浅田次郎 プリズンホテル秋

あらすじ

極道小説家の木戸孝之介は編集部からの垂れこみで関東桜会の相良総長が亡くなったのを知り、叔父の木戸仲蔵のツテを頼って取材をする事にする。木戸仲蔵は関東桜会の五人衆と呼ばれる重鎮だが、最近のヤクザに対する風当たりが強い事からホテル経営を専らとしているちょっと変わった人だ。かく云う孝之介も相当の偏屈な男ではあるが・・・。
取材先は組葬ではなくあくまでも身内のみで行われるしめやかなものだったが、その先で奇矯な人物と出会う事となる。真野みすずである。芸能人である初老の女性はこの場にはふさわしくはない。なにやら亡くなった総長だけではなく、仲蔵とも縁があるらしいという事はわかった。アイデアは有るものの筆ののらない孝之介は仲蔵に引きずられて、またもや「プリズンホテル」と呼ばれる「奥湯元あじさいホテル」へ向かうのだった。まぁ、内心は仲蔵とみすずの仲にどんなえにしがあるのか気に掛かったのだが。
ただ、今回は内縁の妻というか愛人というかはしためというか、いつも身の回りの世話をするために来ているような田村清子は居ない。というか来れない。心臓に持病を持っている清子の母が倒れたために、病院に付き添いに行っているようなのだ。仕方ないとは思いつつ、彼女の娘の美加を道行拾ってホテルへの道筋を辿って行くのだった。

感想

さて、何故これを読んでいるかというと、プリズンホテル夏がゲット出来ないからですorz
つーかなんで夏が手に入らないんだか・・・運が悪いだけなのかもしれない。まぁAmazon使えば一発なんだけど・・・。
というわけで、延々面白くない本を読んだ後に面白い本を読むという読書の幸せを味わう為に読み始めました。本当は夏をゲットして読み終わるまで秋・冬は読まないと思っていた堅固な心持やタブーも有ったわけですが、適当に読む本を探したところ、軽く楽しめながら読めそうなのはこれと続編の「プリズンホテル冬」ぐらいだったわけです。探せば色々出て来そうですが、積読にしているダンボール箱を開けるのが激しくめんどくさいので、背に腹は変えられないという切迫感も何にも無いのに、適当に破ってしまったわけです。意志が弱いのね。まぁ最終巻を既に読んでいるので変則的な読み方でも別にいいやと捨て鉢チックな心持だったりもするのでしゃーないかなと。
閑話休題
本編の出来ですが、安定感があって安心感はないものの、さくさく読める本ですな。プリズンホテルを一冊でも読んだ人なら勿論、読んだ事が無い人でも十分に楽しめる本です。Amazonの評価がなんか滅茶苦茶辛いようですが、読んだのが女性だったんでしょうかねぇ。男尊女卑的な内容が含まれているのは確かですが、目くじら立てるような内容じゃあ決して無いと思うんですが。それなりにお上品にまとまってますしw。そもそもネタをネタとして(以下略)っていう稚気が無いと駄目ですよ。
ただ、拒否反応が出る人は居るでしょうね。ぽんぽん殴ったり、虐めたりといった理不尽極まりない行動をする主人公に呆れ、怒る人も居るでしょうな。そこで読むのを止める人ならともかく、通して読んだ人で無駄に長かったとか、とてつもなくつまらなかったとか、読むのがだるいだとか云う事は100%無いと断言できます。そんな事はないという人の場合、この本の楽しみ方を履き違えている気がします。あくまでも娯楽作品ですよ?作者はそこいら辺をよぉくわかりながら書いています。起伏や伏線をしっかり作りながらね。残念ながら出力低下は否めなかったようですが、続きものの性ですから。それだけで断ずるのは少々気が早すぎます。ただ、この話は好きでこの話は嫌いって事であるならば、よくある事なのでシリーズとしてみた場合は悪くないと思います。ただ、「下らない」と断ずるタイプの人の場合エンタメ系は読まない方がいいと思いますね。時間の無駄でしょうから。
バリバリのエンタメ系小説のシリーズとしてはそんなにまずくはないと思いますよ。ただ、春の出来がよすぎだとは思いますがね。それでも秋の出来もそこまで悪くは無いとは思います。大抵の人は単品で先入観無しにこれ読んでまずいと思わないでしょうし。単に前作の出来が善すぎたんでしょうな。因果なもんです。
名調子と漢気と義理と人情を体感したければ読んで損無しです。勿論笑いはもれなくついてきます。お買い得ですよ!
80点。

今日の引用

花沢一馬支配人曰く「お任せ下さい。きっと感激なさいます。」

浅田次郎「プリズンホテル秋」より

蛇足:どうやら浅田次郎花村萬月とライバル関係にあるらしく、しばしば舌戦を繰り広げているらしい。聞いた話では浅田は原稿用紙派、花村はワープロ派でそれぞれ軟弱だの時代錯誤だの言い合っているとか。未だ未読の花村満月の本を読んでみるかなぁ。方向性も似ているとか言う話しだし。それ以前に浅田次郎の本を乱読した方がよさそうな気もするが。
しっかし、引用に用いたい場面が沢山有って困るね。それぐらい言葉の重みを知っている作家だって事なんだけど。見得の切り方は堂に入ってますねぇ。小章ごとにその場面の見せ台詞を飾って遜色が無いだけの事はありますわ。

メリヤス 0 [(スペイン) medias; (ポルトガル) meias]

〔靴下の意〕一本の糸で、一つの輪奈(わな)に次の輪奈をからめながら、平面または筒状に編んだ布地。表と裏の編目が異なる。伸縮性に富む。〔「莫大小」「目利安」とも書く〕


三省堂提供「大辞林 第二版」より

参考リンク

プリズンホテル〈2〉秋
浅田 次郎
集英社 (2001/07)isbn:4087473392
売り上げランキング: 17,293
このページは在庫状況に応じて更新されますので、購入をお考えの方は定期的にご覧ください。

プリズンホテル秋
プリズンホテル秋
posted with amazlet at 05.06.17
田中 つかさ 浅田 次郎
リイド社 (2001/08)isbn:4845821737
売り上げランキング: 276,945
このページは在庫状況に応じて更新されますので、購入をお考えの方は定期的にご覧ください。

プリズンホテル秋
プリズンホテル秋
posted with amazlet at 05.06.17
浅田 次郎
徳間書店 (1994/08)isbn:4198601488
売り上げランキング: 237,685
このページは在庫状況に応じて更新されますので、購入をお考えの方は定期的にご覧ください。