浅田次郎 プリズンホテル夏
あらすじ
木戸孝之介は父の葬儀の際、ヤクザの叔父木戸仲蔵に呼び止められ、ホテルを作ったとの話を聞いた。叔父は是非一度でいいから遊びに来いという。
だが、父の遺言には、ヤクザ者の弟*1とは付き合うなと釘をさされていた。
しばらくたって、出版社でゲラ校正をしている時、ちょっとしたいざこざがあって落ち込んでいたが、骨休みでもしようと仲蔵のホテルを訪ねる事にした。遺言に背くかもしれないが、まぁ仕方在るまい。
善は急げという事で囲っている女、田村清子に電話し、上野駅に呼びつけるのだった。
感想
昨日に引き続き、浅田次郎の著書です。
プリズンホテルシリーズの一番初めの本ですわ。文庫版では題に夏と付きますが、ハードカバーでは付かない模様です。ドラマにもなりましたね、見たはずですが殆ど忘れてましたが。どうやら芝居にもなったらしいのですが・・・詳しくはよく知りません。
さて、今まで順番滅茶苦茶に読んできたおかげで、新鮮さも何もあったもんじゃありません。こうなりたくなかったら皆さんこれを初めに読むようにしてください。
内容的にそれぞれのキャラクターの説明に筋が行っている様で、残念ながら既知のキャラクターの説明を再び読むという徒労が在ったので純粋に楽しめたかといわれるとちょっと疑問です。ただ、今まで当然の事として扱われてきたであろう事柄で知らなかった点などが数箇所あり、漸くシリーズの補完が出来ました。今まで読んだ事も聞いた事もない人が居ましたら、是非「プリズンホテル春」まで読まれる事をお勧めしておきます。後悔はさせません。
愚痴はさておき、感想へ。今回読んで気付いた点は主人公の木戸孝之介がしっかり描かれているなという事でした。続刊ではかなりいい加減に描写されていると感じたので、ここでしっかりと生い立ちが語られているならば、読んでいても不自然さはないのだろうと思いました。でもまぁ、人格破綻社会不適合者ですからあんまり気にしても始まらない気もしますがね。
気になった点としては、カラオケバー『しがらみ』のバーテンは初刊では出てこなかったという事ですかね。まぁ、人物がそれなりに多いので書ききれなかったか、キャラクターとして制定してなかったんでしょうかね。弾除けのフランケンシュタインの様な顔をした男についても出てきませんでしたし。サブキャラですから気にしてもしょうがありませんかね。
文章はいつも通り。読んだ事無い人には伝えにくいが、ピカレスクコメディの本作はブラックさよりも、妙に芝居がかったキャラが満載って言うのがあたっていそう。良くも悪くもキャラが個性的なんですわ。楽しく読めるかはそれに乗れるか乗れないかの差でしょうな。くさい台詞も随所にありますので耐性無い人はご注意を。
ま、四の五の言わずに読むべし。75点。*2
今日の引用
副支配人の黒田曰く「へい。世間じゃオヤジが乗っ取ったことになってるようで。オヤジはいつも言ってます。生きてる人間も死んだ人間も、善人も悪人もそっくりもてなす極楽ホテルを作れって。だが、人はここを監獄ホテルだと抜かしやがる」
浅田次郎 『プリズンホテル』より
蛇足:
- 逍遥(しょうよう):気ままにブラブラ歩く事。そぞろ歩き。