交響詩篇エウレカセブン1〜41話雑感

交響詩篇エウレカセブン (3)
片岡 人生 近藤 一馬 BONES
角川書店 (2006/01/26)

溜めていた奴をようやく見終わったので、現在放送分に追いつけました。

制作スタッフなどについて

制作はボンズ、現在はBONES表記みたいですね。鋼の錬金術師なんかを作ってる所ですが、ここ最近の出世株ではないでしょうか。元々サンライズのプロデューサーの南雅彦がCowboyBebopを作ったスタッフで独立した会社なのでサンライズの仕事がよく回ってきたり、サンライズっぽい話作りをしたりしています。見ていて一番印象強いのはメインメカニックデザイン河森正治氏ですかね。スタジオぬえのメインスタッフの一人である河森氏は主にマクロスシリーズを持って語られます。特にマクロスプラスの空中戦のクオリティの高さを記憶されている方も多いかと。ただ河森氏は本作に於いて空中戦のアイデアなどの供与をはかっている可能性は有るかもしれませんが、あのクオリティの空中戦所謂板野サーカスを作り出しているのは氏ではないです。特技監督として参加している村木靖氏があれを生み出していることを知ってください。なお現在河森氏はサテライトというアニメスタジオの取締役を務めています。サテライトは3DCGの技術力で定評があるスタジオですがここもここ最近名を上げているスタジオであることは確かです。サテライトというと現在OVAHELLSINGを制作しているスタジオです。ただ、何故かサテライトのHPではその情報がないのが謎ですが・・・。
ボンズでは以下の作品を制作しています。

さて、何故こんな事を書いたかというと、メインスタッフがここらへ関わっているからですわ。いや、全部じゃないですけどね。こうやって表記しておいた方が解り易いかとおもったのでやってみました。
監督を務める京田知己氏はラーゼフォンの映画版が初監督作品で、本作が二つめの監督作品です。ラーゼフォンでは演出や監督補佐を務めていたようですが・・・ラーゼフォン観てないんですよねw。だって、あんな変な時間帯にやってしかも度々時間がずれたりしてたら観れないに決まってますよ。
シリーズ構成をを勤める佐藤大氏は言わずとしれた脚本家ですね。COWBOYBEBOPや攻殻機動隊S.A.C.その他にもWOLF'S RAINやサムライチャンプルー絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク等でも脚本を張っています。安定感のある人なので話のクオリティには納得がいくかと。
主要なところではキャラクターデザインの吉田健一氏も外せませんね。この人は元々ジブリの人でしたが、原画マンとしてだけじゃなくてデザインの方でオーバーマンキングゲイナーのキャラデとメカデザを担当してます。キャラデザを担当してないにもかかわらず原画をやっていた∀ガンダムと絵柄が似ているのはちょっと気になるところです。なお、メインアニメーターも兼ねているようですね。
有名所はこんなもんかな。ではちょっと突っ込んでみたいと思います。

作品の設定に関する本歌探し

ラーゼフォンは見ていないものの伝え聞くところではEVAの焼き直しだったようですね。本作はそれを更に遡って源流たるガンダムに回帰したようです。ええ、ファーストガンダムのもろ焼き直しなんですよこの話は。
アムロ・レイは元々パイロットではなく科学者の両親を持つ技術者の卵でした。同じように主人公のレントン・サーストンも育ての親が祖父でメカニックの技術をたたき込まれています。ただ、アムロと違うのは等身大の子供である点を強調しているところですね。変に小さいだけの大人を描くのではなく経験を積み、成長していく様を描く所が富野イズムとの違いでしょう。故に青臭さや未成熟さが必要以上に強調されています。また、アムロのように悩む天才少年ではなく、天真爛漫な少年の珍道中的な側面もあります。夢想と現実との落差、反抗そして逡巡と決断。ビルドゥングロマンとしては実によくできています。ただ、主人公のレントンの一人語りが非常にうざったいと感じるところもしばしばですがw。
他にも月光号の中身はほとんどホワイトベースそのものですしねぇ。
ホランドはブライトでタルホはセイラ+ミライ、ハップはリュウ・ホセイあたりで、エウレカフラウ・ボウ綾波レイ、モーリス・メーテル・リンクの三人組はもろカツ・レツ・キッカですし。マシューはカイあたりかな。ただ、ゴンジイとかケンゴウとかどうにも当てはまりそうにない人物もいることにはいるけどね。ただ、これだけ符合が多いとそう考えない方がちょっと異様だわな。
それにガンダムの中でアムロが脱走する話とかもきちんと再現されている。そこに現れるのはランバ・ラル夫妻ではなくビームス夫妻。チャールズとレイでレイ・チャールズとかこういった名前でのお遊びは結構やってるね。主人公のレントンのネーミングは映画の『トレインスポッティング』の登場人物マーク・レントンからだし、グレッグ・ベア・イーガンなんてSF作家のグレッグ・ベアグレッグ・イーガンをミックスした物だし、ヴォダラク教徒のティプトリーなんてどう考えてもジェイムス・ティプトリーJrだしなぁ。他にも月光ステートでは影の薄いウォズとジョブスなんてアップルコンピュータ社の基礎となったスティーブ・ジョブススティーブ・ウォズニアックの事だろうし、となるとモリタソニーの創業者盛田昭夫からとなるだろうし、ギジェットは同名の映画『ギジェット』からきているんだろうし・・・。他にもなんらかの由来がありそう。
ちょっと整理。

