乙一 ZOO

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あらすじ

ある双子の話。大海を前に上げる鬨の声。

ユーモア殺人事件

ハードなヨコハマ買い出し紀行

別離

グロテスクな異形譚

  • Closet 青春と読書 2001年1月号〜3月号

殺人事件

言霊使い

ぐるぐると檻の中を徘徊する獣

  • SEVEN ROOMS ※ 『ミステリ・アンソロジーⅡ 殺人鬼の放課後』

迫り来る死の恐怖

  • 落ちる飛行機の中で 書き下ろし

安楽死とハイジャック

感想

いつも通り短編集です。乙一作品では残りは 「暗いところで待ち合わせ」ぐらいになりました。なんでも、この作品集はは映画になったらしいです。しかも短編5つをそれぞれ別の監督が撮っているオムニバス作品とか。調べてみたところ岡山・広島・徳島・長崎*1以外では既に上映は終了しているようですな。単館上映型の映画だったらしく全然上映に関する情報は入ってきてないので、かなり制作費と宣伝費が低めのものだったんでしょう。映画化、映像化されたのはあらすじに米印が付いている奴です。
しかしまぁ、ZOOという題名ですが、纏まりの良さはあるものの、ちょっと納得いきません。動物園はたくさんの動物を色々見れるという事で、短編集である本作では確かに収まりは良いんですが、いかんせん表題作のZOOの出来があんまり良いとは言えないような感じなんですね。乙一というと白と黒が云々という話がよく出てきますが、本作では白からグレー、グレーから黒というようなコントラストが楽しめます。そのまま、読み始めから読み終わりにかけて言えると思うんですが、一つの本としてはバリエーションはあるものの、人によって好みが分かれる話が多いので捨てる話もあるかと思います。私にとってはZOOという短編がその捨て話に該当しました。また、冷たい森の白い家とClosetもそれに該当します。なお、ほとんど先頭から順番に発表されているので、その変遷を楽しむこともまた可と思われます。

  • カザリとヨーコ

死にぞこないの青」とか「BLUE」系のお話。オチ前の展開が読めちゃったのが残念だけど、救いに満ちあふれているのは、まだ駆け出しの頃だったからなんでしょうかね。星新一っぽい。

  • 血液を探せ!

いやぁ、声を出して笑いました。あまりにもブラックなユーモアでくだらないんだけど、それだけじゃないというおもしろい作品。かんべむさしとか筒井康隆っぽい。

  • 陽だまりの詩

人類の最後っていうのは20世紀末に映画ではやったことで、陳腐に成り下がってると言えますが、嫌いなテーマじゃないですな。ただ、本作は感情面での掘り下げに踏み込むことはしなかったので未完成な感じもしますが荒涼とした大地に広がる人間のない世界にはあこがれを感じます。破滅願望があるんですかねぇw

  • SO-far そ・ふぁー

これはアイデアが実に秀逸です。〆はドンデンの為に尻すぼみですが、ドンデン無くしてこのアイデアだけで力業に持ち込んだ方がよかったと思われます。

  • 冷たい森の白い家

GOTHの元になったと思われる話です。この話ぐらいから白から転換してきています。薄暗く、妖しさ漂い始めるのです。もう少し文体に古風な美学が垣間見れるようになれば良いのにと思う次第です。

  • Closet

収録作一二を争う駄作。というかミステリを書こうとした習作なんでしょうけど、ミステリ読まない人にはともかく、読む人だとあまりにもデフォな進行になんの驚きも無いかと思われます。これは飛ばしてもokかと。

  • 神の言葉

主人公に納得がいかないわけです。馬鹿すぎるのです。アイデアはいいのだから方向をもっと定めてから書いた方がいいかと。このアイデアをもう一度使って書き直して欲しいぐらいです。

  • ZOO

異常者心理の描写に凝ったちょっと白眉な作品っぽいですが、感情的には実に退屈。アイデア、切り口は斬新なのだから料理の仕方を考えて欲しいところ。

  • SEVEN ROOMS

イデアが実に秀逸。且つ感情的にも恐怖に揺さぶられるという得難い体験をさせてくれた本作ですが、いかんせん話の筋が中盤に入るあたりで読めてしまうのが勿体ない。無駄な肉付けを省いたスリムな筋肉質のサラブレットっぽい話ですな。

  • 落ちる飛行機の中で

Closetと争う駄作かと。全体的に手抜きが否めない。現実的に話を作らないで丸く収まった後に再びアクシデント、その後も丸く収める・・・作為的すぎる。

75点って所でしょうか。かなり作品によってムラがあるのでしょうがないですな。

参考リンク

ZOO
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乙一
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*1:まだ上映予定なだけな映画館も含む