東野圭吾 私が彼を殺した

ということで二冊目。「どちらかが彼女を殺した」の推理手引きに書かれていたので購入。こちらも本格推理小説

あらすじ

神林美和子は新進気鋭の女流詩人で作家の穂高誠と結婚する事になっていた。
だが、結婚式の前日に問題が発生する。結婚穂高の遊んで捨てた女波岡準子が穂高の家の庭で自殺したのだ。準子は穂高のアシスタントをしている駿河直之に穂高を紹介してもらって美和子との結婚直前まで穂高と関係があった。彼女は穂高の子を堕胎した経験があり、堕胎の条件として彼との結婚を望んでいた。結婚という餌を前に彼女は悩んだが、結局堕胎する事になり、挙句に捨てられるという悲劇に直面して悲観しての自殺だった。自殺直前に駿河に電話をして穂高を呼んで貰おうとしたが、それを発見したのは駿河だった。駿河はホテルで会食中の穂高に電話をして呼び、善後策を練る事にしたが、穂高の結論は彼女の家に遺体を移送する事だった。
穂高と共に会食をしていた美和子付きの編集者である雪笹香織は二人の挙動に不信を抱き、会食後別れると穂高の家に急行する。穂高邸を外から伺っていると穂高駿河ダンボールをどこかに運び去ろうとしているのを見て追跡、マンションから二人が出てくる隙を見て二人の入った部屋へ忍び込んだ。そこには波岡準子の遺体と彼女が作ったらしい一度開封された形跡のあるカプセルが置いてあった。彼女はその中のカプセルの一錠を盗むが、再び入ってきた駿河と出くわす。駿河は顛末を話し、口止めをして二人は別れる。遺体はそのうち見つかるように鍵をかけずに置いたのだった。
結婚式当日の式直前、穂高はいつも使っているピルケースの中の鼻炎用カプセルを飲み、そしてすぐに痙攣を起し死亡する。どうやらピルケースの中の薬に毒物が入っていたらしい。
毒物を手に入れられ、そして動機があるのは3人に絞られる。前述の駿河と雪笹、そして美和子の兄の神林貴弘。
駿河は準子の事が元々好きであったし、穂高の尻拭いばかりさせられているので恨んでいる。
雪笹は穂高にかつて捨てられた女であり恨みを持っている。
貴弘は美和子と15年も離れていた事から、彼女に対して血縁を超えた恋愛感情を持っていて、穂高と結婚する事を快く思っていない。
果たして誰が一体彼を殺したのだろうか?

感想

前回と比べて今回は一人称視点章変わりでかかれているが、それほど内面描写がドロドロしていないのでカラッとした印象をもった。更に計算し尽くしたプロットで状況を容疑が濃厚な三人の容疑を一度晴らしてから、再び容疑を持たせるという離れ業までしている。もちろん「どちらかが彼女を殺した」と同じく犯人は直接書かれていない。非常に優れた仕事では有るものの、少し残念な点もある。章変わりで書かれていて"犯人"が犯行を行ったりするという点での内面描写が全くされなかった事だ。これは作品を仕上げる上で確実にいらない事であるのは確かで蛇足のようなものだ。作品中に明確に"犯人"の特定をしないという独特のスタイルを貫く上では全てご破算にしてしまうやってはいけない事の第一項である。しかし、一人称スタイルにこだわるにしてももう一人傍観者の登場人物を増やしそれ単体の進行か、完全三人称スタイルにしてもよかったかもしれないと思う。そうでなければ、作中の"犯人"は自分が犯人ではないように不自然に振舞っているように見えるからだ。一人称スタイルの場合、確実に主格の人物の主観の述懐が入らざるを得ない。
上手の手から水が漏れると行った感じだろうか。少し残念ではある。まぁ、次に期待という事で。別に推理物に固執してる作家じゃないようだし。にしても「秘密」とかは読もうとは思わんけどね。前回のがよかったのに比べると70点ってところか。
加賀刑事って他の本にもでてるっぽいけど、あとはどれに出てるんだろう。一通り質問してから帰る振りして「最後に一つだけ質問いいですか」っていうフリは古畑任三郎を連想させまくりなんですがw

参考リンク

私が彼を殺した
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ネタばれ

犯人がどうしてもわからない人の為のヒントページ
見たい人は以下の範囲を反転して見て下さい。

P.57とP.148とP.181が決定的な論拠になるかと。
もう一つピルケースを持っていてすり返られるのはこの人だけだし。