一番由来深いのはヒロインの「エウレカ」かな。EUREKAってそもそもエウレカって読まないんだけど*1それは置いておくとして、アリストテレスが言ったことが有名な"I have found it!"を意味する言葉ですな。それと対を成す「アネモネ」。同じくギリシア関係で考えてみると神話に登場する美少年アドニスの血から生まれた植物と言うことになってます。あとはアネモネという名のニンフが花の女神フローラの愛人と通じた関係で怒ったフローラが花に変えられたとか言う話もあるようですね。うーん、なんか関連性が見つからないなぁ。ちなみにアネモネは「風の花」という意味らしいです。アネモネギリシャ語で風を意味する「アモス」が語源の花とのこと。残りは花言葉ぐらいか・・・。花言葉って色々あり過ぎなんですよ、勝手に決めるもんだからねぇ・・・。ざっと調べたところ「清純無垢、無邪気、辛抱、待望、はかない恋、孤独、消えた希望、悲哀、君を愛す、恋の苦しみ、薄れゆく期待」とかそんな感じらしい。
どちらも人型コーラリアンだから何らかの共通点はありそうなんだけど、名前がギリシャ由来ってあたりだけかなぁ。

作品独自の設定など

書き漏らしていましたが、どうやら『金枝篇』から借用している部分が多いようですね。『金枝篇』は一度も手を付けたことがないのでよくわからないんですが、有名な「森の王」にまつわる話をアレンジしてメインストーリーに使っているようです。

イタリアのネミの村には、ネミの湖と呼ばれる聖なる湖と、切り立った崖の真下にあるアリキアの木立とよばれる聖なる木立があり、 木立には聖なる樹(ヤドリギ)が生えていた。 この樹の枝(金枝)は誰も折ってはならないとされていたが、例外的に逃亡奴隷だけは折る事が許されていた。

ディアナ・ネモレンシス(森のディアナ)神をたたえたこれらの聖所には、「森の王」と呼ばれる祭祀がいた。 逃亡奴隷だけがこの職につく事ができるが、「森の王」になるには二つの条件を満たさねばならなかった。 第一の条件は金枝を持ってくる事であり、第二の条件は現在の「森の王」を殺す事である。

Wikipediaから引用)

この話は「金枝」と呼ばれ『金枝篇』の名は、この話から来ています。たとえ話として考えた場合、他の惑星からの移民である知的生物が逃亡奴隷ということになり、「森の王」はすなわち支配者を現すということになるかと思われます。作品世界の惑星は人間の他にコーラリアンと呼ばれる生物らしき物が居ることが確認されています。きちんと説明されていなかったため解らなかったんですが、この惑星に人間が移り住んでから珊瑚状の物が大地を覆っていきました。これがスカブコーラルです。大地が突如隆起して困らせる元凶はスカブコーラルなわけですね。大地に穿たれるパイルバンカーという名の杭はスカブコーラルに対する攻撃というわけです。スカブコーラルが人間との対話を望んで生み出したのが人型コーラリアンという物らしいです。それがエウレカアネモネ、サクヤなのですが、何をどうするのか?それは全くの不明ですね。月光ステート側は対話を、デューイ側は徹底抗戦をオレンジ計画で遂行する・・・そんな感じでしょうかね。
詳しくはエウレカグループを参照した方が早いかと。

