殊能将之 ハサミ男

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あらすじ

出版社のアルバイトを続ける「わたし」は実は世を騒がす『ハサミ男』だ。
女性を殺し、深く突き立てられるハサミからマスコミがその名を付けた。
用心深い「わたし」は下調べを入念にしてから犯行に及ぶので、すでに起こった三件の犯行からはまだ「わたし」が犯人であるということはばれていない。
すでに前回の犯行から八ヶ月が経過していた。「わたし」は今回の犯行のターゲットを尾行したり、観察したりしているうちに四件目の被害者が自分以外の何者かに殺されているところを発見してしまう。
公園に倒れ込み、首に太い紐がからみついていて、あたかもこれが自然の如く突き立ったハサミ。
ハサミ男が自身の模倣犯の犯行に、偶然にも出会ってしまった瞬間だった。

感想

叙述&倒叙と複合的な小説でした。連続殺人事件の犯人「ハサミ男」が模倣犯と交錯するあたりも面白いですな。
第四の殺人については、早々に模倣犯の犯人はわかるんだけど、叙述部分で上手く騙されました。この本はメタミステリってわけじゃないんだけど、同様に上手く騙された奴で、一辺読んだだけでは分からないって奴では我孫子武丸の『殺戮にいたる病』以来ですかね。『殺戮にいたる病』はメタミステリなので、初めて読んだときは「は?」と結びで納得がいかなくて、説明が中途半端な物だから不完全燃焼感を味わいましたが、本書は説明十分、後始末十分な形で、きちんと万人向けに書かれているっぽいので、比較的まともです。ただ、叙述で変な部分はチェック入れながらもう一度読む必要が在りそうですな。そうしないと楽しみ尽くした感じはしませんし。もう一度読むのはいつのことになるやら。
小説としては嫌いじゃないんですが、感情移入がしづらかったのと山場でアクセントになるような場面が無かったのでエンターテイメントとしてちょっと微妙かなぁとか思った次第。純粋に知的パズルを楽しまれる方にはお勧め。珍しく二度読みできるミステリーです。
作中色々な書物の引用だとかが出てきます。ミステリーネタが大半ですが、文学ネタ、SFネタ、歌舞伎ネタなどなかなか作者は教養高い人のようですなぁ。これ以降の本については糞味噌に貶されている物なども在るようですし、二の足踏みそうですが、もう少し読んでみようかなと思ったのでした。ま、出来が悪くてもメフィスト賞受賞者ですからねぇ。分かってて手にした方が悪いw。
70点。
蛇足:なんでこの本がミス板でミステリ初心者が初めに読んだ方がいい本なのかは未だ不明。

参考リンク

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