柳蒼二郎 異形の者

聞きなれない名前だな。時代物は結構雑多な文筆家が多いので良書と悪書が玉石混交してるので、よほどの著名人で無い限り著者買いする事は少ないやね。まぁ、題名がそのまま何を取り扱っているかわかりやすい物をつけてる人が多いのが救いかね。ただこの本は題名が異形の者だから何を表してるのかわからんかったけど、一つの目安である賞の受賞をしていたので読む事に。第七回歴史群像大賞受賞作品。

あらすじ

生まれによって右のこめかみにこぶがあり、顔がこぶによって引きつっており、左腕が未成長の赤子が細川家に金で飼われている草の気まぐれによって拾われる。赤子は体の特徴から「こぶ」と名付けられ、非情な草の丹波に放置されながら生長する。その際丹波はこぶの声を意図的に出せないように精神的に恐怖を刷り込んだりもした。
こぶは滅多に帰ってこない丹波の作っておく飯を赤子である無力な自分一人で獲得するように生命力旺盛にならざるを得なかった。飯の煮炊きができるようになると丹波は家に米を置いておかずに、こぶに外で食料を取らせるように強制した。こぶは喰えるもの、喰えないものを自らの体を使って試すより他は無く、それでも生きていた。
ある日、丹波は長い間留守にするため白雲老という元草の老人を訪ね、こぶを預ける。5年の月日の間にこぶは白雲老から様々な忍びの技を授けられ、天賦の才も手伝ってカタワでは有るが抜群の能力を手に入れた。しかし、丹波の呪縛は一向に解けはしなかった。
5年ぶりに現れた丹波は、自らが雇われている細川の奥方を監視し、不測の事態にはその奥方を斬る役目にこぶを選んだのだった。

感想

成長譚ですな。何の話かと読むまでわからんかったが、ようは戦国末期の忍者の話です。しかし、ラストがああ行くとはちょっと予想してなかった。細川ガラシャとか全く興味がないからあれだが、理路整然として含みは無く、伏線も無く、ただ邁進し続けるこぶの清々しい物語はミステリーばかり読んでる昨今の状態からすれば結構意外性があっておもしろかった。ただ、一本調子なのがネックな人もいるかと。あと、時代物の場合終わり方がえらい中途半端なものが多いが、この本の場合はきちんと終わっている。そのあたりも評価できるかなっと。
なので、75点ってところかね。

参考リンク

異形の者

異形の者

異形の者―甲賀忍・佐助異聞 (学研M文庫)

異形の者―甲賀忍・佐助異聞 (学研M文庫)