たった一つの冴えたやり方 ジェイムス・ティプトリー・Jr.

SF史に燦然と輝く一等級の星の一人、ティプトリーです。SF界では知らぬ人は居ないぐらいのビッグネームですな。クラーク・ハインラインアシモフ等のクラスからはちょっと外れますが・・・。
残念ながら随分前に寝たきりの夫と心中して亡くなってます*1。ちなみに男性名ですが、筆名で当人は女性でした。*2

あらすじ

3篇の短編が一つの話の流れで繋がっていますが、一応未来視点から見た過去の物語として語られているため、それぞれに共通点は殆ど無いです。外宇宙と殆ど接点が無い地球側の描写に終始している感じです。
1つ目は、少女の探検、その悲しき顛末。
2つ目は、元兵士が戦争のために冷凍睡眠装置に入ったがために浦島効果で未来に取り残されて*3、かつての自分の属していたものを、失ったと思ったものに偶然出会い、自由について逡巡する。
3つ目は、ファーストコンタクトがお互いに政府間で行われず、ヤクザまがいのとんでもない組織が行った犯行が、政府の行った事だと思われたらどうなるかという話

感想

ティプトリーは好きな話と嫌いな話がきっぱり別れる作家だったりするんだが*4、この本については結構好きな部類に入ったりする。ただ、殆どの人が評価する1つ目の話「たった一つの冴えたやり方」は評価しようとは思わないわけで。
訳者の浅倉さんがあとがきで書いているが、「たった一つの冴えたやり方」を読んで泣かない人間は人間じゃないぐらいの事を著名な書評家が書いているとしているわけです。
ま、俺は人間じゃないわけですね(´ー`)y-~~
出来は悪くは無いものの、正直今の時流にあってないんじゃないかと思ったり。
下手なラノベの方が泣けるんじゃないかな。
なので、大方の書評サイトやら、SF関連の大御所の書評とは違い、この話の出来は60点ぐらいをつけておきたいと思う。
昔ならもっと高得点だったかもしれないけど、正直先読みしながら読むと思ったとおりに展開が進んでしまうので、ミステリー的な読み方を書籍について全般的にする奇特な奴であるこの俺にとっては魅力が半減してしまうわけですよ。
ただ、殆どの人が評価していない「グッドナイト、スイートハーツ」と「衝突」の方がまだ好意的に判断できたりします。
殆どの人はこちらについての書評はスルーしまくりです。もしくは引き合いに出すものの、かすんでるとか補助的な物言いに終始してる感があるわけで。
元々この本の内容はSF者からすると、スペオペ*5と揶揄されても仕方ない内容ですわ。
でも、短編好きでスペオペ好きな人にとってはよくできた話ではあるわけですな。*6
傷ついたからだと心、自由を求めてさまよう・・・。大藪小説に代表されるアウトロー物っぽいですな。>「グッドナイト、スイートハーツ」
スタートレックに有りそうな話で、敵側のタフな感情面での描写が秀逸だったり。>「衝突」
この二つについては85点ってところでしょうか。
で、間をとって72点ってところかな。
SF読まない人にこそ読んで欲しい本かもしれない。

参考リンク

*1:1987年5月21日没

*2:本名はアリス・シェルドン

*3:この表現はちょっと正しくない。正確には時間軸が後ろにずれて移動したのは彼なのだから

*4:あくまでも俺の感想として

*5:スペースオペラ、つまりSFじゃなくて宇宙を舞台にしてるだけの現代譚

*6:書いてる人間はローダン否定派では有るがスタートレック肯定派w