バリトン・J・ベイリー ロボットの魂

日本でもほとんど名の知られていない作家。まぁ、本国でもあまり作品の発表が出来ていないらしい不遇な作家と言った方がいいかな。長編を書いても、それを出版してくれる出版社が無いらしい。なので、自作の長編小説ではなく、細々とウォーハンマーシリーズのノベライズなんかやってる模様。なんとも才能の無駄遣いな感が否めないが、生活のためだろうから仕方ないのかもしれない。本書は連作で続編に「光のロボット」がある。それについてはそのうち書くかもしれない。
まぁ、ベイリーは邦訳は恵まれている方。
邦訳は上記以外に以下がある。

  • 禅銃〜ゼンガン〜
  • カエアンの聖衣
  • 時間衝突
  • 永劫回帰
  • スターウィルス
  • ティー5からの脱出

あらすじ

この世に生を受けたロボット、ジャスペロダス。
彼は生まれたときから既に自由だった。あらゆる意味で。
だが、彼が自由でも世界は彼を縛る。縛る理由はただ一つ。
「お前は人間じゃない。魂、意識が無い」
という事だ。
彼は自分に魂や意識は有るのか、それとも有ると錯覚しているだけなのか、世界を放浪しながら頂点を極めたり、挫折を経験しながら自分探しをする。

感想

世の中には奇人と呼ばれる人が居るが、SF界ではこの人が最たるものかな。アイデアの豊富さはこの人の真骨頂だけど、本書ではそれほどアイデアの奔流はない。
鋼鉄都市の項で述べたアジモフの三原則から明確に飛び出したアイデアでロボットという素材を用いながら、別角度の作品を描く事に成功した作品がこれ。
この本の訳者あとがきだったかに、「三原則無視をしたロボット物の連作はわずか3つ」と書いてあるがその中の一つが本書「ロボットの魂」だ。話の内容は哲学的な自己考察と反問から成り立っていると言っていい。哲学物好きな人は読んで楽しめる本かもしれない。ただ、結末で納得がいかないかもしれないけどね。
ストーリーは舞台的な探求譚だが、少々荒っぽいところを除くと驚くような点はないし、文体にも癖はない第三者視点。だが、読後感は決してよくない。ある種ノワールな雰囲気が最後まで付きまとうからだろう。最初の数ページで生まれてすぐに殺人を起したりするし。ロボットが人間的な表現をされている所に注意。
65点。

参考リンク

ロボットの魂
ロボットの魂
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バリントン・J. ベイリー Barrington J. Bayley 大森 望
東京創元社 (1993/09)ISBN:4488697046
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