加納朋子 螺旋階段のアリス

このミス*1で作者がノミネートされてた繋がりで読んでみた。ちなみにノミネート作は魔法飛行でこれは未読&未買。
随分前に買ったのであまりに時間が経ちすぎていてなんで買ったんだろう?と我ながら考えてしまった。
なお、この本の続編で「虹の家のアリス」という本が出ているらしい。同じく連作短編だ。

あらすじ

しがないサラリーマンだった仁木順平は五十歳を迎え今までの職場を後にする事にした。会社が始めた転進退職者支援制度*2なるものを使う事にしたのだ。
彼が選んだ職業は私立探偵。どうも探偵というものに憧れめいたものを持っていたらしい。家族は別に反対もしなかったためすんなりと事は運んだ。会社側からは有能な人物と見られていたため、引きとめも有ったが振り切る事にした。
事務所を開いてみたが、三日経っても閑古鳥。そんな彼の元に一人の少女が猫を抱いてやってくる。彼女の名前は市村安梨沙。不思議の国のアリスと一文字違いだと笑いながら言う。彼女は探偵には探偵助手が居なければと力説し、丸め込まれる形でその座に納まった。
かくして元サラリーマンの探偵とはずみで探偵助手になった少女の凸凹コンビは依頼が来るのを待つのだった。

感想

柔らかな文体と簡潔さは星新一を思い出させる。清々しさを憶えるような流れは非常にいいものだが、過ぎていく時間は相当に短い。271ページ有るが*3、連作短編なのでスラスラ読めて早い人は1時間もたないかもしれない。
星新一同様に時代背景に依存していないので時が経ち、時代が変わっても読める本ではある。ただ、大人向けとしては少々緩すぎる点は否めない。読書をしない人などには丁度善いかもしれないが、どちらかといえば子供向けかもしれない。
なお、本書の中で「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」やら頻繁に登場するのでルイス・キャロルの本を読んでおく方がいいだろう*4
ミステリーというより探偵小説の部類に入るといえると思う。ただ、表面をなぞるように書いているので深刻さは欠片も無い。ライト探偵小説ってところだろう。
黄金旅風がゴテゴテしまくっていて、ひたすらに可読性の乏しい本だった事から今回は救いだったが、70点といった所だろうか。やはり、ちょっと軽すぎる点が引っ掛かった。

追記:赤川次郎三毛猫ホームズシリーズをある種連想させた。

参考リンク

螺旋階段のアリス
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加納 朋子
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*1:このミステリーがすごい!」の事

*2:年齢五十歳以上か勤続三十年の社員が起業をする場合に1年間会社に籍を置いたまま給料をもらえる制度。もちろん退職金もつく。ある種の財政緊縮策

*3:ハードカバーでは

*4:スナーク狩りはお門違いですな