荻原浩 ハードボイルドエッグ

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あらすじ

ハードボイルド嗜好の私立探偵最上俊平は現実と空想のギャップが激しかった。命のやりとりをするような事件よりも、命を繋ぐ細々とした逃げ出した動物を捕まえるという地味でちんけな仕事しか彼の元にはやってこなかった。それでも空想の世界ではフィリップ・マーロウばりのタフな自分が数々の難敵を打ち破ったり、事件を解決したり、喧嘩を上手く立ち回ったり、警察と揉めながら情報を得たりと大活躍だったが、今日も今日とて犬・猫・トカゲと動物の尻しか追っかけていない。
そんな彼がふと思い立ったのが秘書の募集。懐具合が寂しいのは確かなのだが、一人ぐらしの部屋兼事務所は男の一人所帯よろしく雑然としすぎているし、税務署からの確定申告を早くしろとの通達も経費のレシートやらの紙が雑然と重なっているところに消えてしまっている。早いところ何とかしなければならないので秘書、とのことだったがむしろ秘書とのアバンチュールといった下心の方が大きかった。
グリーンイグアナを捕まえた日にやってきたばあさんは昨日の秘書の募集で採用をもらったと言っていた。馬鹿馬鹿しい、昨日採用したのは電話口の声で随分若かったのだから、こんないくつか分からないばあさんでは話にならない。だが、ばあさんは声色を使い分け見事に声を若返らせていた。なんでも履歴書に付いていた写真は息子の嫁の物らしい。これじゃロマンスもありゃしないが、会計士の免状をもっているとかいったので、給料は80%で雇うことにした。

感想

えーと荻原浩五冊目。ハードボイルドとか付いていたので読んだわけですが・・・なんですかこの本は?出来が悪いとかそういうレベルじゃないですよ。ハードボイルドというジャンルにシニカルな笑いをくっつけた内容にしているように思えましたが、成功しているか?というとどう見ても失敗してる。というよりハードボイルドというジャンルが好きな人間に大して喧嘩を売っているというのが多分正解。ということでこの本はハードボイルド好きには確実に地雷かと。
アマゾンの書評によるとなんか泣けるらしいんですが、どこが泣けるんですかね?人物の描写は表層的で一面的、中途半端でおまぬけな人物しか出てこない、主人公は単なる強がりの負け犬でしかないし、泣かせる要素が無いと思うんですが。なによりラストのばあさんのその後とかは、帰着点が中途半端だとも感じるんですよね。無理矢理話に結末を点けたというか、誰も救われないし、何も変わらない。確かにハードボイルドではそういうのは多いの確かだけど、別に救われる話にしても罰は当らんし。
まぁ、本の中で一番不思議なのは主人公の行動だろうか。勝算がないのにヤクザの所に乗り込むとか意味不明。最低限の備えとかもしないしすぐに嘘をついて逃れようとする。そりゃヤクザだって不審に思うわ。どう見ても作者はヤクザを馬鹿にしてるよねぇ。ヤクザって人間というより猿並の低脳で、どうしようもなく曲がってる人間みたいな旧態依然として漠然とした印象論で逃げてるあたり作者はド下手。人間を描く努力をするべし。旧作からほとんど進歩してないんだね。
ふらふらと適当にハードボイルドっぽい内容の外枠を作り上げてから、中を埋めていってるんだろうけど、作者の模倣されて劣化したハードボイルドのユーモアと年のいったばあさんの不協和音にはただ不快感しか憶えなかった。
これで笑える人は幸いである。あなたは何も知らないのだから。失笑と嘲笑と苦笑と爆笑の違いが分からないのだから。
これで悲しめる人は幸いである。下手な物でも感情移入ができて多感であるから。上滑りしている筆の綴る内容でも泣けるのだから。
ま、ユーモアがユーモアとして機能してない時点で私には始めの50ページでもうダメだったんですが、なんとか読了。進歩してない作者を感じ、
「絶  望  し  た」
30点。
もう荻原浩の本はよまねぇ。

参考リンク

ハードボイルド・エッグ
荻原 浩
双葉社 (2002/10)
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