クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア

クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア 特別版
ワーナー・ホーム・ビデオ (2006/04/14)

ヴァンパイア・レスタト〈上〉
アン ライス Anne Rice 柿沼 瑛子
扶桑社 (1994/11)
売り上げランキング: 69,515

呪われし者の女王〈上〉―ヴァンパイア・クロニクルズ
アン ライス Anne Rice 柿沼 瑛子
扶桑社 (1995/10)
売り上げランキング: 97,613

この映画は『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』こと『夜明けのヴァンパイア』シリーズの続編に当るものです。作者のアン・ライスがヴァンパイア・クロニクルとして発表している一連の作品群の中の一つですが、そう考えるよりも『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のスピンアウトとして考える人の方が多いのではないでしょうか。
夜明けのヴァンパイア』しか私は読んでませんが、本の方からかなりの割合で映像化時に情報がそぎ落とされているので本読んでから映画を観た方がよい気がします。
えーとまず、前作との兼ね合いを。レスタトの配役が変わっています。トム・クルーズが演じていたのですが原作者のアン・ライスのたっての希望でスチュワート・タウンゼントに変更。これでかなりイメージが変わりました。細身のグラムロックスター的なルックスは原作のレスタトをイメージさせて○。なお、今回はルイは出てきません。
ストーリーはこんな感じ。
100年の眠りから醒めたレスタトが聞いたのは新しい時代の音、ロックの激しくも美しい旋律だった。目覚めて食餌を捕った後かつての屋敷へ出向いたレスタトはパンクロックの練習の場へ忍び込み、持ち前の美声で彼らを籠絡する。そこで稚気をもよおしたレスタトは自身がヴァンパイアであることを明かし、サクセスへのチャンスを仄めかす。「君たちは運が良い」と。
そして見事ロックスターとなったレスタトであったが、どうしても埋まらない物がある。永遠を生きるに当って伴侶が居ない。彼は自分をヴァンパイアにした父であるマリウスを思い出す。マリウスに見初められたレスタトは地中海に浮かぶ絶海の別荘で人間としての終わりを迎え、永遠を生きる権利を得た。その代わりに永遠の孤独も手にしてしまうのだが、マリウスが隠していた「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」アカーシャに誘われてその存在を知ってしまう。アカーシャは紀元前四百年の昔から存在しているマリウス自身よりももっと古く、紀元前四十世紀以前の最も古き血の持ち主だった。だが、アカーシャと伴侶の王は世に飽きて共に石像と化した。レスタトのヴァイオリンの音色にアカーシャがレスタトを招き、血を呑ませた(ヴァンパイアの血を呑むことでヴァンパイアになり、古い血筋の血であればあるほど得る力も大きくなる)のだがそれがマリウスにばれてしまう。アカーシャはマリウスの母であったが、アカーシャはヴァンパイアも人間もなべて殺戮する恐るべき女神であった。レスタトにはアカーシャの血は強すぎるし、その影響を受けることは好ましくない。そう判断したマリウスは子であるレスタトを放置していった。残されたレスタトは世をさすらい、本当の意味での孤独を知ることになる。
ロックスタートしてのレスタトは精力的に活動しながら、同時に自分がヴァンパイアであるということを公表し、同族に対してもっと面だって活動しろと挑発する。レスタトの行動はアカーシャを自分の伴侶にしようとする物だった。
一方挑発を受けているヴァンパイアもただ黙っているわけにはいかない。レスタトをくびり殺そうと暗躍する。
これが主筋。加えて超常現象を記録する団体の研究員が混じり込んだり、善なる魔女マハレットが出てきたりてんやわんや。
恐らく本作は『ヴァンパイア・レスタト』と『呪われし者の女王』をミックスしていいとこ取りしてると思われる。ストーリーはそこそこ纏まっていて問題なし。ただ、ちょっとレスタトがアカーシャとの絡みで何を考えているのか?ってのがよくわからない。変心についてもうちょっときちんとしてればよかったんじゃないかな。
映像としては兎に角エロい。パンク特有の強烈なフィティッシュな格好やら病的な様相、目つきなどがよい。加えてゴスの部分も入ってるからなおさら。アカーシャ自身も動きを見てるとエロいしねぇ。ま、それ以前に耽美系なので雰囲気作りは非常にグッド。今回はホモセクシャル的な部分は香り付け以上の物ではないので愛憎的な物を期待している人には物足りないかも。
ちなみに作中のバンドの音作りはKornのジョナサン・デイビスが携わっている。雰囲気は実にぴったりと思わせる妖しさと頽廃を感じさせる出来。冒頭でPVにスチュワート・タウンゼントが出演して歌っている所で吹き替えているのだが、ジョナサン・デイビスの実物を知らなければ違和感無しに魅了されるだろう。ちなみにジョナサンだけじゃなくて元オインゴ・ボインゴのリチャード・ギブスも楽曲に関わっている。一般向けにヘヴィ過ぎないちょっとポップナイズされた内容になっているのはその影響かな。
ただ、良いのはそのあたりまで。特殊効果系はとってもチープ。悲しいかなB級映画のノリなんだよね。ここで冷める人が多いと思う。ホラー好きからすれば大した問題じゃあ無いとは思うんだけど画竜点睛を欠いてしまっているようなそんな感じ。
あとヒロインが問題かな。ヒロインの一人であるアカーシャを演じているAaliyahはいいんですよ。独特のエキゾチズムを演出させようとしてますし、格好からしてエロいから。それにもう他界しているしね・・・。まったく惜しい人を亡くしました。問題はもう一人のジェシーを演じているマーガリート・モローですね。端的に言って資質の問題と言ってしまうとアレだけど人選ミス。ゴス的な化粧が似合わない、これは致命的だわ。てーことはレスタトと全然似合わないってわけ。ファンであればあるほど気になりそうな気がする。美人美人していない人選にするつもりだったのかもしれないけどね。原作を読んでないんで流石にわかりかねます。
どうでもいいけどアカーシャはアカーシックレコードのアカーシャから来ているのかな。ちょっと気になった。
蛇足ですが、アン・ライスに影響を受けたカルト宗教って結構あるらしくて中々面白いことになっているようです。
参考:「俺、ヴァンパイアになるから」と夫がカルトに入信
写真の変貌具合が見所。