福井晴敏 ∀(ターンA)ガンダム 月に繭 地には果実

福井晴敏さんといえば最近公開されたローレライ(原題 終戦のローレライ)と夏あたりに公開される沈黙のイージスで、最近頓に著名になりましたなぁ。日本では珍しい骨太の作品を輩出してくれる作家さんです。
個人的には大藪春彦の銃器・バイク・車・ハンティング要素を抜かして、大沢在昌京極夏彦を加え、2で割った感じだと思ってますわ。
この人のストーリーテリングは鬱展開がキャラクターを作ると言うもの。キャラクターが悩み、考え、実行して、決断する。その行為が良くも悪くも事実として傷跡を残す。ま、いい具合の狂気具合なので非常によろしいわけです。

あらすじ

アニメ版と映画見てる人はキャラクターとストーリーを全部忘れた方がいい感じ。
基本は変わりませんが、中の人が相当おかしいのでw。

主人公ロランは月の人で、月面都市に住んでいたが、地球に降下して来る事に。
地球は数千年前核最終戦争で荒廃しまくっていたので、技術力と金がある連中は月に移住していたのだが、ロランはそういう世代の随分後の末裔と言う事になる。
地球は荒廃していたが、なんとか人類が滅びる事は無く技術レベルが低いまま月日を重ねていた。ロラン達ムーンレイス(月の人間)が地球に赴く事になった直接の理由は、月にこれ以上留まるのではなく、地球へ降りて、月の様な制限的な社会ではなく、生産的な社会へと転換するためだった。
段階的に、そして散発的におこなってきた地球への降下は、全面的な移住への段階に来たと言う事で非常に大規模なものになった。現地には当然国や土地を所有する者が居る為当然武力衝突がおこる。地球は産業革命後の20世紀初頭並の技術力故にモビルスーツが存在するムーンレイスには手も足も出なかったのだが・・・。何故か地球の廃坑のような山にはモビルスーツが沢山埋まっている事が発覚。ロランが見つけたホワイトドールも死んだナノマシンを大量に被った石像に見えたが、実際はモビルスーツだった。

月と地球の戦争の行方は・・・

感想

あらすじの方にこの小説版の独自路線について記述してもよかったんだけど、ひたすら面倒なのでスルーする事に。まぁ、アニメには居る筈なのに居なくなってる人や、概ねキャラクターの性格は一致するものの、ものすごい思い込みやら、愛憎の情念やらで、完全に別人になってる人が居たりする事をここで補足しておきます。
で、感想ですが、正直ここまでガンダム物の小説が面白いものなのかと初めて思えた本です。これに関しては福井さんの力量のなせる技だと思ってます。シナリオのカタルシス、ゆがんだ三角関係の愛憎など禿には到底描ける物じゃないだろうからなぁ。禿だとどうしても独特の言い回しを作ったり、あまり共感できる内容ではないキャラクター同士の憎悪の連鎖とキャラクターの無駄殺しが横行して辛抱して読むようなものじゃないからねぇ。
現状、個人的なオールタイムベストのトップ5に入るぐらいの出来です。
惜しむらくは、出ている出版社が角川ハルキ事務所だということでしょうかね。全くもって宣伝されてないあたりに悲哀を感じます。下手をすると後年無かった事にされる可能性すらありますw。
出会う本読みの人に軒並み勧めてるわけですが、「そのうち」という返事と共にスルーされるのは何ででしょうかねぇ。やはり髭だからでしょうか('A`)
つーかみんな読めヽ(`Д´)ノ

追記:リンクを探してたら愛蔵版・文庫版が幻冬舎から出ていた・・・。お求め易くなってますな(・∀・)

参考リンク

月に繭地には果実―From called “∀”Gundam

月に繭地には果実―From called “∀”Gundam

月に繭 地には果実〈上〉 (幻冬舎文庫)

月に繭 地には果実〈上〉 (幻冬舎文庫)

月に繭 地には果実〈中〉 (幻冬舎文庫)

月に繭 地には果実〈中〉 (幻冬舎文庫)

月に繭 地には果実〈下〉 (幻冬舎文庫)

月に繭 地には果実〈下〉 (幻冬舎文庫)