綿矢りさ 蹴りたい背中

芥川賞受賞した作品ですな。インストールでは文藝賞獲ったとか。作品より作者に注目が集まっているっていう本末転倒な状態。まぁ、見目麗しいわけだし、マスゴミの格好の餌になるのは致しかたありませんな。なんでもインストールの時にストーカーチックな方々に色々やられた事が書くきっかけになったとか。ちなみに芥川賞は短編が受賞する賞です。

あらすじ

大して足の速くない陸上部員の女子高生 長谷川初実が主人公。もう一人の主人公はモデルのオリちゃんをひたすらオタク的に追いかける内向的な男子高校生 蜷川智。ハツがふとしたきっかけでオリちゃんに遭遇した話をにな川にした事がきっかけ。ハツはにな川をキモイと思いながら行きがかり上自宅を訪れた際、その背中を蹴る事で快感を感じた事に戸惑いを感じた。にな川に気にいられたらしく、オリちゃんのライブに誘われるのだが・・・

感想

短編なのでするっと読めた。プロットのアイデアも面白いが、正直インストールのプロットほどやられた感はなかった。まだインストールを読んでないので文章レベルで語れないが、アイデアという点ではインストールの方が斬新だと思う。蹴りたい背中は文章力は高いし、細かい機微な点において細心の注意を払っていると感じられた。言うなれば盆栽の様な小説じゃないかな。芸術的で全体のバランスは非常によいが、近くで見ないと少々物足りない。純文学だからしょうがないんだろうけどね。あと、女子高生の日常という切り口なので甘酸っぱい恋愛ものを想像してたからちょっといい意味で裏切られましたな。
ま、結局女子高生の性の芽生(S的なね)と人間関係の難しさを描いたといった感じかな。
ただ全体に漂っている倦怠感と閉塞感は全体を暗くしてる印象を与えるかも。不満は無いものの、物足りない感じはします。純文学なのが問題なのかもしれない・・・。普段はSFとミステリーと時代物、そしてファンタジーですからなぁ。

参考リンク

蹴りたい背中

蹴りたい背中