だけならばいいんですけど、これで二つめなので、パターンが出来てしまったような。出来ればこれを打ち消す物を書いて欲しいですね。
なお、葛城警部が助けた女性を殺すのはちょっと必然性に欠けますよね。この部分は要らないと思うんだけどなぁ。あくまで葛城警部を逮捕すると言うのが見え透いてていや。

*1:東邦テレビの番組下請けプロダクション