ジェフ・ヌーン 花粉戦争

あらすじ

イングランドの街マンチェスターはポリス化し、毎年花粉に襲われている。
そう、植物の花粉だ。
自然の猛威としか言い様が無いが年々それは酷くなる一方だ。
五月一日、物語は一人の影警察官女(シャドウ・コップ)シビル・ジョーンズ、非合法の闇タクシー運転手の犬人間コヨーテ、Xタクシー*1従業員の影女ボーダを中心に回っていく。
コヨーテはボーダと旧知の仲でたまに仕事を回してもらっている。この日回してもらった仕事は女の子を目的地まで無事に届けるというものだった。
彼女の名前はペルセポネ。悲劇はここより始まる。

感想

作中に頻出するジョン・バーレーコーンなる人名。いきなり冒頭から出てくるし何の事かさっぱり。英語では普通に使われているなんかの符丁なのかなと思ってググってみた。
一番初めに出てきたのが以下のこれ。
Traffic /John Barleycorn Must Die
まぁ、1967年に世に出たRockの楽曲らしいが、まったく意味がわからんわけですよ。
で、広く認知された慣用的な人名ならと思い、Wikipediaの英語版で検索・・・。

原版
日本語訳

そこで漸く発見。どうやら、ジョン・バーレーコーンは酒・アルコールの擬人化された姿という事らしいですな。
より具体的には「穀物作物 大麦、およびそれ、 ビール、および ウィスキーから作られた アルコール飲料の擬人化」@イングランドという事になるらしいですがどうでもいいですな。
日本語で言うと菅原道真みたいなもんでしょうかね。
閑話休題
内容に関しては、正直言って退屈且つ前作の補遺的な内容に終始しているので刺激的ではありませんな。新たに追加された設定にゾンビ族とドードー*2がありますが、ヴァート本筋からすると支流に過ぎません。
まぁ、本編読んでて「いつになったらスクリブルがでてくるんだYO!」とずっと思ってたわけですが、全くでてきません。ゲームキャットも当然でてこないわけです。一応スクリブルとデズデモーナの娘が作中に登場してきますが、あくまで端役です。
前作で感銘を受けても今作に関してはスルーするのがいいと思います。正直面白さエッセンスが殆どありません。ヴァート世界をベースにしてる混沌の鍋であるだけですし、作中の異世界行もかなり微妙です。というか、殆ど作中に登場しませんしねぇ。
一言で言うとそう、期待はずれという言葉がふさわしい。点数は35点ぐらいでしょうかね。
それでも読もうと思うあなたへ。少しだけ旅路の道案内をしておきます。本作も前作と同じく「愛の物語」です。ただし、愛の方向性は前回とは違うものになっている点は異なっています。Have a nice TRIP!

蛇足:今気付いたけどヴァート読んだ事ある人にのみ特化した書き方してたorz
これじゃジャンルすらわからんじゃないかヽ(`Д´)ノ
基本的な事を忘れるとは・・・・
この本はSFです。ミステリー要素も入ってますが、そんなにきつく在りません。
単体でも読めない事はないですが、無理して読む類の本とは思えません。特に洋書の訳文とかの固めの文章に慣れてない人は止めた方が吉かと思われます。ストーリーテリングの手法もかなり日本の本とは違いますし。

参考リンク

花粉戦争
花粉戦争
posted with amazlet at 05.06.01
ジェフ ヌーン 田中 一江
早川書房 (1997/07)isbn:4150111995
在庫切れ

蛇足

ヴァートから新たに継ぎ足された設定について
ネタばれですから読みたい人だけよろしく
今までヴァート世界では人間・ヴァート・ロボ・シャドー・ドッグの五属性が渾然一体となっていましたが、新たにゾンビという属性が加わる事になりました。しかし、実質的には五属性と言ってもいいのかもしれません。ゾンビとシャドーは一つの属性だからです。ゾンビは男性であり、シャドーは女性である場合になるものだからです。
そもそもの始まりは大豊穣十号というヴァート界原産の薬なのです。日常世界で不妊が問題化していた時期にその解決に一役買ったものの、暴走した事により人間以外ともつがう事になってしまい様々な種類の生物が生まれる事となりました。
その中で死体とつがってしまった者達はゾンビとシャドーを生み出す事になったのでした。生まれたのが男の場合はゾンビ、女の場合はシャドーだったということです。シャドー能力は死そのものだという事がいえます。

*1:正規の仕事だが、従業員は入社と共に自己の過去と名前、全ての体毛を失う事になる

*2:ヴァートでトリップ出来ない体質の人達