シリーズ感想

どうやら1クールの出来の悪さに憤慨している人もいるようですが、あんまりそれは意識しませんでしたね。あくまで導入部であるわけですし、そして青野武さん、これ!私の場合アクセル演じる青野さんに全て収束しちゃうわけですよ。レントン旅立ち時の演技にはぐっとくるものがあります。
正直始めの方のレントンのモノローグが半端じゃなくうざいです。何をグダグダいっているんだか・・・ってなことで、レントンのモノローグは基本的にないほうがいいとすら思います。まぁ、それにしてもこの段階で魂魄(コンパク)ドライブだのアミタドライブだのセブンスウェルだのサマー・オブ・ラブだの専門用語を説明もなく放置しすぎな所は何とかならんかったのかな。
兎に角導入部ということで牧歌的なテンポで話は進んでいくわけですな。そりゃあリアルタイムに見ていた人はヤキモキしたでしょう。話が全然進まないわけだしね。変に絡む話が突き抜けてないギャグ方向だったりと微妙に感じた人も居るでしょうねぇ。思わせぶりなタルホとホランドだとか、ガキ三人組のネタとかにも深く突っ込まなかったりとかが気になってた人も居たでしょう。
しかしあれですね、アネモネがエロすぎるんですがなんか意図があるんでしょうかw。多分ドミニクのMっぷりにはまってる人も居そうですね。デューイ×ドミニクとかデューイ×ホランドとかのカップリングが普通にありそうで怖いです。
2クールといえば二つしかないですね。ひたすら掘り続ける男、そしてレントンの家出ですよ。このあたりでホランドの子供っぽさが極限に来てますわ。ブライト艦長もかくやと思われるキレッぷりと当たり散らし、そしてビームス夫妻ですな。チャールズはちょっと濃すぎるなと思えるキャラクターですが「だが、それがいい」と思えるようになってくるから不思議です。もしかしたら初めてじゃないですか小杉十郎太さんが演じるキャラクターが格好良く思えたのはw。やはりこのビームス夫妻が出演する一連のエピソードは本作で一番じゃないですかね。クールで区切れずに3クールの頭まで食い込んでますけど特に気にしない方向で。
3クール目あたりからストーリーが加速していきます。正直コーラリアンとスカブコーラルがどうのこうのという話になってきて「ガイア仮説」?とか思いました。でも結局違ったんですね。地表を覆っている大地とは別の存在が知的生物だったという話になっていることに今日ようやく解ったわけですが・・・まぁ、いいです。それにしても宗教を関わらせてしまうのはよかったのかな。まぁ、初っぱなでアミタドライブだのコンパクドライブだのニルヴァーシュだの全力で仏教臭がしてたのは確か。
四クール目、現在進行中なのはデューイがアゲハ計画の中のオレンジ計画を進めていること、そして月光ステートの面々はヴォダラクの聖地の一つヴォダラ宮へとむかうと。そこでサクヤとノルブが「対」になろうとした顛末とサクヤとエウレカが邂逅したのが今週分。エウレカは顔や首筋なんかにあった引きつりとえらく短かった髪が、そして無くなっていた眉毛というビジュアル面での修正が行われた。髪は伸び、引きつりは表面的にはわからなくなり、眉毛が生えそろった。OPの改変が行われた時点で髪留め無しの見た目になるってのは解ってたけど、そんな簡単にやっちゃってよかったのかな。まぁ、あの見た目はやばすぎだったからしょうがないけど。
総じてホランドとタルホの性格の変化は理解できるけど、エウレカの愛情を持ち出すというその変化は受け入れがたいなぁ。ちょっと急激に過ぎると思うんだわ。えらい一方的に変化させてしまったのでそこら辺はちょっと不満。
あと、ニルヴァーシュ武装が気になるよね。初っぱなから初期武装のまんまでしょ。ブーメラン型ナイフだけ・・・、どんなロボットアニメだよw。Gガンみたいに徒手空拳みたいなもんだしなぁ。ああそれで思い出したけど、変に平和強調する内容だと萎える。もう誰も傷つけないとかいう台詞は最終回付近で行ってください。更にもう一点。ホランド死亡フラグが立ったように思ったんですが、彼の命はあとどれくらいでしょうね。

*1:普通はギリシャ語発音でヘウレーカ、英語発音でもユリイカかユーリカ